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勇者の陰に英雄あり ~手柄をすべて譲った俺は、悪神の加護を手に理不尽な世界を叩き潰す~  作者: 日向ぼっこ
第五章:罪人たちの凱歌

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059.偽りの光、真実の闇

王都ガイアを目前に控えた平原で、そいつらは待っていた。


 白銀の甲冑を纏い、手にはカイルの聖剣を模した巨大な魔導剣。

そして背中には、無理やり魔力を噴出させて形成された、眩いばかりに光り輝く四枚の「魔導の翼」が展開されている。

それは、シトラス王国が長年、秘密裏に研究していた飛行魔導技術と、カイルから採取した聖魔力の残滓を掛け合わせた、禁忌の兵器だった。


「……あれが、レオンの言っていた人工勇者か。

 悪趣味な飾り羽根を背負わされて」


 俺の声に応えるように、数体の「カイル」が同時に翼を羽ばたかせ、宙へと浮き上がった。

その翼から漏れ出す過剰な粒子が、周囲の空気をバチバチと焼いている。


「止まれ、逆賊ガルシア。 ならびに、不良品カイル」


 人形の一体が、カイルと全く同じ声で告げた。

意志の通わぬ、機械的な反響音。


「不良品……?

 冗談じゃない!

 形だけを飾り立て、名もなき若者たちの命を燃料にしているその人形が、僕の代わりだというのか!!!」


 カイルが馬を蹴り、前方へ飛び出した。

迎え撃つのは、三体の人工勇者。

彼らは魔導の翼で高速飛行し、カイルの死角から聖魔力の光弾を雨のように降らせてくる。


「消えろ!!」


 カイルが地上を駆け、漆黒の聖剣で光弾を切り払う。

だが、一際ひときわ巨大な翼を持つ個体が上空から急降下し、その魔導剣をカイルへ叩きつけた。


 激突。

人工勇者の肉体は、限界を超えた魔力を流し込まれた影響で土気色に変色し、血管が黒く浮き出ている。

神々しい翼とは裏腹に、その中身は崩壊寸前の「肉塊」だった。


「自爆する気か!?  退け、カイル!」


 俺が叫ぶのと同時に、一体の人工勇者が翼を真っ赤に発光させ、光の爆散と共に弾け飛んだ。

周囲の地面がえぐれ、凄まじい衝撃波がカイルを襲う。


「はぁっ、はぁ……っ!」


 爆煙の中から現れたカイルは、聖剣を盾にして辛うじて直撃を免れていた。

だが、残る人形たちは仲間の死に一切の動揺を見せず、再び空高く舞い上がって照準を合わせる。


「理解不能、なぜ抵抗する。

 王には、民を従わせるための『輝く象徴』があれば足りる。

 中身など不要だ」


「……黙れ!!

 そんな偽りの光で、この国が救えると思っているのか!!!」


 カイルの左手から、赤黒い光が噴き出した。

ロキが言った『大罪人の烙印』が、カイルの激昂に呼応して真の姿を見せようとしていた。


「象徴など、僕が全てを切り裂いてやる!」


 カイルが吼えた(ほえた)

左手の紋様が腕全体を浸食し、聖剣を濃密な「闇」が包み込む。

すると、カイルの背後に巨大な漆黒の影が揺らめいた。

それは人工勇者のような機械的な翼ではなく、全てを拒絶し、全てを断ち切るための破壊の意志。


「――『反逆の審判アポカリプス』」


 カイルが一閃。

漆黒の刃が空間そのものを薙ぎ払うと、空を舞っていた人工勇者たちは、その魔導の翼ごと、まるで陽炎のように掻き消えた。

爆発することさえ許されず、存在そのものを闇に削り取られたのだ。


 沈黙が戻った平原で、カイルは荒い息を吐きながら立ち尽くしていた。

彼の左手からは、まだ不気味な黒い霧が立ち昇っている。


「……行こう、ガルシア。

 あの城の中に、まだ苦しんでいる人たちがいる。

 ……終わらせなきゃいけないんだ、全部」


 カイルの瞳は、もう迷う者のそれではない。

俺たちは、高くそびえる王都ガイアの城門を見据えた。

 

 そこには、俺たちを「大罪人」として迎え撃つべく、シトラス王国の全戦力が壁のように立ちはだかっていた。



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