表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された貴族の三男。得意なバイオリンの音色が美人さんや有能配下を引きつけて、気がついたら巨大王国と大戦争をしてた件について  作者: ちくわ天。
第3部 新天地ノイエラント 第3章 凶報に打ち勝つ夢

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
170/284

第170話 外交官フリッツが帰ってきた

 王国歴164年9月15日 午前10時 クリッペン村 村長小屋にて――


 エッシェベルク子爵領に出かけていたフリッツが帰国し、すぐに村長小屋に関係者が集められる。今回は、村長レオンシュタイン、統括レネ、魔法ティアナ、法律バルバトラス、農業ルカス、水関連オイゲン、斥候ヤスミン、参謀シノ、服飾・出版シャルロッティが参集した。


 軍事訓練中のゼビウス、砦のメンテナンスをしているディーヴァ、鉱脈の調査に出かけたサラ、造船所のジーナを守っているイルマは参加できなかった。久々に村に帰ってきたヤスミンは、ちゃっかりとレオンシュタインの隣に陣取っていた。


 全員が揃うのを見計らって、フリッツはエッシェベルク領主マインラートから得た情報を報告した。しばらく侵攻はないということが一同をほっとさせる。しかも、ヴァルデック領まで統治できそうだと分かると一同から賞賛の声がわき上がった。


 その困難さを理解していたバルバトラスとオイゲンは労いの言葉に力がこもる。

 

「さすがフリッツだな」

「本当にお疲れ。俺も水道づくりに力が入るぜ」


 フリッツはその言葉を聞き、嬉しさを隠しきれない。やはり、この村の仲間は素敵だなとフリッツは心から思うのだった。


 タイミングを見計らってフリッツは1つの提案を切り出した。


「実は、私の成功の半分はヨシアスさまのおかげです。ヨシアスさまがマヌエル卿と話をつけてくれたのです」


 語られるヨシアスの活躍ぶりに一同は意外な面持ちで耳を傾けていた。


「ヨシアスさまは確かに借金をつくりましたが、それは領民へかける税金が低かったからです。実際にヴァルデック領で反乱は発生しておりません。盗賊団も少ないと聞きました。また磁器の件も、成功すれば莫大な財を我が村にもたらします」


 そこまで話すとフリッツはレオンシュタインの方に向き直り、頭を下げる。


「レオンシュタインさま。私の功と引き替えにヨシアスさまを村の経営に参画させてはいかがでしょう?

 あの御仁は決して悪い方ではなく、むしろ人とは別の視点で物事を考えています。そういった多様性こそ、私たちの村には必要と存じます」


 強く推薦するフリッツの言葉に女性陣は渋い顔をするが、他はなるほどという顔つきになる。昔、ヨシアスから恩を受けているレオンシュタインは即決する。


「是非!」


 その瞬間、右手を振り上げながらヨシアスが入ってきて、演劇のような台詞回しで全員に話りかけていた。


「レオン! さすが我が弟分だ! 兄は嬉しいぞ!」


 シノが氷点下以下の眼差しになり、イルマから話を聞いていたティアナも警戒の眼差しを向ける。あまりの物言いに一同はもはや笑うしかなかった。しかもレオンシュタインの近くにいるヤスミンに目をつける。


「おお! こんな華麗な美少女がいることに気がつかなかったとは。ヨシアス一生の不覚。お嬢さん、是非、お名前を教えてください」

「いやだ」


 レオンシュタインの背中に隠れようとするヤスミンが、ちゃっかりと密着する様子をティアナは苦々しく眺めていた。


「ヤスミン、今は大事な会議中ですよ」


 ヤスミンを睨みながら牽制する。聞こえない振りをしたヤスミンはレオンシュタインの腕にしがみついたままで、ティアナの目に雷光が光る。


「ヨシアス殿、今は大事な会議中です。まずは、おかけになってください」


 レネにやんわりと注意を受け、あわててヨシアスは自分の席に座る。ヤスミンに投げキッスをしながら……。ヤスミンの近くにいたシャルロッティは、手持ちのメモにびっしりと書き込みを続けていた。


(これは、ええ人材が入ったなあ。物語のいいスパイスになりそうなキャラクターやで)


 そう考えるとさらにメモの裏にまで書き込みを開始する。


(次回作の題名は決まった! 『無自覚男にライバル登場、女の敵をまとめて冬の川に叩き込め!』や)


 恐ろしい創作をされているとも知らず、レオンシュタインは笑顔でヨシアスを眺めているのだった。


 咳払いを一つしたレネは、現状の報告を始める。


「実はカゲツナ殿とマサムネ殿に連絡し、こちらで防衛してくれるサムライを200名選抜してもらいました。すでに練兵場でゼビウス殿とともに訓練中です」


 そこでレネは顔の表情を緩める。


「あとディーヴァからの砦完成が間近との報告が来ています。常時20名を駐留させる必要がありますが、戦時はさらに多くを駐留できます」

「また、造船所のイルマからも連絡が来ています。そろそろ進水式ができそうだとのことです」


 フリッツがいない間も村は動き続けていた。レネは満足そうに周囲の様子を眺めつつ、


「まず侵攻を防ぐ準備をしましょう。シノ殿、お願いします」


 シノがその場に優雅に立つ。黒髪が揺れ、その髪やキモノから薫衣香くすのえこう(キモノから漂うよい香り)が漂ってくる。


(今日の薫物たきものは、侍従じじゅう(気品と情緒あふれるさまを表現した香り)。レオンさま、気に入っていただけるかしら?)


 軍事ではなく個人的な感情で一杯のシノだったが、それを台無しにする強烈な一撃が放たれる。


「シノ殿は素晴らしい香りがしますなあ。思わず引き寄せられそうだ」


 香りに気づいたヨシアスが、思わず近くに寄っていきそうになる。


(だ・い・な・し!!)


 作戦は失敗である。シノの目が更に温度を下げて、ヨシアスを凍らせんばかりに冷たくなっていった。


 しかもレオンシュタインは、隣のヤスミンとキャッキャッウフフ的な交流をしている。


(もう!)


「では軍備について提案します!」


 少し苛立つような声でシノが話し始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ