13話 『絶体絶命大ピンチ!?』
「凄い! レベルが4も上がってる! ステータスも……これは固定で上がっているのかな?」
「んー多分そうだと思う。雫のステータスも見た感じ同じ上がり方しているし、この振り分けポイントってやつで他の人と違いを出すんじゃないかな? ステータスに振れるみたいだし」
私と焔ちゃんのステータスは正直言って軒並み同じであり、違いを言えば素質の面で数字の違いがあるだけ。
後はお互いにレベルが同じだから、振り分けポイントというのが20と表示されている。
これは焔ちゃんの言う通り、というか、目の前で焔ちゃんがSTRとAGIに振っているし、ポイントの数だけ振れるで間違いないと思う。
「雫はまだ振らなくて良いの?」
「うーん。私はどれを伸ばすか迷ってるからまだ保留かな。今の段階でも充分戦えるしさ」
「あーってことは私も雫とのパーティーを意識して振れば良かったかも……ごめんね。自分でやりたいようにやっちゃった」
「ううん。大丈夫! 私は武器的にも援護をメインにするつもりだし、前線を張ってくれる焔ちゃんは自分の好きなように伸ばしたら良いと思うよ!」
そもそもの話、このステータスの振り分けは基本的に素質と照らし合わせて伸ばしていった方が良いと思う。
素質の%が現在のステータスを参照して増えているわけだから、手っ取り早く強くなるにはその方が良い。
下手に自分の苦手分野を補おうとしても、器用貧乏になったりするだろうし……。
ま、だからこそ、私も結局のところ素質に合わせて振ると思う。
「でも魔法防御力特化って絶対弱いよね……」
素質が決まっている以上仕方のないことだけど、防御特化にするにしても魔法防御特化は絶対に使い物にならない。
ピンポイントで対策は出来るかもしれないけど、それじゃあ困るのだ。
そうなると残りの二つの素質を伸ばすべきか、防御を上げていくかになる。
「雫の素質は確かに魔法防御力に寄ってるけどさ、逆に考えればそこに振らなくてもある程度は強くなるってことじゃん? だったらさ、銃に魔法を込めて将来的には使うわけだし、威力を上げるのにINTを上げたら良いんじゃない? もしくは動き回るならAGIを上げるとかさ!」
「そっか、銃だからSTRだと思ってたけど、魔法を込めた弾を使うとINT参照の威力になるのか。だったら後々は確かにINT上げはありかも! ……でもやっぱりまだ迷うから、溜めとくことにする。また相談するかもしれないからその時はよろしくね!」
「任せといて! って言いたいところだけど、自分が生きるために必要なことだし、あんまり私の言葉を真に受けないようにね」
苦笑しながら言う焔ちゃんに頷く形で返事をしてから、私たちはステータス画面を閉じて今日は眠る事にした。
ドロップ品に関してもそれなりに溜まっていたが、時間が遅くなってしまったので、明日の戦いが終わってからにしようと決めたから問題はない。
でも、その次の日の戦いで私は、いや、私たちはモンスター達の本当の恐怖を味わう事になるのだが、今はまだ知る由もなかった。
――その日、私たちは時間を忘れて戦ってしまっていた。
焔ちゃんがステータスにポイントを振ったお陰で、動きが昨日とは違ったこともあって、私の援護がなくても簡単に戦えるようになってしまったのだ。
勿論、複数のモンスターが相手の場合だったら援護はしていたが、バトルウルフなんかの1個体モンスターとの戦いだと、的が小さい上に動きが速すぎて今の私だとどうにも狙いが定まらないから、焔ちゃんが一人で倒してしまっている。
けど、こんなに簡単に戦えてしまったこともあって、私たちは今まで行こうとも思っていなかった森の方へと足を踏み入れてしまったのだ。
間違った行動だとは思わないし、レベル的にも戦えはするのだが、平原と森の違いは地形と、なによりもモンスター達が殆ど群れで行動している事だった。
それも、他のモンスターと群れで行動しているのだ。
「雫! そのモンスターには火の銃弾を使って!」
「了解! 任せて!」
一番最初に私たちが出会ったのは所謂動く木であり、表面が固い事もあって焔ちゃんの短剣じゃどうしても対応に時間が掛かってしまう。
そこで私が使ったのが火の魔法が篭っている銃弾。弾自体も木を貫通し、尚且つ弱点でもある炎が燃やしてくれたのだ。
炎自体も森なだけあって燃え広がると思っていたけど、そこはゲーム要素が強いのか、そのモンスター以外は燃えずに、モンスターが消えたら火も消えてしまった。
どうやら火が残っている間は他のモンスターにも影響はあるみたいだけど、モンスターでもなんでもない木や草には影響はないようだった。
そして、木のモンスターを倒した後に、一息つく間もなくやってきたのが、緑色の小人のようなモンスターと、豚のような顔と巨大な体を持ったモンスター。
見た目から考えても、ゴブリンとオークで間違いないと思う。
けれど、この二体のモンスターの群れとこうして出会ってしまったことによって、私たちは最大のピンチに陥ってしまう。
それも、またも私が動けないばっかりに。
「うぇ。この感触はホント、最悪なんだけど……」
「焔ちゃん! 上から何か来る!」
元々最初に私たちが出会ったというより、襲われたのはゴブリンの群れだった。
嫌悪感を抱く見た目と、焔ちゃんが戦ってみた感じの肉を貫く感触、ゴブリンの姑息な戦い方。
そのどれもが人間のようであり、私も焔ちゃんも一刻も早くその場から逃げる為に戦っていた。
人間を殺しているような感覚に陥り、足が竦んでも、それでも襲ってくるゴブリン。
反撃する他なく、急所を的確に撃ち抜き、なんとか迎撃出来ているが、逃げれると思ったのが甘かった。
けたたましい叫びをゴブリンが放ったことで、上から降ってくるように現れたのがオークの群れだったのだ。
挟み撃ちするかのように、前にオーク、後ろにはゴブリンが私たちを囲んでおり、まさに絶体絶命の状況。
そんな中、一番最初に標的にされたのは――私だった。
「いやっ! やめて!」
焔ちゃんと違って動きが遅い私が狙われたのは当然であり、オークによって腕を掴まれて持ち上げられている私は銃を撃つことは出来ず、ただジタバタと暴れることしか出来ない。
焔ちゃんが私を助けようにもゴブリンが邪魔をしているし、オークに顔を近づけられ、荒くなった息を吹きかけられながら舐められている私はその気持ち悪さから失神する寸前ーー
「ーー雫になにしてくれてんの! その気持ち悪い手を離しなさい!」
私は突如として地面に落とされた。
逆さまに落ちる私の目に映ったのは、ゴブリンを殺し、短剣を片手にオークへと突っ込んでいる焔ちゃんの姿。
完全に怒りで我を忘れているのか、他のオークが影から棍棒を振り下ろしているのに気付いていなかったのだ。
「っ!」
「いやあぁぁぁ! 焔ちゃん! 焔ちゃん!」
狙い澄まされた一撃によって頭を殴られた焔ちゃんは地面に叩きつけられ、痺れたように少し痙攣した後に動かなくなった。
殴られた位置からは血が大量に噴出しており、意識もない。
それはつまり死んでいる。という風に考えてしまうのも無理はなかった。
「起きて! 嫌だよ! 死なないで!」
喉が張り裂けんばかりに森中に響く私の声を聴いても、ゴブリンとオークはニヤニヤと見てくるばかりであり、絶望的な状況は何一つ変わらない。
この場所じゃ助けも来ないだろうし、ゴブリンは焔ちゃんを踏みつけて遊んでいる。
「ご、ごめんね。雫……どうか生き延びて」
「焔ちゃん! 生きてるの!?」
踏みつけられたことで意識が戻ったのか、私の叫びで戻ったのかは分からない。
ただ、意識が戻ったとしても、回復アイテムを使える余裕はないみたいだし、その場から動く事も出来なさそう。
でも、生きているのならまだ助けられる。
私がどんなことをしてもこの状況を切り抜ければ良いだけだ。
「――焔ちゃん、待っててね。今から絶対に助けるから!」
覚悟を胸に、逃走の文字など心から消して私は銃を構える。
もうーー自分の事は厭わない。




