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追放された貴族の三男。得意なバイオリンの音色が美人さんや有能配下を引きつけて、気がついたら巨大王国と大戦争をしてた件について  作者: ちくわ天。
第4部 戦いの中で 第2章 戦争が終わって

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212/259

第212話 二人の来訪者

 王国歴165年2月1日 午前10時 ノイエラント レオンの丸太小屋にて――


 2月は嬉しい来訪が2つ続いた。


 1つ目はレネの奥様アイシャさんがやってきたことである。アイシャさんは荷車に座りながら、出迎えに来ていた人たちに挨拶をする。


「みなさん、レネが迷惑を掛けているでしょ。本当にごめんなさいね」


 輝くような笑顔に出迎えた人たちはみんな圧倒されてしまう。自身の身体がそれほど動かないにも関わらず、どうしてこんなに素敵な笑顔になれるのだろう。


「とっても可愛らしい人だね。レネさん、どうやってこんな素敵な人を見つけたの?」

「いやあ、ははは」


 ティアナのツッコミに、豪腕宰相は笑うしかできない。妻の相変わらずの可愛らしさにデレデレになったレネは、完成したばかりの家にアイシャを案内しようと自分で荷車を引き出した。その後ろ姿を見ていた時計職人のハラルドと木工職人のオリバーは、ひそひそと小さな声で相談をするのだった。


 §


「いやあ、船って便利だねえ。馬車よりもいい乗り心地だったよ」


 アイシャがやってきた2日後、一人の元気そうなお婆さんがティアナの前に現れた。偶然、船着き場の角を曲がろうと歩いていたティアナは、その声と姿にびっくりして大声を上げる。


「おばあさん!! マーニさん!!」

「ティアナちゃ~ん、来たよ~」


  これが2つ目の嬉しい来訪である。口を押さえて感動しているティアナを抱きしめたマーニは、久しぶりの再会を心から喜んだ。ティアナは涙が溢れて止まらない。仮面を魔法で外し、頭を擦りつけて甘えるティアナだった。マーニは頭を撫でながら、あることを教えてくれる。


「実はレネさんに呼ばれてきたんだよ」

「レネさん?」


 確かに魔法院の設立のための人材は募集していたが、それは緊急ではなかったはず。なぜ、マーニさんを呼び寄せたのだろう?


 アイシャが来てからというものレネは昼からの勤務にしてもらっている。


「じゃあ、レオンの小屋に来て休んで!」


 マーニの腕を引っ張るようにして、ティアナはレオンシュタインの小屋に向かっていった。


「レオン! マーニさんだよ!」


 そう言われてもレオンシュタインは誰だか分からない。

 

「初めまして。レオンシュタインと言います。ティアナが本当にお世話になりました」


 ぺこりと頭を下げる。自分の迂闊さに気付いたティアナだったが、マーニは気にせず互いに挨拶を交わしていた。ちょうどお昼時になったのでシノが昼食を運んでくる。シノも優雅に挨拶をし、テーブルの上に料理を置いていく。いつものキモノにカッポウギという服装は、黒髪のシノにはよく似合っている。


 今日は魚のフライに自家製のミソスープ、大根と豚の煮付け、それにエン麦の粥だった。


「今日も美味しそうだね」


 シノは美しい横顔をレオンシュタインに向ける。


「ありがとうございます。()()()()()()()()()愛情を込めて作りました」

「はっ? 愛情なんて見えないけど!」


 ティアナの顔が曇るが確かに美味しそうなのは事実である。早速、4人で昼食をとることにする。


「美味しいねえ。やっぱり海の近くだから魚が美味しいんだねえ」


 マーニの言葉にティアナも一口魚を頬張ると、とても美味しい。淡泊な魚をフライにすることでコクのある味に変えている。ざっくりとした歯ごたえの下にプリッとした白身が隠れていて、食感だけでも嬉しくなる。


 ミソスープも絶妙の塩加減で、辛すぎず薄すぎず、タマネギの甘さを引きだし、ニンジンが彩りを添えている。


(かなわないなあ)


 少ししょんぼりするティアナだったが明日は自分の食事当番だ。腕によりをかけようと決意するティアナだった。


 3人が食事を食べ終わり食後の紅茶を楽しんでいると、レネが慌てたように小屋に入ってくる。


「す、すみません。遅れました」


 けれどもレオンシュタインは咎めなかった。むしろワーカホリック気味な宰相が妻に愛情を注いでいることを誇らしく思うのだった。レオンシュタインは笑顔のまま、すぐに椅子に座るよう促していた。


「で、レネさん。なぜ、マーニさんを呼び寄せたのですか?」


 椅子に座ったレネは扉を閉め、心持ち声を低くする。


「それは、ティアナさんの秘密『アルプレヒト』に関することを、マーニ殿は恐らく知っていると思うのです。元ユラニア王国宮廷魔術師のマーニ殿であれば」


 レネはそれをどこで知ったのだろうか? レネの情報収集能力に舌を巻いたマーニは、やれやれといった表情になる。


「私が宮廷に勤めていたのは20年前だったのに、よく調べたねえ。その通りです」


 周りにいる人たちは一様に息をのんだ。王国の宮廷魔術師といえば、この大陸でもトップレベルの魔力をもっているといってよい。

 

「で、聞きたいことは『アルプレヒト』でしたね。覚えてますよ。王国でも有数の魔法使いの家系でした」


 口に手を当てたティアナは自然にレオンシュタインの側に寄っていく。自然にティアナの手に自分の手を重ねたレオンシュタインは、励ますようにぎゅっと力を込める。


「その有数の魔法使いの家系は今はどうなったんですか?」


 一瞬、躊躇したマーニはきっぱりと答えていた。


「断絶しました。王国が滅ぼしたのです」

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