表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された貴族の三男。得意なバイオリンの音色が美人さんや有能配下を引きつけて、気がついたら巨大王国と大戦争をしてた件について  作者: ちくわ天。
第4部 戦いの中で 第2章 戦争が終わって

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
246/259

第246話 凶報

 王国歴165年6月10日 午前9時ノイエラント士官学校 第1会議室にて――


「悪い知らせが舞い込んだ。王国で食料の流通量が減り、王城に集められている」


 防諜を考えられた6m四方の会議室には窓がなく、息が詰まりそうな圧迫感がある。主席参謀長のグラビッツの緊張した声が会議室に響く。その場にはグラビッツの他に、レオンシュタイン、次席参謀長シノ、副宰相兼次席参謀長フォルカーが集っている。


 これからの作戦を決めるために、机の上に2m四方の白地図が広げられる。

 

 そんな中、姿勢良く座っているシノの姿は緊張を和らげるのに一役買っていた。百合のような肌の白さをもつシノは、最近、とみに美しさが増したとの評判でファンも多い。いつもより抑えた香水の匂いが、黒髪から漂ってくるようだった。


 フォルカーとシノは、椅子に腰掛けたままグラビッツの次の言葉を待っていた。


「俺はユラニア王国がもうじきノイエラントに再侵攻すると考えている。今日はその対策を話し合いたい」


 最悪な予想だった。


「師匠、戦力差がきついッスね」


 グラビッツは兵の人数を地図の横に書き始める。


「ノイエラントには第1中隊300名、第2中隊300名、第3中隊200名、第4中隊200名の合計1000名が動員できる。予備役は200名」


 続けてシノがシキシマ地区について説明を始める。


「ノイエラントに編入したシキシマ地区は軍を再編しています。サムライが1700名、予備役は500名ほどです。シキシマは魔族等への備えがありますので、動員できるのは予備役と考えて良いでしょう」

「さすがシキシマは動員数が多いですな」


 グラビッツは人数を書き込みながら声が弾む。


「ヴァルデック地区は、現在第5中隊200名が駐屯しています。予備役等はいないッス」

「ということは、ノイエラント軍としては1200人、予備役700人となります。すぐに動かせる兵は1900名。最大動員数は3600名です」


 中々の多さに、少しだけほっとした雰囲気が会議室内に広がる。けれども、グラビッツは表情を緩めない。


「対するユラニア王国は、直属兵2000人、王国親衛隊100名、そのほかの公爵家などの動員兵を合わせると、約20000人が動員できます」

「また、レーエンスベルク領は5400名、コムニッツ領2200名、グンデルスハイム領1100名、シュトラント領1000名の計9700名です」


 王国側は約30000名という動員数が表示される。常備兵だけで考えるとノイエラントの15倍である。


「まともにやり合うのは愚だ。まして、敵には王国親衛隊や騎士団といった手練れが多い」


 眉をひそめたシノが懸念を述べる。


「各個撃破か籠城か。籠城にしても、我がノイエラントは堅固な城を持っていませんね」


 ナレ砦は強固になりつつあるが、そこから大軍は攻めてくる可能性は低い。また、ヴァルデック城は平城で籠城には向かない。まして、ノイエラントの中心部であるクリッペン地区には侵入を拒む壁すら設置されていない。


「ただ、師匠。籠城といっても3万の軍を防げそうな城は、王国広しといえど辺境伯領のホーエンシュヴァンガウ城くらいしかないッスね」

「まあ、そうだな」


 グラビッツは、にやりと笑うとフォルカーの胸にどんと拳をぶつける。


「さすが我が弟子だ。答えを出すとは」


 シノは緑の目を興味深そうに二人に向けている。


「いやいやいや、師匠、無理ッスよ。そもそも、強兵で鳴るレーエンスベルク兵を倒すことすら大変なのに」

「いや、戦いはしない。城を貸してもらうんだ」

「貸してもらう?」

「考えろ。我が弟子よ。あと辺境伯には弱点がある。そこも狙い目だな」


 そこまで話すとグラビッツは当面の目標を伝達する。


「王国の侵攻には足止めの城が必要です。それがホーエンシュヴァンガウ城です。そこを接収すれば、我が軍と掎角の備えが完成します。それと辺境伯の兵を動けないようにしてみましょう」


 その後の極秘の説明を聞き、シノとフォルカーは驚愕した。けれども、グラビッツは涼しい顔だ。


「とにかく、使えるものは何でも使わせてもらう。それに楽して勝つが俺のモットーだからな」

「今だに、それッスか?」

「調略はお前に任すぞ。そろそろ覚えていい頃だ」


 そういって、会議は終了した。


 翌日からフォルカーは士官学校にこもり、グラビッツの宿題に取り掛かった。まず考えたのは、できたばかりの高速船を活用することだった。


「工房長、ヘレンシュタイク公国まで高速船を走らせたいッス。積み荷は俺」

「具体的に、どこまで?」


 何も理由を聞かず、工房長は場所を確認してくる。フォルカーは地図上の一点を指し示す。


「ナウウェン砦だ」


 ナウウェン砦は、レーエンスベルク辺境伯領の南西に位置するクロップ砦に対抗してつくられたヘレンシュタイク公国最前線の砦である。


「行けるか?」

「段階が必要です。まず、シュトラント伯領に中継地点を1つ設けること。そして、ナウウェン砦と連絡をとることが必要になりますね。高速船は現在、二艘が稼働しています。船はすぐに作れますが、船を漕ぐマッチョたちはすぐに募集できません。被害0でお願いしますよ」


 被害0を固く誓ったフォルカーは、すぐに工房長と計画を進めていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ