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追放された貴族の三男。得意なバイオリンの音色が美人さんや有能配下を引きつけて、気がついたら巨大王国と大戦争をしてた件について  作者: ちくわ天。
第4部 戦いの中で 第1章 敵が侵入って……。

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第188話 新たな仲間

 王国歴164年11月14日 昼12時 クリッペン村 村長小屋前にて――


 ようやく平穏を取り戻したノイエラントでは、論功行賞が村長宅前の広場で行われていた。戦死者83人については、近親者に小金貨3枚(約300万)の支給をし、かつ1年に小金貨1枚の年金が支給されることが決まる。亡骸は村の外れに設営された見晴らしのよい戦士の墓に埋葬されることになった。


 生存者は一律、小金貨1枚と銀貨50枚(約150万円)の支給となり、準備のフリッツは大忙しだ。第1、2部隊の兵士については、それに上乗せして狭いながらも土地が贈与されることになった。農地(4アール)か住宅地(2アール)か、どちらかを自由に選べることになり、その場で大きな歓声が上がる。


「自分だけの土地がもらえるのか?」

「そりゃ、すげえ!」


 すぐにフリッツの前に手続きの行列ができる。ヴァルデック領の義勇兵については兵士と同じ扱いになり、土地をもらわない場合は小金貨1枚を報酬に上乗せすることになった。義勇兵たちは身の振り方をフォルカーに相談するものが多かった。それというのもノイエラントの発展を目の当たりにしたからだ。


 綺麗な水が至る所に溢れ、花々が咲き誇る清潔な街並みが美しい。広場でたくさんの市が開催され、中心街には店がひしめき合っている発展ぶりである。従業員募集の張り紙が町中に貼られ、立ち寄った店の料理はどこも美味しかった。


「ま、自分で好きな方を選べばいいッス。ただ、土地をもらえるチャンスは滅多にないよ」


 フォルカーも安全・安心だけではなく、人々が楽しめる娯楽が揃っているノイエラントの発展には目を見張っていた。フォルカーが一番、感銘を受けたのは本屋があることだった。聖書だけではなく、文芸、紀行など多くのジャンルに渡った本が棚に並べられていた。自分の思いを自由に表現する場がそこにはあった。


(これは……。自分が考えていた以上にすごいッスね)


 振り返ってみるとレオンシュタインは、まわりを重臣たちに囲まれてただニコニコしている。重臣は当代きっての実力者ばかりで、その中に旧主であるヨシアスがちゃっかりと連なっている。これからどうするかフォルカーが考えを巡らせていると、ふいに自分の名前が呼ばれていた。


「フォルカー殿、前へ」


 レオンシュタインに呼ばれ、のそのそと前に出て行く。フォルカーから目を離さずにレオンシュタインはその功績を称えていく。


「敵侵攻の遅延ならびに敵後背からの攻撃で、フォルカー殿には多大なる功績が認められます。敵への流言並びに密集陣形への攻撃は我が領土を救ったと言っても過言ではありません」


 自然にフォルカーの頭が下がる。


「フォルカー殿には大金貨5枚(約5000万円)の報奨金ならびに住宅地200アールかその倍の農地を贈与します」

 

 大金貨などこれまでのフォルカーには縁がなく、破格すぎて声がでない。その上100m×200mの住宅地、農地であればその倍をもらえることになる。現実とは思えない事態にフォルカーはただただレオンシュタインの顔を見つめていた。すると、さらにもう一言レオンシュタインが付け加える。


「フォルカー殿は、行政、財政、軍事に明るく、その知見は我が領土のために必要不可欠です。そこでフォルカー殿は宰相補佐となり、レネさんの下で手腕を発揮してもらえないでしょうか」

「俺が? 宰相補佐?」


 すると近くにいたヨシアスが、どんと肩を叩く。


「お前ならその力はあると思ってた。すまなかったな」

「ヨシアスさま」


 その瞬間、フォルカーは自分の進むべき道を決定する。


(ここまで言われたんじゃあ、やるしかないッスね)


 レオンシュタインの前に移動し、膝をついて受託の言葉を述べる。


「非才の身ですが、ノイエラントの発展のため人々の幸福のため、力を尽くしたいと思います」


 周囲にいた部下たちが大声を上げる。


「フォルカーさまが宰相補佐!! すげえ!!」

「いや、あの人なら、なれると思ってた!」

「フォルカーさま、おめでとうございます」


 祝福に包まれて頬を赤くするフォルカーにさらに祝福の言葉が唱和される。


「フォルカー、万歳ジーク・フォルカー!!」

「ノイエラント、万歳ジーク・ノイエラント!!!」


 祝いの言葉が爆発し周囲に大きく広がっていった。


「よっしゃあ! 今だ!!」


 手品師のアルベルトが合図を出した瞬間、空に花火が打ち上げられる。夜ほど輝きは見られないが、それでも明るく大輪の広がりを見せ、ドカンドカンという大きな音が響き渡る。


 音が収まったところで、アルベルトは、


「平和を祝う肉祭りの開催を宣言する!」


 と大声をあげる。群衆の盛り上がりは最高潮に達し、すぐにローレの食堂から皿一杯の肉が運ばれてくる。


「丹精込めてつくった豚肉だ! いっぱい、食べてくれ!」


 農家のルカスは中央で調理を始める。周りには多くのテーブルが並べられており、次々と肉の皿が置かれていく。焼き肉の香ばしい匂いが広場に充満する。


「村で作られたビールはいかが? 苦みが爽やかだよ」


 ビール樽の前にも人々が殺到し、間髪を入れずジョッキに溢れんばかりのビールが注がれていく。次々と打ち上げられる花火と賑やかな爆発音が気持ちを盛り上げる。最近、広がりを見せ始めているアコーディオンやバイオリンの演奏が鳴り始めた。


 平和がやってきたのだった。

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