表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された貴族の三男。得意なバイオリンの音色が美人さんや有能配下を引きつけて、気がついたら巨大王国と大戦争をしてた件について  作者: ちくわ天。
第4部 戦いの中で 第2章 戦争が終わって

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
257/261

第257話 城外の会合

 王国歴165年8月11日 昼 レーエンスベルク領 ウェイク砦にて――


「ヨシアス……。もういっぺん言ってくれるか」

「えっと……。ホーエス城に宣戦布告……しちゃった」

「しちゃった……じゃない!! そんなことしたら奇襲ができなくなるし、本城にも連絡されて、こっちが不利になるんだぞ!」


 アルフレドは頭を抱えてしまう。


「いやあ、だってさ。あのマルティンとか言う奴、民への重税に憤っているかと思ったら、そうでもないし。何だかイラッとしちゃったんだよね」

「お前……」


 けれども起こってしまったことは仕方がない。作戦の練り直しを考えるアルフレドだったがヨシアスはあくまで気楽だった。


「攻めていいんじゃね。他に落とせそうな城、ないだろ」


(イグナーツ……)


 かつての有能な参謀に思いを馳せながらアルフレドは心から脱力してしまう。そのことは全く気にせず、ヨシアスはノイエラントからの来訪があったことに興味を示していた。


「ヤスミンちゃん、来てたのか。無念」


 アルフレドからワイバーンに乗ったヤスミンが来たことを知らされたのだ。


「そうと分かってれば、ホーエス城なんか行かなかったのに」


 心から、そうしてほしかったアルフレドだった。


 §


 アルフレドはすぐに方針を決定する。ヨシアスの放言はともかくノイエラントとの共闘は、タイミングを逃せば各個撃破されてしまう。そのためにも不本意だがホーエス城を第一目標とする。軍の編成は、アルフレド直属の50名、砦の守備隊100名、義勇軍が800名の合計950名となった。全く戦闘の経験がない義勇軍だったが、今は訓練をしている時間がない。


「ホーエス城の兵士は強そうだぞ。マルティン卿は武力で城主まで上りつめてるし」


 籠城されれば南のファルケン城から3日ほどで援軍が来るだろう。かといって農民兵ではマルティン率いる正規兵200名に勝てそうもない。


「アルフレド。籠城させないために悪口を言いまくるか!」


 そんなことでは絶対に出陣してこないとアルフレドは言いかけたが、まずは城下に進むことを決定する。ノイエラント軍がバンデルビットまで進出していることから考えて、連携のために街道上に出る必要がある。


「それでは独立軍、進発!」

「おう!!」


 アルフレド独立軍の士気は高く、糧食も十分に確保していた。偵察もあちこちに派遣しており情報入手にも抜かりがない。


(アルフレド。やはり有能だな)


 馬に乗りながら、自分にできることをしようと考えるヨシアスだった。


 §


 3日後の朝、ホーエス城付近に派遣していた偵察部隊から報告が入る。


「ホーエス城東側にマルティン卿の兵200名を確認。騎兵50、歩兵150」


 農民兵だと侮ったのか敵の全軍が城外に展開し、2列の横陣で前列に騎兵、後列に歩兵を配置していた。対するアルフレド独立軍は鶴翼の陣構えになっている。左翼は先頭に守備隊の50名でそれに300名の農民兵が続き、右翼も同様に先頭に守備隊50名、その後ろに300名の農民兵が続く。中央は直属の50名が本陣の前に、本陣の後ろに200名の農民兵を配置した。


 実戦は初めてのアルフレドは妙に喉が渇く。戦わないと決めているヨシアスは、それなりに気楽だった。


「どっちも魔法兵団がいなくて良かったな」


 全くその通りだとアルフレドも思う。ただユラニア王国から援軍がないとも限らないため、その方面の情報収集には余念の無いアルフレドだった。


 兵の配置が完了するとマルティン卿から使者が派遣されてきた。


「戦の前に、ヨシアス卿と話がしたい」

「え~俺? 俺はしたくないよ。戦の血祭りなんて、ご免被る」


 けれどもマルティンと同様に重苦しい雰囲気の使者は、是非にと迫ってくる。まあ、殺しはしないだろうと、ヨシアスは使者と共にマルティンのいる本陣に向かう。案の定、マルティンの周りの副官たちは大いに憤っていた。


(だからダメって言ったじゃん。話は無理だよね)


 周囲の兵たちをなだめるとマルティンはゆっくりとヨシアスに近づいてくる。


(マジ? 大将自ら使者を斬るのか?)


「ヨシアス殿、貴殿にお願いがある。アルフレドさまをここに連れてきてはもらえないか?」

「無理。だいたい戦前に大将同士が顔を合わせるって、おかしいだろ!」

「貴殿にしか頼めないのだ。どうか伝えてくれないか」


 その荒唐無稽な申し入れに、さすがのヨシアスも躊躇したが、同時に瞳に思慮深い色がともる。


(今のままでは勝利の可能性は低い。アルフレドの運にかけてみるか)


 いざとなれば自分が盾になろうとヨシアスは腹をくくる。


「分かった。で、その内容は教えてもらえないのか?」

「ダメだ。アルフレドさまにしか伝えられない」


 すぐに陣に戻ったヨシアスは、マルティンから伝えられたことを話した。副官はすぐに拒否するがアルフレドは行くと即答した。ヨシアスも笑顔で同行することを告げる。副官に部隊の指揮を任せ、二人はすぐに馬上の人になった。


「ヨシアス。お前、どう思う?」

「目的がはっきりしない。でも武人だから闇討ちの可能性も低い。ま、俺の後ろに隠れてなよ」

「馬鹿言うな。お前の剣の腕前じゃ、俺が前にいた方が生き残る可能性が高い」

「ふん!」


 敵陣に着くとヨシアスはアルフレドの後ろについていった。


「マルティン卿、私に用だということだったが、何用だろうか?」


 辺境伯長男のオーラを全開に出し相手を威圧する。ヨシアスですら、その圧で後ろに下がったくらいだ。その瞬間、マルティン卿が地面に膝をついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ