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勇者の陰に英雄あり ~手柄をすべて譲った俺は、悪神の加護を手に理不尽な世界を叩き潰す~  作者: 日向ぼっこ
第五章:罪人たちの凱歌

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070.神罰の終焉

 覚醒したカイルの背後に展開された、闇と銀の六枚翼。

そこから放たれる魔圧は、代行者が纏っていた黄金の光を容易く塗り潰していった。

カイルは一歩、空中を蹴る。

その姿はもはや「勇者」という型に収まるものではなく、神の支配を食い破った新しき異形の王のようであった。


「――終わりだ」


 カイルの漆黒の聖剣が、代行者の黄金の障壁を紙細工のように切り裂く。

俺もまた、闇と混ざり合い「黒氷」へと変質した右腕を突き出し、カイルの背後から絶対零度の波動を叩き込んだ。


「が、ぁ……!?

 この、家畜共がぁぁッ!!」


 代行者の無機質だった顔が、激痛と屈辱で歪む。

彼女の身体は俺の冷気で凍りつき、カイルの闇によってその存在の根源から蝕まれていく。


「パリスに伝えておけ。

 地上のことは、地上に生きる僕たちが決める。

 ……あんたたちの時代は、もう終わりだ!!」


 カイルの放った一閃が、代行者の胸にある「神の核」を真っ二つに両断した。

凄まじい絶叫と共に、代行者の肉体が光の粒子となって崩壊を始める。


勝った。

そう確信した瞬間、崩れゆく代行者の瞳が、不気味な紅い光を放った。


「……掃き清められぬなら、道連れにするのみ。

 神の怒りを、その身に刻め」


 代行者は自らの消滅を触媒にし、残された全魔力を爆縮させた。

それは、ソリダリスの街全体を、そしてそこに生きる全ての命を、因果の果てまで消し去るための超高密度の自爆攻撃―― 「神罰の極光」へと変質していく。


「しまっ……!?」


 カイルが手を伸ばすが、光の膨張はあまりに速い。

このままでは、城壁の下で待つレオンや兵たち、そして誰よりも俺を信じて待っているノエルが、光の塵となって消えてしまう。


「……カイル。 あとのことは、頼んだぜ」


 俺は一歩、カイルの前に出た。

右半身に宿る「黒氷」の力を、無理やり全身の魔力回路へと逆流させる。

一度はカイルの闇で溶かした冷気を、自らの意志で、さらに冷たく、さらに強固な「檻」へと再構成する。


「ガルシア!? 何をするつもりだ!」


「……あいつの自爆を、俺の氷の中に閉じ込める。

 ……これしか、みんなを救う方法はねえ」


「やめろ! そんなことをしたら、君自身が……!」


「いいんだよ。……俺は、この街の『王』だからな」


 俺は溢れ出す光の奔流を、全身で抱きしめるようにして受け止めた。

右腕から始まった凍結が、今度は俺の首を、顔を、左半身を、猛烈な勢いで飲み込んでいく。

神の自爆エネルギーを、俺自身の肉体を触媒にした「永久凍土」の中に封印していく。


「ガルシアさぁぁぁぁぁあああああんッ!!!」


 城壁の下から、ノエルの引き裂かれるような悲鳴が聞こえた。

その声を聞きながら、俺は最後に一度だけ、カイルの方を向いて不敵に笑って見せた。


視界が白銀に染まる。

音も、熱も、痛みも消えていく。

 

 爆発の閃光が消えた時、戦場の中央には、天を仰ぎ、右手を掲げたままの姿で固まった、一尊いっそんの美しい氷像だけが残されていた。

神の光は完全に封じられ、街は救われた。

そして、そこにあるのは『物言わぬ』冷え切った『魔王』の抜け殻であった。




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