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勇者の陰に英雄あり ~手柄をすべて譲った俺は、悪神の加護を手に理不尽な世界を叩き潰す~  作者: 日向ぼっこ
第三章:理想郷の胎動と魔王の戴冠

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040.ソリダリス建国

 一夜にして、クロス共和国の栄華は氷の下へと沈んだ。

地下から溢れ出した漆黒の氷が、地上を走る魔導鉄道を凍らせ、議会の私兵たちが立てこもる拠点を次々と粉砕していく。

俺は先頭に立ち、ただ無感情に、目の前の「不快」を排除し続けた。


 議事堂の最上階。

俺は逃げ惑う『七賢議会』のメンバーたちを追い詰めしていった。

そして、そこに『七賢議会』の最後の一人であるレオンが、平然とした様子で現れた。


「おやおや、予想よりもずっと早い『清算』だったね、ガルシア君。

 いや、今は『陛下』と呼ぶべきかな?」


 レオンは皮肉げに微笑み、俺の前に立った。

俺は黒氷の刃を彼の喉元に突きつける。


「レオン。

 お前には今までの借りと恩がある。

 ……だが、俺はもう誰の『犬』にもならねえ。

 俺の作る国で、俺たちのためにその知恵を貸すか?

 それとも、ここで他の連中と同じように氷の塵になるか。 選べ」


 レオンはしばし沈黙し、それから面白そうに肩を揺らした。


「……勇者を拒絶し、議会を屠り、自ら王座を奪う。

 これほど魅力的な投資先を、放り出せるはずがない。

 乗りかかった船だ。

 君が築く新しい世界の結末まで、特等席で見させてもらうよ」


 レオンが優雅に一礼する。

こうして、俺はクロスの実務を司る強力な知略を手に入れた。


 ◇◇◇


 翌朝。

昇り始めた太陽が、白銀に輝く摩天楼を照らし出す。

俺は議事堂のバルコニーに立ち、地上の広場を埋め尽くした数万の「地下の住人」と、新たに降伏した民衆を見下ろした。

俺の隣には、ノエルが誇らしげに立っている。


「今日、クロス共和国は消滅した!」


 俺の声が、魔力によって街の隅々にまで響き渡る。


「ここはもはや、利権と計算の魔窟ではない。

 居場所を失った者、虐げられた者が、互いに肩を寄せ合い、共に生きる場所だ。

 ……この国の名は『ソリダリス』。

 俺たちが、俺たちのために作る最後の砦だ!」


 広場から、割れんばかりの歓声が沸き起こる。

人々は俺を称え、俺を「王」と呼ぶ。

それはかつて、シトラスの王宮でカイルに向けられていたものよりも、ずっと必死で、重たい叫びだった。


 ◇◇◇


 一方、クロス共和国の国境付近。

勇者カイル率いるシトラス王国の討伐軍は、国境を越える直前の宿営地で夜を明かしていた。

 この場所からは、まだクロスの摩天楼が放つ輝きに変化は見えない。

数万の軍勢が発する熱気と、明朝には親友との決戦に臨まねばならないという重苦しい沈黙が、カイルの周囲を支配していた。


 カイルは自室の窓から、暗雲の垂れ込める空を見つめていた。

左手の「太陽のあざ」が、不吉なほどに冷たく、そして激しく脈動している。まるで遠くで何かが決定的に壊れてしまったことを知らせるかのように。


(……ガルシア、君は今、何を思っているんだ)


 カイルは聖剣の柄を握りしめ、一度だけ目を閉じた。


 翌朝。

出撃の準備を進めるカイルのもとへ、血相を変えた伝言係の兵士が飛び込んできた。


「勇者様!

 クロス共和国から……

 いえ、大陸全土に向けて、とんでもない魔導通信が放たれました!」


 差し出された通信記録の羊皮紙を、カイルはひったくるように受け取った。

そこに記されていたのは、もはや一介の「魔人」の独り言ではない。

既存の世界秩序そのものへの、明確な決別と宣戦布告だった。


『――この世界は、腐りきっている』


 通信から再生されるガルシアの声は、氷のように冷たく、地底から響く地鳴りのようだった。


『奪う者、欺く者、そして正義の名の下に弱者を踏みにじる者。

 そんな連中が支配する世界に、俺たちの居場所はない。

 ゆえに俺は、虐げられた弱者のための国を作った。

 ……この国の名は「ソリダリス」。

 我らの歩みを邪魔する者は、そのすべてを壊す』


 カイルの指が、羊皮紙を握りつぶした。

 

「……建国だと?

 あのガルシアが、国を作ったというのか……!」


 周囲にいた将軍たちの顔に、戦慄が走る。

それは、友が犯罪者になったという知らせよりも、ずっと残酷な事実を突きつけていた。

ガルシアはもはや「救うべき迷い人」ではない。

世界の法を否定し、真っ向から対立する王「魔王」になったのだ。


「勇者様、もはや猶予はありません!

 奴は共和国の議会を沈め、自ら玉座に座ったとのこと。

 これは明らかな侵略であり、人類への反逆です!」


 カイルは何も答えなかった。

ただ、聖剣の刃に映る自分の顔を見つめた。

その瞳には、もはや親友を呼び戻せるという希望は残っていない。


「……分かっている。 進軍せよ」


 カイルの声には、悲しみを超えた「断絶」の響きがあった。

彼は自分を一個の「断罪の装置」へと無理やり作り変え、馬に跨った。


 地底で「王」へと戴冠したガルシア。

 地上で「処刑人」としての覚醒を強いられたカイル。


 二人の親友を分かつ物語は、ここに「ソリダリス建国」という、大陸全土を巻き込む動乱の幕開けへと向かい始めた。


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