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勇者の陰に英雄あり ~手柄をすべて譲った俺は、悪神の加護を手に理不尽な世界を叩き潰す~  作者: 日向ぼっこ
第五章:罪人たちの凱歌

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060.王都ガイア、陥落?

 正面の巨大な城門を固めるのは、シトラス王国が誇る近衛騎士団、総勢三千。

彼らは一歩も引かぬ構えで盾を並べ、背後からは数百の魔導師たちが、俺とカイルに向けて殺意の籠もった呪文を紡いでいる。


「これ以上、我が聖都を汚させはせん!

 逆賊どもに神罰を!!」


 号令と共に、空を覆い尽くすほどの魔法の雨が降り注ぐ。

だが、俺は馬を下りると、静かに右手を前方へ突き出した。


「――お前たちの『熱』は、もう必要ない」


 俺の足元から、大気を凍らせる絶対零度の波動が爆発的に広がった。

降り注ぐ火炎も、雷撃も、俺たちのもとに届く前にことごとく凍りつき、美しいが不気味な氷の結晶となって地面へ砕け散る。

それどころか、盾を構えていた近衛騎士たちの足元までが瞬時に凍りつき、彼らはその場に縫い付けられた。


「なっ…… 魔導を凍らせただと!?」


「道は俺が作る。 カイル、行け!」


「ああ、任せてくれ!」


 カイルが俺の作った氷の道を、弾丸のような速さで駆け抜ける。

左手のあざから溢れ出す闇が、聖剣を巨大な黒の刃へと変貌させていた。

カイルが剣を一振りするたび、王国が誇る幾重もの防護結界が、まるで薄氷のように砕け散る。


 近衛騎士団の防衛線は、わずか数分で崩壊した。

俺たちは文字通り「一騎当千」の勢いで城門を粉砕し、王宮へと踏み込んだ。


 ◇◇◇


 玉座の間。

静寂に包まれたその場所に、俺とカイルの足音だけが不気味に響く。

玉座に深く腰掛けていたルイン王は、俺たちの姿を見ても逃げようともせず、ただ口の端を歪めて笑っていた。


「……来たか。 失敗作と、泥から生まれた魔王よ」


「王よ。

 今すぐ、あの忌々しい人工勇者の実験を止めろ!

 これ以上、民を犠牲にすることは僕が許さない!!」


 カイルが剣を突きつける。

ルイン王は立ち上がり、ゆっくりと自らの法衣を脱ぎ捨てた。

その身体を見て、俺は思わず息を呑んだ。


 王の胸元には、人工勇者から引き剥がされた「魔導の翼」の基部が、肉を割いて直接埋め込まれていた。

血管は紫色の魔力で脈打ち、肌は不気味な金属光沢を帯びている。


「カイルよ。

 お前が『意志』などという不要なものを持ち、正義を捨てた時、この国には新たな『真の象徴』が必要となった。

 ……そう、他ならぬ、私自身という象徴がな!」


 王の背中から、八枚もの歪な魔導の翼が突き出した。

その瞬間、玉座の間全体が、吐き気を催すほどの濃密な「偽りの聖魔力」に包まれる。


「私は神になるのだ!

 この大陸を統べる、不滅の光に!!」


 ルイン王の絶叫と共に、王の肉体が膨れ上がり、人の形を失っていく。

白銀の甲冑が肉と同化し、複数の魔導剣が腕から直接生える。

そこにいたのは、かつての王ではなく、権力への執着と禁忌の魔導が産み落とした「醜悪な怪物」だった。


「……悲しいね、王よ。

 貴方が一番、この国の『光』に毒されていたんだ」


 カイルが静かに、闇を纏った剣を構える。

俺もまた、右手に絶対零度の氷刃を形成した。


「ガルシア。

 これで、この国の悪夢を終わらせよう」


「ああ。

 ……とびきり寒い、永い眠りを与えてやるぜ」


 王都を揺るがす咆哮と共に、化け物と化したルイン王が襲いかかる。

シトラス王国の終わりを告げるであろう、最後の戦いが始まった。

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