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追放された貴族の三男。得意なバイオリンの音色が美人さんや有能配下を引きつけて、気がついたら巨大王国と大戦争をしてた件について  作者: ちくわ天。
第4部 戦いの中で 第2章 戦争が終わって

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第250話 意外な人脈

 王国歴165年7月2日 午後7時 ブローガング海岸を望む展望台にて――


 アルタンツェは辺境伯との戦闘が何年も続き、公国の国力が落ちていることを打ち明ける。


「正直、ノイエラントが攻撃されていなかったら、うちに攻めてきたと思うよ」

「でも、アル姉。長男のハドバートルさんはどうしたの? 勇猛だって聞いてるよ」


 アルタンツェは下を向き、唇をかむ。


「戦死したよ。それだけじゃない、姉2人も戦死さ」


 全て辺境伯との戦いによるものだった。


「今、公国で大軍を率いることができるのは私だけ。私が次期当主なんだって。笑えるよな」


 レオンシュタインは声も出せず、ただ聞くしかできなかった。


「それを知ったレーエンスベルクのゲオルフって奴が、私を嫁にって結婚を申し込んできたんだよ。乗っ取りだろうね。それに、女好きらしいじゃん。そん時から人前ではアグリー(醜い)の魔法で顔を変えてるってわけ。それからは申し込みが途絶えてるけどね」


 辺境伯次男ゲオルフがアルタンツェにまで毒牙を伸ばしていることに、レオンシュタインは言いようのない苛立ちを覚える。


「相次ぐ戦争で人々の生活はどんどん貧しくなってる。戦争を止めたいのに辺境伯は攻撃の手を緩めない。公国を占領したいんだろうね」


 表情は変わらないけれども爪が腕に食い込むくらいに強く握っている。


「レオ……いや、レオンシュタイン殿。我が国を救ってもらえないだろうか。このままでは、我が公国が辺境伯領になり人々も奴隷となってしまう」

「アル姉……」


 レオンシュタインの手を固く握りしめるアルタンツェを何とかしたい。硬い決意の色がレオンシュタインの目に浮かんでいた。


 その夜、ノイエラントの重臣たちとアルタンツェが村長小屋に招集される。


「私は公国と同盟を結び、互いの障害となっている辺境伯の脅威を取り除きたいと思っています。何か手はないものでしょうか?」


 宰相のレネはすぐに手を挙げる。


「同盟はとても望ましいことですが辺境伯軍は強敵です。参謀陣の意見を聞きたいですね」


 シノがそっと手を挙げる。


「辺境伯の一族は次男のゲオルフが目立ちますが、あれには長男がいないのですか?」


 シノはゲオルフをあれ呼ばわりだ。フリッツが説明し、辺境伯には、長男、次男、三男、長女、次女の5名の子がおり、長男のアルフレドは北西部ウェイク砦に左遷されているとのことだった。


「ではアルフレド殿と接触をもち、次男を牽制してもらえればよいのでは?」

「いや、シノ殿。そう簡単にはいかない。そもそも、我々はアルフレド殿と全く交流がないし面識もない」


 フリッツはその難しさに腕を組んでしまう。すると、意外な人物が発言を求めてきた。


「あ、俺、アルフレドと知り合いだわ。昔、王都の士官学校で一緒に学んだからなあ」


 元ヴァルデック領主ヨシアスの言葉に、一同は驚きに包まれる。


「ええ? ヨシアスさんは士官学校()()()に行ってたんですか?」

「なんだよ。士官学校なんか、とは。一応、元貴族だぞ。


 一同は失礼な物言いを繰り返す。ヨシアスと士官学校はどうしても結びつかない。


「ま、あいつは成績が次席、俺は下から次席だったよ。はは。それでも、何か気があってさ。よくつるんでたよ。それとイグナーツだっけ? あいつ、ヨシアスの配下だったよ。何で今はゲオルフの配下なんかになってんだろな」


 オレンジに手を伸ばしたヨシアスは、その輪切りを口の中に放り込む。爽やかなオレンジの香りが一瞬、部屋の中に広がる。意外な所に突破口があったのだ。


「ならば、ヨシアスさまにアルフレドさまとの折衝を任せたいのですが」


 レネが話を切り出すとヨシアスはしゃあしゃあと護衛を要請してきた。


「私には美しい方の護衛が必要だ。イルマさんとか、シノさんとか」

「ヨシアスさま、お戯れを」


 シノは冷たい目と声ですぐに拒否し、イルマは首を振ってレオンシュタインの側に寄っていく。随行員は再考の余地がある。


「あと、戦争続きで貧困が続いている公国を何とか助けられないだろうか?」


 お人好しレオンシュタインの本領発揮である。けれども、誰もそれをダメとはいわなかった。それがレオンシュタインなのだから。


「レオンさま。まず1つずつ解決していきましょう。辺境伯を何とかしてからでも遅くないと思います。焦りは禁物です」


 優しい眼差しで宰相のレネは答える。


「みなさん、ごめんなさい。気持ちだけが走りすぎて」


 取りなすようにサラ教授が1つの意見を述べる。


「公国は昔から宝石の産地として有名です。でも、その産出量が少なく、最近はあまり流通していません。それで私、ちょっと調査に出かけたいです。もしかしたら、アレがあるかもしれないですから。はあ、はあ……」


 大学で新しい鉱脈について話したいらしく、題材になるような産地を探していたということだった。


「そういえば公国には古代文明が発達していたらしいッス。いろんな場所に遺跡があって、それを観光につなげるとか」


 各地を放浪していたフォルカーは公国にも足を伸ばしていた。


「公国は標高が高い地域が多い。だから、育てるのにオススメの作物はトウモロコシやジャガイモだ。小麦もいいけど、その2つを育ててみたいね」


 温和なルカスが思慮深そうにぽつりと話す。


「みんな、気が早い……。まずは、辺境伯軍のことを考えましょう」


 レネは苦笑しながら話を元に戻すが、宰相自身も頭を捻っている。集まっているメンバーは、結局、レオンシュタインの要望を真剣に考えている。そんなノイエラントの面々を羨ましそうに眺めるアルタンツェだった。

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