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開戦と試作機

「クロトリ部隊哨戒機より定時連絡、敵影確認できず」

「引き続き索敵を継続、なお無線機は試験運用している物なのでつながらなくなった場合は直ちに帰還することを再確認」

「了解」


 信濃はグンマ―を出港して海賊艦隊無力化のために太平洋を航行中だ。三笠は信濃の後方100kmでついてきている。また、転移した戦車の中にあった無線機を拝借して信濃と三笠と潜水艦、そして哨戒担当のクロトリ部隊の一部に渡してちゃんと使えるかどうかのテストも兼ねている。一応ちゃんとロクリンさんに話して海賊艦隊に無線機がないことは確認済みなので盗聴される心配はない。


「三笠からの情報ではもう相手のテリトリーには侵入しているのでいつ遭遇してもおかしくはない状況ですね」


 レーダー、電探、クロトリの哨戒など使える索敵機能はすべて使って索敵を行っているが、これと言って今のところ成果はない。クロトリはレーダーの範囲内でステルス機がいる可能性を消すためにレーダーの範囲内を紹介している。


 皆が少し緊張している中、俺は不謹慎ながら少しワクワクしている。なぜならこれが信濃初の艦隊行動だからだ。転移前では艦隊行動をする予定だったイベント海域で転移に巻き込まれてしまった。改装前の信濃では何回かやったけど。改装後信濃では初の艦隊行動、胸が高まる!!


「レーダーに反応」


 梵天丸さんからの報告で身を引き締める。話を聞く限りこの海域に他の船が航海していたという情報はない。グンマ―は小さい島がいくつもあるタイプだが、大型船を作れるほど資材に余裕がないので行けても沖で漁をする程度なのでここで出てくるのは海賊艦隊以外ありえない。つまり先制攻撃までセットでぶちこめる。


「第五戦速まで増速、三笠に敵艦の座標を送り先制攻撃を要請、目標はそちらに任せる」

「了解しました」

「主砲用意!目標前方敵艦隊」

「オッケー、主砲1番から3番斉射用意、目標前方敵艦隊」


 まるで指のようにしなやかに砲身がそれぞれ動いて狙いを定める。


『本当にこっちが先制でいいのか?』

「ええ、話し合いはとっくの昔に決裂したのでしょう?」

『……ああ、奴らは帰れないのならばやりたいように生きると』

「ならもういいんです。どのような生き方であれ責任はつきものですから、取ってもらうだけだ」

『……君は随分悟っている生き方をしているな』

「そう学びましたから」

『そうか、エーリッヒ照準合わせ目標敵艦隊!曲射砲弾発射!!』


 背後から離れいても聞こえる轟音が耳を揺らした数秒後、光の帯がシャワーのように前方に降り注がれる。


 エーリッヒの砲身に予め彫りを打ち込み上空で意図的に空中分解を引き起こしバラバラになった破片を降り注いで攻撃する、広範囲攻撃だ。

多分向こうのゲームでも出来なかった砲弾そのものの改造、新しい砲弾を作るのではなく既存の砲弾を改造して性質を変える行為。俺達では考えつかなかった、せめてがこの地で手に入れた装備を信濃に組み込むことは考えていたが、ロボットそのものを改造しようとは考えなかった。発想がすごい


「っとこちらも撃ち方はじめ」

「全門斉射!!あ、ついでに魚雷も発射」

『アイアイさー』


 三笠の砲撃に遅れないように追いかけるように信濃も攻撃を開始する。主砲による一斉射、魚雷による雷撃で敵艦隊に火柱と水柱が立つ。相手方の反撃は三笠は有効射程圏外、他は潜水艦と信濃で潜水艦は爆雷、なので魚雷と砲撃を信濃が一身に受けることになった。

本当はこんな豆鉄砲効かぬわぁ!!とか言いたい気持ちがあるが、海賊としてもゲームプレイヤー砲弾一発一発、魚雷の一本一本が装甲を貫通してくる。


「第三装甲まで貫通!火災発生、消火班急いで!!」

「弾薬庫には火を近づけさせるな!」


 体を揺らす爆発と悲鳴のような報告が上がり続ける。表面上の火は装甲に張り巡らされている魔水が消化してくれるが、装甲を貫通してなんないで爆発したものは消火システムか自力で消化するしかない。戦闘班以外は消化活動に勤しんでくれるが如何せん被弾数が多すぎて全く追いついていない。

今のところは人的被害も火災個所の拡大はないが、このままでは誘爆が起きてしまう可能性がある。


「火薬庫に人員を集中」


 信濃の火薬庫は空間歪曲魔法によって普通よりも多くの弾薬を貯蔵している。もしここが爆発すれば信濃は真っ二つに折れてしまう。


「機関室に浸水確認」

「エンジンに異常ないわ。排水システム順調に機能中」

「艦長、現在敵艦隊の攻撃約95%がこちらに向いております」


 ヘイトは十分か。それにこれ以上攻撃を受けるのは不安だ。今までの敵がゴ〇ラもどきと蛇、ただの攻撃が装甲を貫通することはなかったので油断していた。そうだ。どれだけエイム力があるか、舵取り、どれだけ被弾を最小限までに減らせるか。あそこはそういう世界だった。忘れていた。

とはいえ、今さら作戦変更は行えない。


「……報告通りだな」

「はい、攻撃のほとんどが信濃の中心部分、少し照準がずれても必ず当たる個所を狙って撃っています。三笠の報告通りです」


 この世界は進んでいてリギースにあった蒸気船レベルの造船技術しかないので、当然ながら弾薬の製造技術もない。信濃の場合は全長の長さに加えて空間歪曲魔法で実際の4倍近い面積が確保されている。拡張された空間には居住スペースに植物の栽培スペースがあり普通の船のより補給をせずに長期航海を可能にしている。その中には信濃で使用する砲弾に魚雷等を生産する弾薬工場もあるので資材がある限り信濃の実弾はなくならない。ただ、普通の船はあらかじめ貯蓄されている分の弾薬しかないのでバカスカ撃っているとすぐに補給が必要になる。数が無くなれば外す事への恐怖が産まれる。


 敵が絶対に当たるような攻撃を続けているのはこれが原因だ。


三笠の分は元々列車砲が安置されていた場所に砲弾があり、その他は沈んだ他の船からサルベージして使用していたのでまだ余裕がある。だが、向こうは船を沈めはしたが、その後の船から物資を奪うという致命的な行為をしなかったから今こうして苦しんでいる。


「よし、潜水艦達に通達『地獄にホットラインなし』」

「了解しました『こちら信濃、地獄にホットラインなし、繰り返す地獄にホットラインなし、作戦フェイズ2』」

「作戦フェーズ2移行、潜水艦隊前進」

「潜水艦隊5隻前進、雷撃開始」


 フェーズ2魚雷の有効射程圏内まで信濃がヘイトを引き付けて有効射程圏内になった瞬間潜水していた潜水艦達が浮上して魚雷の物量で一気に敵の艦を減らしくていく。船を動かして無くなるのは弾薬以外にも燃料がある。船速を上げればその分速度が出るが、燃料の消費が激しい。長い距離を航行するならゆっくり移動した方が消費は少なくて済む。

つまり、敵はじり貧ということだ。

信濃の爆雷迎撃範囲内から出ないようにしつつ、魚雷で各個撃破していく。


「ホプキンズ撃沈」

「次!火力をフレッチャーに集中」


 いかにプレイヤーの改造船だったとしても魚雷による暴力は砲弾の被害の比ではない。砲弾は装甲貫通と被弾による火災が主な被害だが魚雷は喫水下、砲弾の被害に加えて水による浸水もセット。浸水すると水が荷物になって機動性が落ちる。浸水個所を塞ぐための労力もプラスされる分砲弾よりも厄介度が高い。


 船体がでかい戦艦ならまだ何とかなるが船体の小さい駆逐艦だと一発一発が致命傷になりえる。なので火力を優先する目標は駆逐艦だ。いくら機動力の高い駆逐艦であってもトビウオのように飛べるわけではないので回避不可の十字攻撃で一隻ずつ確実に沈める。


「フレッチャー、アリゾナ撃沈、残り3隻」

「よし、付属品を試す、試作砲用意」

「了解、第三格納庫展開」


 第三格納庫は信濃の艦種付近にある倉庫で外部から直接物を出し入れする際に使用する。以前、この世界に転移した際に最初に沈めた海賊船から回収した物品を入れた所だったりする。そんな倉庫も今では一武装を格納している。先日爆発した蛇型ロボットの頭部を修理し信濃から発射できる砲台に改造した。この武装は信濃とは独立した武装なのでチャージさえ済ましておけば、信濃が行動不能になったとしても撃てるし、最悪取り外して別の船につけることも出来る。そして試作砲の発射準備中でも他の武装も問題なく使用できる。


「砲身固定トリガーセット」


 するすると降りてくる発射用トリガー、威力は信濃の直列砲と遜色ないことから直列砲と同じ官庁である俺が撃つことになっている。ちなみにこのトリガー直列砲の時に撃つのと全く同じ使いまわし品だったりする。トリガーの横に新たに切り替え用のダイヤルが増設されたが、信濃も改造に次ぐ改造でゲテモノ感が増してきた。


「照準、右へ3度」


 試作砲は信濃の横から前に向いたので微妙に左に向いている。だからいつもより気持ち右向きにしないと目標に命中しない。


「三笠に連絡、本艦は敵旗艦の右にいる船、ドレットノートを攻撃する。三笠は左の艦を狙ってください」

「了解」

「試作砲、最終セーフティ解除」

「ロック解除、照準完全固定」

「試作砲……『蛇砲』発射!!」


 トリガーを引いて発射する。信濃の側面から出た光は敵旗艦の右にいた船を真正面から射貫く。

信濃の直列砲には及ばないがそれでも最大出力で信濃の装甲を削った兵器だ。貫通までとはいかないが、艦首部分は押されてつぶれた缶詰みたいに変形しかけている。

左を見れば主砲から炎が爆発音とともに噴き出ている。試作砲の音にかき消されていたらしいが三笠の列車砲がもう片方の船を真正面から潰したようだ。先日の信濃の時とは比べ物にならない程の威力であったことが向こうの損傷具合からわかる。


「勝ったな」

「やめろお前ぇ!!」

「高熱源反応」

「ほらぁ!……で何?」


 モニターを見れば部分的に言えば両側の高射砲台から何かよくわからないものが生えている。魚雷発射装置?それにしてはレールが長いし空向いているしで明らかに海面に撃とうとしていない。むしろ、空に撃とうとしているような?

……まさか

考えられる可能性から対処しようと動きだす前に向こうの魚雷もどきのお尻に火が付いてレールを走りだす。飛び出た物体はガクッと一瞬下に落ちるがすぐに体勢を立て直して空を飛んだ。

あれは、ゲームではありえなかった航空兵器というかミサイルだ。

「対空迎撃!!」

「……た、対空?」

「んなのねぇよ!!」

「そうだったぁ!」

信濃の高射砲台は魚雷迎撃に特化するために射線が海面にしか向かないようにしていた。そもそも航空兵器がないゲームで長距離攻撃ができない。そして、スーシア達NPCは対空システムも対空兵器も知識がない。この世界の技術だと必要ないと考え教えてなかった。スーシア達にも俺たちの世界のことをもう少し話しておいた方がよさそうだ。

「低射砲台完全に沈黙!」

こちらの装甲はそれなりに高いが無敵ではない。PvPでも勝率が高い信濃だが少し課金されれば簡単に装甲は抜かれている。そして信濃の側面に直撃した装甲が破壊されて今までにないほどに黒煙を上げ爆発が船体を揺らす。

「消火班!」

並列砲は二番砲塔を一番と三番が挟み込む形で砲身をくっつけ二番砲塔で発射する打ち方だ。利点は直列砲が一門分のエネルギーで発射するのに対して、並列砲は二門分のエネルギーを収束して撃つので威力は並列砲が強い。欠点は一番三番の砲塔を二番の両サイドに入れる必要がある都合右か左のどちらかに砲身を向けないといけない。なので素早い相手とかには向いてない。もう一つ直列砲に比べて横の敵を狙うので直接肉眼で狙えないのと微調整が効きにくい。出来れば使いたくないが一撃で沈めるには威力の低い直列砲は信用できない。やるなら並列砲を当てたい。

「でも、チャージから発射まで大人しく待ってくれるとは思いません。それにチャージ出来たとしても射線上に入れるのも一苦労ですよ」

「大丈夫です。手はあります並列砲九時方向へ撃ち方用意」

「機関停止、エンジン出力は全て主砲へ」

「一番砲塔180度回頭、二番砲塔90度回頭」

「回頭完了後前方の主砲員は退避、完了後充填開始」

「潜水艦へ連絡攻撃開始」

見たところあのミサイルもどきは一方向しか狙えないなら、誰もいない方向に向けてしまえば問題ない。

「でも、向こうもこっちが何かしていることはわかっています。大人しく車線上に来てくれるとは思いません」

「なら、来てもらうだけです。残りの潜水艦に連絡」

「一体何を?」

「決まってます。押してもらうんです」


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