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第15話:暴露の生配信と、無味無臭の死

1. 「最強の被害者」の誕生

狙撃事件から一夜明けたトウキョウ。世間が「九条新、暗殺未遂」のニュースで騒然とする中、新はあえて「事件現場」である駅前広場に再び立っていた。

周囲を警視庁のSPたちが囲む中、新はマイクを握り、力強く語り始める。

「私を殺そうとしたのは、この国の『自立』を恐れる者たちだ。だが、私は屈しない!」

その熱狂的な演説の映像は、新自らが裏で仕掛けたSNSのアルゴリズム操作によって、瞬く間に数百万人の端末へと拡散されていく。死の恐怖すらも政治的エンターテインメントへと昇華させる、新の「亡霊の行進」が始まっていた。

2. 激震のニュース速報

その日の午後。自由民社党本部の一室で、新は小金井幹事長に「緒方組の切り捨て」を迫っていた。

「小金井先生。緒方組の背後にいるアメリカの非公式部隊の件、警察を使って今すぐ表から潰しなさい。さもなくば——」

新が脅迫の言葉を口にしようとしたその時、部屋の大型モニターに映っていたニュース番組が、突如として臨時速報に切り替わった。

『……繰り返しお伝えします。指定暴力団・緒方組の総本部事務所が、先ほど何者かによって壊滅させられました。爆発跡や銃撃戦の痕跡はなく、建物の内部だけが異常な力で破壊されているとのことです——』

「な、なんだと!?」小金井が素っ頓狂な声を上げる。

新は目を細めた。警察のガサ入れではない。あの一発の弾丸を防いだ「見えざる手」による、物理法則を無視した圧倒的な蹂躙が起きたのだ。

3. 大使館前の逃走劇

さらに事態は、新の予測すら超える方向へと加速する。

SNSのタイムラインに、ある若手YouTuberのライブ配信映像が急上昇し始めた。タイトルは『ヤバすぎ!ヤクザの親分がアメリカ大使館に逃げ込んでるwww』。

新が急いでタブレットでその配信を開くと、ブレるスマホのカメラの先に、血相を変えてアメリカ大使館の厳重なゲートにすがりつく初老の男が映っていた。緒方組の組長だ。

『開けろ! 約束が違うだろうが! ワシらはあんたらの指示で人間を集めてやったんだぞ! 見殺しにする気か!!』

組長は錯乱状態に陥り、カメラが回っていることにも気付かず、アメリカの裏組織との「黒い繋がり」を大声で喚き散らしていた。同接視聴者数はすでに数十万人を超え、瞬く間に拡散されていく。

「……バカな。あいつ、公衆の面前で何を……!」

小金井が頭を抱えて崩れ落ちた。これで緒方組とアメリカ、そしてそれに癒着する自由民社党の闇が、完全に「表の世界」に引きずり出されたのだ。

4. 無味無臭の執行

『おいヤバい、なんか組長が……えっ?』

画面越しのYouTuberが声を裏返した。

大使館のゲートを叩き続けていた組長の動きが、突然ピタリと止まった。

銃声は一切鳴っていない。刃物を持った暗殺者が近づいたわけでもない。

ただ、組長の首と四肢が、まるで見えない巨大な手に雑巾のように捻り上げられ――次の瞬間、糸の切れた操り人形のように、大使館の冷たいアスファルトの上に崩れ落ちた。

即死だった。

パニックに陥り、悲鳴を上げて逃げ惑うYouTuberの映像を最後に、配信は途切れた。

5. 最高の「戦争カサス・ベリ」の始まり

「……一体、何者なんだ」

新は、手元にある「暗殺を防いだ弾丸」を弄びながら、あの手紙の主である未知の存在に思いを馳せた。

名前も、顔も、目的すらわからない。

だが確実に言えるのは、その「無味無臭」の圧倒的な暴力が、この国の最大のタブーである『アメリカの影』を、これ以上ない形で全世界に暴露してくれたということだ。

組長がアメリカ大使館で泣き叫び、そして「謎の力」で暗殺された。

世論はもはや「ヤクザの抗争」では納得しない。「アメリカが口封じのために組長を消した」と確信するだろう。日米地位協定への国民の怒りは、30年前とは比べ物にならないほど爆発するはずだ。

「新……どうする、党は終わりだ……」

絶望する小金井を見下ろし、新は獰猛な笑みを浮かべた。

「いいえ、幹事長。ここからが『私の政治ゲーム』の始まりです。……アメリカに宣戦布告する準備をしましょう」

正体不明の魔法が「悪」を穿ち、表の天才がその結果を「国家の熱狂」へと変える。

二つの理外の力が完全に噛み合い、日本中を巻き込む巨大な嵐が今、幕を開けた。

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