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追放された貴族の三男。得意なバイオリンの音色が美人さんや有能配下を引きつけて、気がついたら巨大王国と大戦争をしてた件について  作者: ちくわ天。
第4部 戦いの中で 第2章 戦争が終わって

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211/263

第211話 さらなる発掘

 王国歴165年1月21日 ノイエラント レオンの丸太小屋にて――


 話は少し前にさかのぼり、調査団が帰ってきた翌日のこと。


「レオンちゃん、調査団についていって、いいもの見つけてきたよう」


 いつも突然、サラはレオンの小屋に入ってくる。この日は久々にヴァルデック領から戻って来たフォルカーと朝のコーヒーを楽しんでいたときだった。レオンシュタインはすぐにシノにコーヒーを追加するようにお願いし、サラはやれやれとすすめられた椅子に腰掛ける。調査で使ったであろう麻袋を自分のイスの下に置くと、ガラガラゴトンと重そうな音が響く。


「いやあ、調査団様々だねえ。ワイバーンを倒してくれるんだからね」


 背伸びをしたサラの前に、シノがコーヒーを置く。新鮮なコーヒーの香りが小屋に充満する中、サラは袋の中から黒鉄色の塊を取り出して、ゴトリとテーブルの上に置く。


「これは?」

「鉄だよ。鉄鉱石」


 片目を瞑って人差し指を振る。剣、馬車の車輪、船など、その用途は無限大で鉄を制するものが戦を制するとまで言われたこともある物質だ。石を両手で持ちながら、レオンシュタインはその光沢をしげしげと眺める。黒く輝くようなその塊は、いろんな意味で重かった。


「村長、実はもう1つあるんだよ。それが、これ!」


 さらに取り出された塊は銀色の輝きを放っていた。


「銀さ。しかも、かなりの含有量だね」


 今まで見てきた中でもトップクラスだとサラは断言する。ナレ山では鉄を、コーベ山では銀が産出すると話したサラは、まず銀鉱山を開発すべきだと提案した。


「何故ッスかね? 鉄はいろんなものに使えるし、採掘を優先する方が良くないッスか?」

「コーベ山の銀でお金を稼いでから、鉄を確保っていうのがいいよ。それにね、ナレ山にはワイバーンがいるから危ないし」


 レオンシュタインは、すぐにでも鉱夫を募集することを約束する。


「ま、私もしばらくはのんびり休むよ。じゃあね」


 よいしょと麻袋を肩に担ぐと、レオンシュタインに投げキスをしながらサラは小屋を出て行ってしまった。もの凄い発見にも関わらず報奨金などは全く求めなかった。


「サラ教授は相変わらずッスね」

「早く大学を完成させたいね。あんなに凄い人の話ならみんな聞きたいと思うよ」


 あと3ヶ月で大学の建物が一部完成するとディーヴァから報告がきている。ワイバーン研究のゲオルグも教授就任が濃厚となり、学びたい若者も増えてきている。窓からサラの後ろ姿を眺めながら、一刻も早く大学を設立したいレオンシュタインなのだった。


 §


「1月の定例会議を開きます」


 3ヶ月に1回の会議は、やや思い雰囲気に包まれていた。


 今回は領主レオンシュタイン、宰相レネ、宰相補佐フォルカー、外交・会計フリッツ、参謀長シノ、副参謀長グラビッツ、特別参加として農業大臣ルカスの計7人が参加している。


 冒頭、レネから緊急提案が告げられる。


「実はルカス殿から食料に関する懸念が伝えられたと聞きます。ルカス殿、詳しく教えてもらえませんか」


 ルカスはレオンシュタインに伝えたように、村の収穫が昨年比の7割だったこと、シキシマでは5割、ヴァルデック領では3割しかなかったことを告げる。


「ノイエラントの麦関連の備蓄量は1万人が8ヶ月暮らしていける量だ。昨年8月に植えた小麦や大麦、ジャガイモなども8割の収穫でしかなかった。他の作物と合わせて考えると、ノイエラント、シキシマはぎりぎり大丈夫だが、このままだとヴァルデック領に飢餓が発生する可能性がある」

「日照りがそれほどなかった地域はないのかな?」


 レオンシュタインが尋ねるとフリッツが掴んでいる情報を開陳する。


「ユラニア王国はそれほど影響がなかったようですね。また、ヘレンシュタイク公国は逆に豊作だったようです」


 その報告にレオンシュタインは1つの提案をする。


「飢餓が発生する懸念があるなら、無駄になるのを覚悟で食料備蓄を高めたいですね。それにヘレンシュタイク公国との取引はできないのかな?」


 小規模な取引であれば特に問題は無いが、大口の取引は警戒されるかもしれないとフリッツは話していた。レネは行商している業者に食料を多めに購入することを推進し、取引してきた分は高値で買い取ることを周知することを決める。普段の3割~5割増しで買い取ることが決定する。


「ただ、ヘレンシュタイク公国はレーエンスベルク辺境伯領とは犬猿の仲です。そこと戦争をしたノイエラントの印象は悪くないはずです」


 早速、フリッツが外交を進めることになった。


 次にフリッツが人口等を伝達する。


「ノイエラントの人口は28438人です。そのうち、18歳以上が19900人、それ以下が8538人となってます。人頭税収入は1ヶ月銀0.5枚に減税していますので、銀貨9950枚(約9950万円)となっています。大金貨約10枚です」


「また、土地所有に関する税金は、1アール(10m×10m)につき1ヶ月銀0.5枚ですので、銀貨6965枚(大金貨約7枚)となりました。」


 人口は増えたが人頭税などの税収はあまり増えていない。減税で人々の暮らしが楽になっているか、レオンシュタインは気になっていた。


「どうだろう? 村の経済活動は活発だろうか?」

「活発ッスよ。市場に出ている店は前月比で10%の増加、人口の流入も続いて食堂など大繁盛ッスね」

「それは良かった」


 人々が増えているなら、暮らし向きは良いはずだとレネも太鼓判を押す。

 

「その他の収益は大金貨で表しますと鉱山が40枚、石材6枚、木材7枚、川の運搬事業4枚となり、1ヶ月の収益は大金貨74枚(約7億4千万)です」


「支出に関しては水道等のメンテナンスで大金貨10枚(約1億)、村の職員に1ヶ月小金貨1枚(100万円)で大金貨2.7枚(約2億7000万円)、村の事業(大学等の建設)で大金貨10枚で、計大金貨22.7枚となります。全てを合計しますと、大金貨約51枚の黒字です」


 悪くない収益に、参加者一同に安堵の表情が広がる。


「村の金庫には、現在大金貨920枚(約92億円)が残っております。グブズムンドル帝国への借金残高は大金貨1700枚(約170億円)です」


 ついに借金が減り始め、黒字幅も拡大し前途は明るいけれど飢饉の懸念がある。


「ノイエラントの安心のために、宰相、宰相補佐を中心に各事業を進めてください」

「はっ!」


 レオンシュタインの言葉で会議が締めくくられるのだった。

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