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勇者の陰に英雄あり ~手柄をすべて譲った俺は、悪神の加護を手に理不尽な世界を叩き潰す~  作者: 日向ぼっこ
第五章:罪人たちの凱歌

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064.天空の支配者

 ソリダリスの空が、鉄の影に覆われた。

プロイン帝国が誇る空中要塞『レヴァイアサン』。

全長数百メートルに及ぶその巨体を中心に、数十隻の魔導戦艦がV字の陣形を組み、ソリダリスを見下ろしている。


「……ありゃあ、笑えねえな。

 空に浮かぶ城そのものじゃねえか」


 城壁に立つレオンが、忌々しそうに空を睨む。

プロイン帝国のやり方は、シトラスのように「正義」を謳いながら裏で細工するような真似ではない。

圧倒的な質量と火力で踏みにじる、軍事国家としての蹂躙だ。


『地上の大罪人たちへ告ぐ。

 我がプロイン帝国は、列強連合の総意として、貴様らの即時降伏を要求する』


 レヴァイアサンから響く拡声魔法の声が、街全体を震わせる。


『三つ数える。

 答えがなければ、この街を地図から消去する。

 一、二……』


「……三、は言わせねえよ!!」


 俺は麻痺した右腕を左手で固定し、城壁の先端に立った。

全身の魔力を循環させ、ソリダリスの街全体を覆う氷の結界を最大出力まで引き上げる。


「――凍れ!!」


 瞬間、空中で『レヴァイアサン』の主砲が閃光を放った。

太陽よりも眩しい魔導熱線が垂直に降り注ぎ、ソリダリスを包む透明な氷の天蓋と激突する。


 凄まじい衝撃。

街が地震のように揺れ、天蓋にヒビが走る。

 

「がっ……、あぁぁぁッ!!」


 直接、脳を焼かれるような衝撃が俺を襲った。

結界へのダメージは、そのまま俺の精神と肉体への負担となる。

右腕から広がる凍傷のような紋様が、首筋まで這い上がってきた。


「ガルシア!

 無理だ、一人で受け止めるには出力がデカすぎる!」


「……黙って見てろ!

 俺がやらなきゃ、この街の民は一瞬で蒸発するんだよ!!!」


 歯を食いしばり、魔力を捻り出す。

空では、艦隊から無数の降下艇が射出されていた。

それは人工勇者のような異形ではない。

プロイン帝国が誇る、魔導重装甲に身を包んだ精鋭『飛翔騎士団』だ。


 彼らは空中で姿勢を制御しながら、氷の天蓋の「割れ目」を目掛けて次々と着弾し、結界を物理的に破壊し始めた。


「ハデな空爆だけでなく、歩兵による地味な攻撃まで合わせてきやがるとは!

 チッ、ちゃんと軍隊してやがる……」


 レオンが指揮刀を抜く。


「ソリダリス防衛隊、全軍戦闘開始!

 結界を直接攻撃している騎士どもを一人残らず叩き落とせ!

 ガルシアをこれ以上削らせるんじゃねえぞ!」


 地上では、街の守備隊とプロインの飛翔騎士たちが激しい白兵戦を開始した。

だが、俺の視線は空を離れない。

レヴァイアサンの二番砲が、すでに充填を終えようとしている。


「……カイル、あと三日だと? 笑わせるな」


 俺の視界が赤く染まる。

鼻から血が滴り、意識が遠のきかけるが、俺は自らの肉体をさらに強く凍らせることで、無理やり神経を繋ぎ止めた。


「一日……

 いや、一時間も持つかよ、こんなもん……!」


 再び、天空から光の柱が降り注ぐ。

俺は絶叫と共に、凍りついた右腕を天へ掲げた。



「面白かった!」

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