表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された貴族の三男。得意なバイオリンの音色が美人さんや有能配下を引きつけて、気がついたら巨大王国と大戦争をしてた件について  作者: ちくわ天。
第2部 華やかな北の都 第5章 ティアナの物語

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
113/283

第113話 ティアナの性癖?

 王国歴162年12月20日 昼1時 ケリズ魔法学園にて――


「ビルキルトさま、いいのですか? あのような下賤げせんの輩が学友とは」


 学園の食堂に颯爽と向かうビルキルトの後を、取り巻きの3人組が追いかけていく。ティアナが学園に来てから3日が過ぎたというのに未だにこのような陰口が後を絶たない。当のティアナは全く気にしていないのだけれど。


「まあ、寛容を見せようではないか。側室候補として見初められるために学園に来ているのかもしれないからな」

「そ、それにしても下賤の輩ながら、なかなか整った顔つきの女でしたな」


 取り巻きはティアナの横顔やスカートからのぞく白い足を思い出し、顔が緩みっぱなしになっている。

 

「ただ、少し礼儀を教えないといけないな」


 ビルキルトも同様に思い出し下卑た考えをめぐらしていた。伯爵家に妙齢のメイドは何人も働いていて、彼はその何人かを『教育』と称しては弄んでいた。他の貴族も似たようなものだった。


「ま、楽しみだ」


 そんなことはつゆ知らず、ティアナは毎日をのほほんと過ごしていた。2、3日は一人で過ごしていたが、やがて男爵家などの令嬢が話しかけるようになっていた。


「ティアナさん、シュトラントってどんな国ですか?」

「いや、伯爵領なんですけど」

「ティアナさんは、なぜメイドなんですか?」

「なぜと言われても……」


 何より多いのは恋のお話だ。


「ねえ、ティアナさん。この学園で気になる方は誰ですか? やっぱり伯爵家のビルキルト様ですか? それとも、侯爵家長男バルドュル様ですか?」


 ()()()()()()()


 ただ、それでは親善係としてどうだろうと思い直す。


「あなたは、どなたがお気に入りなのですか?」


 話しかけられた令嬢は両手を組み、天に昇るような表情になる。


「私はビルキルトさまです。銀髪のイケメン、伯爵家の家柄、パーフェクトですわ」


(私の中では、最低)


「私は子爵家のファンナル様です。お優しくて、それもでいて魔法もお強いんですよ」


 キャーキャーと黄色い声が飛び交い、正直、ティアナは苦笑いだ。仮面がなければ、その表情で『何こいつ?』 とドン引きされること間違いなしだ。


 その時、部屋の隅に座る男子学生がティアナの目に入る。


「あの方はどなたですか?」


 みんな、ティアナが目を向けた男子の方に目を向けると、令嬢たちはがっかりしたように声のトーンを落とした。


「ティアナさん、あんな太った男がいいんですの?」

「彼はアントリ。フォレイ男爵家の長男です」


 あまり評判は芳しくないようだ。


「やっぱり太っている方はねえ」

「自己管理ができないってことですからね」


 すると近くにいた性悪グループはティアナの机に身体を向け、口を挟んできた。棘だらけの悪意のある言葉は、ティアナにシュトラント城のメイドたちを思い出させる。


「あら、ティアナさんとお似合いじゃない?」

「そうよ、平民でメイドなら出世よねえ」


 ティアナは改めてアントリを見る。見れば見るほどレオンシュタインに似たところが多い。太った体型もそうだが、自信がなさそうなところ、そして優しそうな雰囲気がそっくりだ。席を立ったティアナは自然とアントリの方に歩いていった。


「こんにちは、アントリさま」

「え、ええ!? ティアナさん?」


 今日のティアナは仮面が付いていたけれども、それでもアントリには刺激が強すぎた。顔の近くに、ふわりと金髪の巻き髪が垂れ、光が零れてくるような気がする。しかも、近くで見ると白く引き締まったおみ足は強烈すぎた。


「隣、空いてますか?」

「ええ、空いてる……みたいです」


 それを聞き、ティアナはふふっと笑う。本当に似ている。


「アントリさまって面白~い。座りますね」


 軽くとんと座席に着いたティアナから、ふわっとローズマリーの匂いが漂ってくる。貴族が好んで使っている香水とは全く別の種類で、グブズムンドルでは珍しい優しい香りだった。


「アントリさまは、どんな魔法を使うんですか?」


 まず一番無難な話題を振る。ここでは魔法が全てなのだ。


「僕は火ですね」


 その様子を見ていた性悪グループたちが色めき立つ。


「何なの? あの女」

「所詮、平民のメイドってことよ。少しでもチャンスがあれば玉の輿を狙ってそう」


 性悪グループはここぞとばかりに悪口を言い立てる。


「何で、あんな冴えない男に寄っていくのかしら?」 


 令嬢たちも疑問を感じないわけではないがティアナは全く気にしなかった。貴族の令嬢と話をするよりも、魔法ができる男子との会話の方が気楽だった。その結果、何日かするとティアナはまたもや女性グループから離れ、一人で過ごすようになった。いや、正確に言うと二人で過ごすようになった。


「ねえ、アントリくん。魔法の勉強につきあってよ」


 アントリを誘っては魔法の勉強に余念が無い。今のうちに覚えられるものは覚えておきたい。アントリは見かけとは裏腹に多くの魔法を知っており、その知識も豊富で自由に使える研究室までもっていた。毎日のようにアントリを誘っては、勉強に取り組むティアナなのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ