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追放された貴族の三男。得意なバイオリンの音色が美人さんや有能配下を引きつけて、気がついたら巨大王国と大戦争をしてた件について  作者: ちくわ天。
第3部 新天地ノイエラント 第1章 新たなる大地

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第131話 森を制圧せよ!

 王国歴163年4月5日 午後1時 フリッツの馬車近くの街道にて――


「本当に私は行かないのか?」


 みんなが命をかけているのに安全な場所に隠れているのは貴族の振るまいではないと、レオンシュタインはレネに軽く抗議する。けれども、レネは断言する。


「貴方がいてもやるべき事はありません。それどころか、みんな貴方のことを気遣い100%の力を発揮できません」


 レオンシュタインの納得できない表情を見てレネはさらに話を続ける。


「見たところ、こちらの戦う人は一騎当千のようです。信じて待っていてください。貴方に何かあれば1000人倒したところで私たちは負けなのです」


 ようやく顔を上げたレオンシュタインにレネは優しく言葉をかける。


「貴方がすべきことは、みんなが帰ってこれる場所であり続けることです。それは貴方にしかできないことなのです」

「……分かりました。みなさんの無事を祈っています」


 戦闘チームにも笑顔が戻り、待機チームのレオンシュタイン、フリッツ、シャルロッティ、イルマは、戦うメンバーを激励する。


「イルマさん、貴方は馬車の側で三人を守ってください。いざとなったら馬車で逃げてもかまいません」

「分かった」


 レネは頷くと小走りで前方へ移動を始め、戦闘チームはそれに続く。道の両側に木々が立ち並び、さらに奥にはうっそうとした森が広がっていた。周囲にはなだらかな丘陵が広がり、腰の高さまで草が生い茂っていた。


 こちらが気付いているように相手もこちらに気がついている。


「こういった場所は木を切り倒した方がいいんですがねえ」


 この状況でのんびりと話すレネは、なかなかに剛胆だ。200mくらいまで接近した時、レネはヤスミンに探知をお願いする。


「150mくらい離れた高い木に3人、木の陰に7人、ばらばらに散ってる」

「ありがとうございます。なるほど、もうすぐ弓の射程に入りますね」


 少し考え込んだレネは、まずはティアナに活躍してもらうことにする。


「ティアナさん、広範囲を攻撃できそうな魔法の射程距離はどのくらいですか?」

「帝国で試したときは100mくらいだった」

「では100mまで近づきましょう。弓が心配ですが、まあ何とかなります」


 敵を油断させるように5人はゆっくりと歩き、一番後ろのティアナは詠唱を始めた。少しずつ森の上に灰色の雲が広がり始めたにも関わらず、賊に動きは見られずに森はひっそりとしたままだった。雲がさらに大きく広がり始め、その色に白色と黒色が混じり始める。


(魔力を調整)


 殺してしまわないようにティアナは魔力をコントロールする。


(アントリくん、魔力調整、バッチリできるよ)


 ついに小さな雷が地面に落ち始め、ガガン、ゴゴンという音が森に響き始める。黄白色のスパークがいくつも空中を走り回り、眩しさが増していく。


「雷の嵐!!」


 黒色の雲から雷が2つ、3つと落ち始め、やがて巨大な雷が木々を引き裂き始める。ずしんという振動音が次々と鳴り響き、何本もの白黄色の雷が落ちる。激しい音が轟き渡り、雷が落ちた木々からは赤々とした炎が上がり始めた。


 高い木の枝から弓を持った3人の男が、ぼとりぼとりと地面に落ちてくる。落ちた後も地面で動けないままだ。木の後ろに隠れていた男たちは突然の雷に驚愕し、奥に逃げようとするが後ろは既に炎に包まれていた。森の奥に雷を集中させたティアナは敵の退路を断っていた。

 

 バリバリという音に包まれ、一人、また一人と賊が倒れていく。強力な魔法を制御したティアナは的確に賊を制圧した。地面にはすでに8人の賊が倒れている。


「素晴らしい魔法ですね」


 そう言いながらレネは手元の弓を引きしぼった。ひょうっという音がしたかと思うと残った2人の足に命中する。


 結局、近接戦闘の出番はなく近接戦闘係の3人はロープを使い、敵全員を縛り付けていた。縛られた10人は何もしゃべらないことから、盗賊ではないことが分かる。

 

「本当は警邏隊に引き渡してお金をゲットしたいところですが」


 賊を引き渡す相手が自分たちを狙っているため如何ともしがたい。迷惑料としてイルマは賊の持っていたお金を回収し銀貨16枚をゲットする。


「お金を寄付して貰いましたので、賊は道に置いておきましょう」


 レネは水と飲み物を傍に置き、ナイフを1本だけ置いていく。剣は回収し馬車に積み込むことにする。道の少し先には逃げられなかった5匹の馬が怯えた様子で後ずさりをしながら、レネたちを見つめていた。


「かわいそうなことをしました。すぐ、逃がしましょう」


 木から馬の綱を外すと5匹はすぐに遠くに走り去ってしまった。


 それを見届けると、長居は無用とばかりに戦闘班はすぐにレオンシュタインの待つ馬車に戻っていった。そこでは留守番組が無事を喜び、笑顔で迎えてくれるのだった。

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