12話 『日々の積み重ね』
現実世界と変わらず朝日は沈んでいき、夜はどんどん更けていく。
街道の明かりが点灯する頃には私の視界も歪んできていた。
肉体的な疲れと、精神的な疲れ。
街の外に居た時には感じなかったものが安全で安心な空間に入っただけで襲ってきている。
こうなってしまえばもう何もする気は起きない。
少しだけ、少しだけ仮眠するとしよう。
「ちょっと焔ちゃん! 起きて! お風呂とご飯食べてから寝るよ!」
「うー、眠いよぉ。でも、ご飯! ご飯は食べる!」
ほんの数十分ほどの間眠るつもりが、気付けば数時間経っており、ハッと目覚めてはすぐに焔ちゃんへと声を掛けた。
そして、何度か身体を揺らしたりすることで起きた焔ちゃんは、目を擦り、眠そうにはしている。
けれど、食べることが好きなのもあってすぐに目が覚め、私の手を引いて颯爽と動き出した。
「ふぅ。ご飯美味しかったぁ」
「んね! なんていうか日本のレストランとかと似たような味だったし、この温泉もそうだけど、この辺はゲーム制作者が意図してやってくれてるのかな?」
「うーん。どうだろうね。温泉はそうかもしれないけど、ご飯に関しては味なんて分からないだろうし、案外適当だったのかも」
起きた時間が遅かったものの、なんとかご飯に間に合い、ご満悦な様子で焔ちゃんは笑いながら言っているけど、これが適当だとしたら相当ラッキーと言える。
なにせご飯が不味いとか、食材が私たちの体に適さないのであれば生きていくのは難しいし、なにより活力が得られなくなる。
まぁ、温泉内を見渡せば分かるが、私たちの様にご飯やらを楽しんでいるのは少ないみたいだけど……。
「あっ、焔ちゃん、見てあそこに居るのってさ!」
「んー? あー昼間に見た三人組の女の子達か」
周囲には元気があり、モンスターを倒したのであろう人達の会話や、笑いながら逃げた話をしている人、俯き、今日一日動けなかったであろう人が居る。
その中で私の目を引いたのはやっぱり三人の女の子だった。
固まって行動しているものの、表情は暗いし、きっと何も出来なかったのだろう。
「雫が気になるなら話しかけてこよっか? 友達になれるかもしれないし」
「ううん。まだやめとくよ。私じゃ何もしてあげられないだろうしね」
「そっか。まぁあの子達もこのままじゃ駄目って理解してるだろうし、きっと大丈夫だよ」
焔ちゃんの言葉に頷き、少しの間女の子達のことを見つめた後に私たちは温泉を出て部屋へと戻った。
「それにしても温泉で良かったね。結構情報も手に入ったし!」
「私的には最初はなんだか恥ずかしかったから嫌だったけどね」
「えー! あ、まぁ雫は子供体型だからねぇ」
「ぐぬぬ。焔ちゃんは良いよね! スタイル良いし、胸だって大きいしさ! ふん!」
ニヤニヤと私の体を見て笑う焔ちゃんに対して、頬を膨らませて怒り、そっぽを向きながら私は言い返す。
子供っぽいと自覚しているからこその反応。
まぁ焔ちゃんの場合冗談で言ってるのが分かるからあんまり嫌な気分にはならないけど……。
「冗談だって! そんなに拗ねないでよ! それに私は雫のその小さい体も可愛いと思ってるよ!」
「べ、別に焔ちゃんに可愛いと思われてもそんなに嬉しくないし!」
一言可愛いと言われるだけで嬉しくなってしまい、機嫌が直るのは我ながらもの凄くチョロいと思う。
まぁそもそも褒められてるのかは分からないけど、他でもない焔ちゃんから言われたら嬉しいものは嬉しいし、このまま拗ね続けて険悪になるのも嫌だから機嫌を直したっていうのはあるけど。
「よし、それじゃ雫の機嫌も直ったし、簡単に情報を整理してから寝よっか」
「むぅ。しょうがないなぁ」
温泉で聞いた話は幾つかあったものの、中でも気になったのは私たちが、というより焔ちゃんが文字通り死闘を繰り広げた狼のようなモンスターについてだった。
「話を聞いてから考えれば考える程に良く私たちだけで勝てたなぁって思うよ」
「それは焔ちゃんが身体を張ったからだよ」
「いやいや、雫も頑張ってくれてたし、私だけじゃないよ」
バトルウルフと呼ばれている狼のモンスターは、どうやら単独行動を好み、経験値もそれなりに美味しいらしい。
とはいえ、レベルの低いプレイヤーのパーティーだと死人が出る場合もあるらしく、やっぱり今回勝てたのは相当運が良かったのだと思う。
それに、焔ちゃんは私が頑張ったと言ってくれているが、正直私は怖くて動けなかったし、弾も掠った程度で何もしていないに等しいのだから、焔ちゃんが一人で倒したようなものだ。
「どうしたの? 眠くなっちゃった?」
自分が如何に無力なのかを考えれば考える程に気持ちが沈んでいき、やがて俯いてしまった私へと、顔を覗き込むようにして訊ねてくる。
頭を撫で、まるで慰めるようにしながら。
「ううん。ちょっと考え事してただけ! 心配してくれてありがとね。明日は頑張るから!」
「そっか。その意気込みは良いけど空回りしないようにね」
「大丈夫! 任せといて!」
それからこの日は二人で一緒に眠りにつき、起きたのがだいぶ日が昇った後ということもあったけれど、お金を稼ぐために私たちはモンスターと倒しに向かった。
そうして、同じ宿屋の同じ部屋に予約を取り、数日、いや一週間近くモンスターと戦ったが、少なくとも大怪我することもなく日々は過ぎていった。
スライムやバトルウルフ、他にも巨大な虫や、イノシシのようなモンスターなど、なんとか倒すことが出来たモンスターも居て、お金や経験値、ドロップ品はそれなりに潤っている。
また、モンスターに関する恐怖も徐々に薄れていき、射撃の腕や短剣の扱いもそれなりに上達したが、未だに動物のようなモンスターだけは生々しくて苦手だった。
とはいえ、それでもなんとか倒せるのだからこの世界にも順応してきたといってもいいはずだ。
「そういえばステータスを全然見てなかったけどどうなってるのか気にならない?」
「あー、そうだね。ドロップ品を売る前に一回見てみよっか」
「よしきた! それじゃ私から!」
当然、モンスターを倒してきたのだからレベルは上がっている。
なんだかんだ気になっていたステータスに関しても、今こうして見てみれば始めた時とは見違えるように変わっていた。
ステータス等に関しては、閑話でやることに決めました!
細かい説明等もそこで雑談風に説明するのでお楽しみに!




