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追放された貴族の三男。得意なバイオリンの音色が美人さんや有能配下を引きつけて、気がついたら巨大王国と大戦争をしてた件について  作者: ちくわ天。
第3部 新天地ノイエラント 第3章 凶報に打ち勝つ夢

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第166話 砦をつくる

 王国歴164年8月13日 午前10時 クリッペン村にて――


 その日から二人のサイサクが24時間体制でヨシアス卿の監視を続けていた。シノが見る限りヨシアス卿の動きはいかにも不自然で、町の見学の際にメモをとっている時点で怪しさ満点であった。ただ、その情報を外部に伝達する様子はこれまで見られなかった。


 §


 その頃、ヤスミンとディーヴァは砦の候補地の選定にかかっていた。村から馬で2日の場所に船付き場をつくるため、それを砦で守れるようにしたい。ヤスミンは索敵で敵がいないことを調べ、ディーヴァは容易に進入できない地形を求めてあちこちを彷徨っていた。


「川が厄介だな」

「川がダメ? 侵入しにくいよ?」

「いや、そうじゃねえ。川が道から離れてるから、そこも守るとなると砦が馬鹿でかくなっちまうってことだ。なるべく道の近くにつくりてえな」


 しばらく山中を歩き回った2人は、道の西側が崖で切り立った場所を見つける。ヤスミンがこわごわと崖を覗くと、下は50mほどの絶壁があり目が眩む。


「ふむ、この崖を登らなければ砦の後ろに行くことはできねえ。東側も切り立つ崖で乗り越えるのが難しい。砦をここにつくるか!」

「了解」

「ヤスミン、マグロ組に連絡だ。すぐに煉瓦を運ぶよう伝達してくれ」

「おけ」


 ヤスミンはすぐに馬上の人になる。


「ディーヴァ、気をつけて」

「何かあったら、すぐ逃げるよ」


 それを聞くとヤスミンはすぐにクリッペン村に馬を走らせる。その命を受けて、2日後には先遣隊が何台もの荷馬車に乗って候補地にやってきた。住宅作りが忙しい最中ではあったが、村の一大事とあっては優先しなくてはいけない。20名ほどの腕のいい若者たちが集められた。


「こりゃあ、おっかねえな」


 崖下を覗き込みながらマグロ組のメンバーは口々に話していると、オイゲンのチームも手伝いのために駆けつけてきた。働くメンバーは70名となり、その全員にディーヴァは檄を飛ばす。


「お前ら、あの村は好きか?」

「はい!」

「俺もそうだ。図面はもう出来てる! だからお前ら、煉瓦の準備を万全にしとけ!」

「おう!」


 一斉に働き始めた70名はあっという間に煉瓦を下ろし、砦近くまで運搬する。材料の煉瓦は高さが1m、長さが30mほどの長方形に積み重ねられていった。


「よくも集めたもんだ。オイゲンさん、恩に着るぜ」

「いいっていいって。俺もこの村のファンだからよ!」

「で、大事なことを一つお願いしていいか?」

「勿論だ」


 ディーヴァはためらいがちに、話を切り出した。


「実は砦の要とも言える場所に割栗石が何個も必要なんだ。割栗石ってのは40cmくらいの固い石ならなんでもいい。それで土台をつくり、そのまわりを煉瓦で囲むっていう寸法さ」

「なるほど。で、どれだけあればいいんだ?」

「まあ、こっちに来てくれ!」


 オイゲンをつれて、土台の部分を指差しながらディーヴァは説明を続ける。


「この部分が全部埋まればいいんだ。かなりしっかりした土台になると思う」

「よし! 早速集めてくるぜ!」


 荷車を何台も引きながら、オイゲンは山奥へと入っていった。70人もオイゲンを追って、ツルハシを肩に担ぎながらついていった。

 その日から1週間が立ちマグロ組が準備を完了する頃、ようやくディーヴァが必要とするだけの割栗石が集められ、土台が完成していた。


「よっしゃあ!! じゃあ土台をしっかりさせて、煉瓦を積んでくぞ!」


 ディーヴァが基礎工事に取り掛かっている間に、漆喰がたくさん練られていく。ディーヴァが指示する細かい場所へマグロ組が煉瓦を積んでいくと、すぐに肩の高さまでの煉瓦が積み上がっていく。更に上に積むための足場を組み立てていた。


 全体の進行を眺めながら、ディーヴァは的確な指示を出すことに忙しい。


「砦の高さは10mにしておこう。梯子を掛けにくい高さで守りやすい」

「扉は鉄で木を挟んだものにしよう。早速発注だ!」


 すぐに辺りが暗くなり作業が困難となる中、誰も休もうとはしなかった。篝火を焚くようオイゲンは指示し、安全が確保されている作業だけに取り組ませる。


「安全第一だ。疲れたやつは後ろのテントで休め!」


 自分たちの村が攻撃されるかもしれないという恐怖と怒りのために、休もうとするものは誰もいなかった。毎日、楽しく暮らしている作業員たちにしてみれば、自分たちの生活を破壊しに来る兵士たちが許せない。


「一人も村に入れねえぞ!」

「おお!」


 深夜も交代で作業が続けられ次々と煉瓦が運ばれていく。10日、20日、そして1ヶ月が過ぎると、高さ10m、厚さ8m、横の長さが16mの砦が完成した。砦の上には100名の弓兵を配置できる。下から見上げると、とてもこの高さをよじ登れるようには思えない。


「ま、今は兵士がいないが、これなら村を守ってくれそうだな」


 バンバンと壁を叩きながら、ディーヴァは満足そうに砦を下から見上げる。


「さあ、村に帰るぞ。酒と食い物は用意した。ローレ食堂前に集合だ! 金もいつもの2倍払うぜ!」


 大きな歓声が上がり、それぞれが馬車へ乗り込む。ディーヴァも馬に跨り馬車を先導する。砦には入口の扉を開け閉めするためにマグロ組の6名が残され、ヤスミンも索敵のために残ることになった。


 次の日、ケスナーがシキシマから派遣されたサムライ6人を引き連れて砦にやってきた。


「おいおい、凄えな、こりゃ! これなら誰も侵入できないわな」

「敵が来たら弓で射貫いてやるよ!」


 すぐに砦の上でケスナーは警戒を始める。砦のすぐ近くに宿泊用の小屋が建てられ、50名が常時、寝泊まりと食事ができるものとなった。この日は総勢12名で砦を守り、後退で小屋に眠る。敵の接近はなく、静かに砦の1日が過ぎていった。


 砦を作っている間、村ではちょっとした騒動が巻き起こっていた。

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