第14話:見えない防壁(シールド)
1. 恐怖を「演出」に変える
控え室の外では、暗殺者の死体を巡ってパトカーのサイレンが鳴り響いている。
志乃が青ざめた顔で戻ってくるが、新(佐野)はあえて震える演技を捨て、冷徹な表情で彼女に命じた。
「志乃叔母さん、すぐに小金井幹事長に電話しろ。……『命を狙われた。犯人は緒方組か、あるいはその後ろにいる組織だ。今すぐ、警察庁のSPを、それも警備局長直轄の精鋭を私の警護に付けろ』と。これは『要請』じゃない。拒否すれば、あのSDカードのコピーが明日の朝刊に載ると伝えろ」
自分を狙った弾丸すら、彼は即座に 「公的権力を私物化するための手札」 へと変える。それが、一度地獄を見たリアリストのやり方だった。
2. 公的な「鎧」と、私的な「影」
翌日、新の周囲には、警視庁警備部から派遣された屈強なSPたちが配備された。
小金井は「新の口を封じるための監視」も兼ねて精鋭を送ったが、新(佐野)はそれを見抜いた上で、内心で冷笑する。
(……警察の警備という『光』の鎧。そして、あの手紙の主という『影』の守護。皮肉なものだ。かつての私は、これほどまでに守られてはいなかった)
新は、ポケットの中にある「弾かれた弾丸」を指先で弄ぶ。
SPたちの最新装備を持ってしても、昨日のような超常的な現象を説明することはできない。新は改めて、自分を囮にしている「あの男」の、理外の力を思い知る。
3. 緒方組の焦燥
一方、緒方組の幹部会。
「狙撃に失敗した上に、実行犯が現場で『心不全』で死んでいただと?」
幹部たちは激昂していた。九条新という若造一人のために、警察が異例の警備体制を敷き、自分たちの「商品」である人間売買のルートも脅かされ始めている。
「九条新……。あの若造、ただの新人じゃない。あの演説の口ぶり、まるで死んだはずの佐野源助が乗り移ったかのようだ」
緒方組には、さらに背後の「アメリカのマフィア」から、事態を早急に収拾しろという強い圧力がかかり始める。彼らは新を消すための次なる一手――「政治的スキャンダルの捏造」か、あるいは「さらなる物理的な強行突破」の準備を始めた。
4. 孤独な参謀
深夜、SPが廊下で見張る中、新は一人、前世から愛読していたキッシンジャーの著書を読み耽っていた。
「魔法」という、前世の地政学には存在しなかった未知の変数。だが、国家や組織の欲望を操る「ルール」そのものは変わらない。
「お前が魔法で私を守るというなら、私はこの国を、魔法でも壊せないほど強固な『秩序』で縛り上げてやろう」
新は暗闇の中でモニターを見つめる。
そこには、小金井幹事長を通じてもたらされた、次なる選挙戦の対立候補のデータが並んでいた。
それは、かつて前世で自分を裏切り、国民を扇動して「否」と言わせた、あの政治家たちの末裔だった。




