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追放された貴族の三男。得意なバイオリンの音色が美人さんや有能配下を引きつけて、気がついたら巨大王国と大戦争をしてた件について  作者: ちくわ天。
第3部 新天地ノイエラント 第3章 凶報に打ち勝つ夢

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第164話 軍備を整える

 王国歴164年8月12日 午前10時 クリッペン村 村長小屋の中にて――


「それほどの価値がヴァルデック領にあるんですか?」

「もちろん、ございます」


 その価値についてレネは指を折りながら説明する。

 

「1つ目は船着き場の件が解決します。ヴァルデック領の北側に船を停泊させ、シュトラントやコムニッツと交易ができます。2つ目はヴァルデック領の山が手に入ります。手つかずの山が多いため、サラ殿に調べてもらうのが良いでしょう。3つ目はヴァルデック領を守る騎士10名、兵士30名がすぐに雇用できます、すぐに揃えられるのは魅力です。この3点から考えても、大金貨800枚の借金を肩代わりするべきです」

「確かによいことのように思いますが、ヨシアスさまに悪い……ような」

「ヨシアス卿は領地経営が好きではなかったのでしょう。知り合いであるレオン殿に領土を任せ、お金の心配をせずに夢を叶えたいのではないですか?」


 レオンシュタインは軽く頷き、窓のそばまで歩いていく。晴れた青空に目を向けて、その青さをずっと眺めていた。


「ティアナを呼んでくれないかな」


 すぐに使いが出されティアナが村長室に青い顔をして入ってくる。みんなが座っているテーブルの近くにディーヴァは椅子をもう1つ置き、そこにティアナを優しくいざなう。


「ティア。アルプレヒトという貴族名に心あたりはある?」


 黙ったまま頭をふり、目線を下に落としたままだ。


「そ、それと、兄上の所に行く気は……」

「レオン! 何でそんなこと聞くの? 嫌に決まってるでしょ!! 私はこの村にいるからね! どこにも行かないからね!」


 詰め寄るティアナをなだめながら、レオンシュタインは次の議題に移る。


「では、村の防衛計画についてゼビウス殿のお考えをお願いします」


 フリッツから促され、ゼビウスはテーブルの真ん中に村の周辺の地図を広げる。ゼビウスはまず北の街道沿いを指差す。


「敵が村に侵攻するルートはここしかない。だから、この山の街道沿いに砦を建設すべきだ。そうすればわずかな人数で多くの敵を足止めできる。すぐにヤスミンさんとディーヴァ殿を派遣し、候補地を決めよう。敵は待ってくれない」


 レネが地図に赤い丸をつけ、全員が真剣な顔つきでそれを眺める。戦が始まることが現実の事として、みんなの心に迫ってくる。次にゼビウスは地図の隙間に描き込みを続ける。


「次にすることは軍の設立だ。1つは騎士団、もう1つは歩兵とサムライの混成軍団だ。騎士団は2部隊を編成し、指揮官は私とイルマさんがいいと思う。歩兵の指揮官はゴート族の誰かがなるとよいと思う」

「へえ、あたいも騎士団長かあ。出世したもんだな」


 いつもと同じような口調でイルマは話すけれど、口が渇くのか、かすれた声になっている。ゼビウスはうなずいて、最後の話に移る。


「最後は参謀を見つけることだ。私程度の戦略を立てる者はごまんといる。戦場をや全ての状況を分析し、敵を打ち破る知謀の者が必要だろう」


 そこまで話すと。ゼビウスはふうと溜息をつき断言する。


「とにかく時間がない。今すぐに動くべきだ」


 1つ目、2つ目は何とか見通しがつくが、3つ目の参謀はすぐに思い当たらない。聞けばゼビウスにも知り合いはいないらしい。村の人材でも、レネは内政、フリッツは外交に特化しており、ゼビウスとイルマは今の所、部隊の指揮に限定される。


 よい案がない。


 すると、そこにハーブティーのお代わりをもったシノが入ってくる。みんなに給仕しつつ1つの提案をする。


「レオンさま、ティアナさんを村に残した方が良いのではありませんか?」


 今までの意見とは真逆でカッポウギの白さが妙に目立つ。意外そうなティアナの視線をかわしつつ、こほんと小さい咳をつく。


「部隊による近接戦闘と魔法による遠距離からの広範囲攻撃は両方とも必要です。ティアナさんが()()()()()()としても抑止力になります」

「役に立たないとは失礼じゃない!?」

「あら、すみません。わたくしとしたことが」


 ティアナは憤るがシノはそれを無視して話を続ける。


「この村には魔法攻撃のできる人が一人しかおりません。それを手放すことは現時点ではありえない選択です」


 断言したシノの話をゼビウスは興味深そうに聞いていた。他のメンバーも意外な物言いをするシノを見つめている。レオンシュタインは思わず尋ねていた。


「シノさん。軍事に詳しそうだけどシキシマで勉強でもしたの?」 

「そうですね。村の文庫ふみくらにある本を読みあさりました。本が好きでしたから……。そこには兵法関連の本しかなかったものですから、いつしか詳しくなっておりました」


 その話はそこまでとなり、話題は自然とシュトラント軍にどのように勝つかの話題になる。部屋の隅の椅子を引っ張り出し、姿勢良くシノは腰掛けていた。


「では、どのようにしてシュトランド軍に勝つかですが……」


 侃々諤々の話が続き、30分ほどが経過した頃、シノがその白い手をそっと挙げていた。

 

「皆さま、シュトラントと戦って勝つことをお考えのようですが戦わずして勝つことが最上ではありませんか? フリッツさまをシュトラントへ派遣し時間稼ぎをすべきです。戦は最後の手段。戦いは回避できるなら、そうするべきです」


 悪いことを考えている黒いシノの目つきになっている。その話を聞いたレネは半信半疑ながらもシノの提案を受け入れる。


「では、すぐにヤスミンとディーヴァを国境に派遣しましょう。あと、歩兵の募集はカゲツナ殿に依頼します」


 決定事項が決まるとレネはシノに1つの提案をしていた。

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