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追放された貴族の三男。得意なバイオリンの音色が美人さんや有能配下を引きつけて、気がついたら巨大王国と大戦争をしてた件について  作者: ちくわ天。
第4部 戦いの中で 第2章 戦争が終わって

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202/259

第202話 陰謀の結末

 悲鳴が聞こえてくるのを待っていたシノだったが、風呂場からは一向に何も聞こえてこない。


(あれ?)


「シノ。もう行こうよ」


 悲鳴が聞こえてこないのを訝しく思ったが、とにかく3人を女湯に行かせる。ティアナ、イルマ、ヤスミンが脱衣所に入るとフラプティンナが半裸のままレオンシュタインを介抱していた。


「私が来たときに倒れていたの。ほら、ここを見て。青いあざがあるわ」


 肝臓、腎臓、みぞおち付近が青くなっていた。近くに立っていたシャルロッティは思わず視線を逸らす。


「レオン! しっかりして! 目を覚まして!」


 ティアナ、フラプティンナの顔は真っ青だ。イルマとヤスミンは心配のあまり泣きそうになっている。そこにシノがやってくる。


「レオンさま!! なぜ、女湯……」

「シノ! 医者よ、医者を呼んで! レオンが目を覚まさないの! お願い!」


 ティアナが叫ぶ! シノも青くなり、すぐ側でしゃがみ、レオンシュタインの様子を観察する。きちんと呼吸をしており気を失っているだけだと気付く。


「ティアナさん、大丈夫です。気を失っているだけですよ」


 ティアナは、ほっとしてレオンシュタインを見つめる。そこにいる全員が安堵の溜息を漏らしていた。自分のシナリオが上手くいかなかったことを理解したシノだが強引に計画通りに運ぶことにする。


「レオンさま。まさか女湯でよからぬ……」


 全部言い終わる前にレオンシュタインが目を開く。


「レオンさま! よかった」


 フラプティンナはほとんど裸のまま、レオンシュタインの頭と身体を抱き抱えてしまう。当然、他のメンバーはイラッとする。すると突如、大きな声が暖簾の向こうから響いてきた。


「姫さま、レオンシュタイン殿と本懐を遂げられましたか?」


 タダイエだ。それを聞き、シノは失敗を悟りそそくさと服を身体にまとい始める。


「ねえ、シノ。本懐って何?」

「あんた、まさか……。レオンが女湯にいたのは」


 シノは笑顔のまま脱衣所をとびだしていた。他のメンバーたちも、すぐに服を着てシノの後を追いかけていった。


「シノ! あんたまた、ろくでもないこと企んでたわね!!」


 その声が遠ざかり、その場にはレオンシュタインとシャルロッティだけが残される。


「あ……。な、なんか、ご、ごめんね」


 シャルの一言がこの騒動の締めくくるのだった。



 §



 王国歴164年12月13日 午前8時 クリッペン村 海岸にて――


 翌日、早朝の出発を見送ろうと、レオンシュタインたちは海岸に出かけていった。ゴツゴツした岩場の海岸は大型船の接岸だけではなく、小型船の接岸さえも拒んでしまう。馬車から降りたヴィフトはフリッツへ近づき、フラプティンナは海の近くまで走り寄っていった。


「フリッツ殿、素晴らしい贈り物をありがとうございました」

「いえいえ、こちらこそ。これからも、よろしくお願いします」


 固い握手を交わすとヴィフトはカッター船に乗り込んでいった。


 レオンシュタインを手招きする少女のライトブルーの髪が海風に吹かれて横になびいている。フラプティンナは何をしても可愛らしいと、レオンシュタインは何故か照れながらノコノコと側に寄っていった。

 

「レオンさま、私、普通の女の子として過ごしたこの1週間のことは一生忘れないと思います」


 レオンシュタインの方を向かず海の向こうを眺めながら話している。後ろでは帝国の関係者が次々とカッター船に乗り込んでいる。


「私、本当に嬉しかったんです。友だちと気軽に服を見たり、お菓子を買ったり、たったそれだけのことがこんなにも楽しいなんて。知らなかった……なあ」


 何と答えればよいのか分からないレオンシュタインだった。フラプティンナはレオンシュタインの方を振り向く。


「レオンさまとの演奏も素晴らしい体験でした。もう少し、一緒に練習したいなって今でも思ってます」

「もう少しティアナたちと一緒に暮らしたら?」


 悲しげなフラプティンナを見てレオンシュタインは提案するが、姫はまた海の向こうを眺めてしまう。


「レオンさま、……私は帰ります。私もレオンさまのように自分の運命から逃げないつもりなんですよ」


 いつものように花が開くような笑顔ではなく今にも泣き出しそうな笑顔。その笑顔はレオンシュタインの心の中にずっと残り、しばらく忘れることができなかった。


 ジーナとレベッカを送り出し外洋船への乗り組みを完了する。海岸から船まで、かなりの距離があり、もう顔を判別することは出来ない。するすると帆が上げられ船が少しずつ沖に向かって動いていく。ありがとうの意味を込めて、みんな大きく手を振る。


 やがて船は豆粒ほどの大きさになり、ついに視界から消えてしまうのだった。

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