列車戦艦
「列車砲?!なぜあんなロートル兵器がここに?!」
いやそんなこと言ったら信濃だって内装はともかく外見はロートル戦艦だし、人のことを言えない気が……いやそれよりも、列車砲なんて代物いったいどこから?ゲームに大型の陸上兵器は実装予定はなかった。そもそも列車砲を戦艦に搭載するとかどんな変態が提案したんだ?
「艦首に被弾!損傷軽微!」
……?
「……春雷さん反転を!あの攻撃を何度も浴びるのは危険です」
「いえ、今この状況で側面を見せるのは愚策、それに逃げたとしてもあの遠距離攻撃範囲から離脱する前に撃沈されます。機関出来るだけ全速、砲雷撃戦用意!目標仮称三笠艦首!」
新風の加速装置を使った影響でまだ聖杯から十分に魔水が取り出せていない。
「砲雷撃戦用意!目標仮称三笠!主砲一番二番三番へ実弾装填!……って艦首か?」
艦首はラムアタックやら何やらで一番装甲が厚い。例え世界最大級の列車砲だろうと簡単に貫通はしない……はず、ゲームにはなかったからわからないけど
「ソナーに反応、海底より周囲へ浮上する物体多数」
「え」
直後に海面から水しぶきと共にいくつもの物体が姿を現した。
「データ照合、伊四百型潜水艦と類似、総数15!」
本来は三隻までしか建造されていない伊四百型潜水艦を15隻もあるし、絶対俺たちと同じ転移者の艦で、艦隊だ。
海底に隠れていたか、しかも連装砲まで装備して魚雷以外の対艦装備もバッチリ、しかし……
「同行する艦多数完全に囲まれました」
「主砲目標切り替え、あっちの」
「目標変更なし、あの主砲ではこっちに大した被害はすぐに起きない。それよりも前方の三笠に火力を集中、接近しろ!」
「接近するんですか?」
「あの列車砲、旋回できるように改造されているが長さからして接舷された状態で砲身を旋回させることはできない。ならば全力で敵戦艦の側面にたどり着く」
「わかったわ、機関全速で回すわよ!」
『アイサー姉さん、機関全力でいくぞー!!』
「よろしくお願いします。漆捌さん前方に向けられる火力は全部回して、低射砲台は周りの潜水艦を攻撃、嫌がらせしろ」
「おっけー火力を前方に集中、間違えても魔水式で撃つなよ」
信濃の前面の主砲が火を噴く、実弾なので砲弾が弧を描いて飛んでいく、はずだった。
衝突音と共に艦が大きく持ち上げられるようにそれる。おかげで照準がずれて砲撃があらぬ方向に飛んでいく。
「なんだ!」
「わかりません!レーダーには何も」
「右舷展望デッキより報告、敵潜水艦こちらに接触しています」
「なんでレーダーに……まさかステルス機能を搭載した船」
「カメラによる画像データ解析、接触艦 三式潜航輸送艇通称【まるゆ】だと推定されます」
陸軍が造った潜水艦、信濃などの海軍の船をモチーフにした潜水機能持ちの船は航行しながら潜水する船が大半だ。正直一旦停止してから潜水するよりも航行しながら潜水できた方が便利であるし、垂直潜水するには色々制約がある。まず第一に武装が規制される。信濃のような大型船を建造しようが乗せられるのは機銃程度まで魚雷も爆雷も搭載できない。
だからこそ、まるゆのような潜航輸送艇くらいにしか搭載できない機能だった。
ただ、それだと戦闘になった時に不利すぎるからとレーダー機能に引っ掛からないステルス機能が実装され、ステルス機=輸送艇という図式ができた。まぁ、潜水機能とステルス機能にこだわらなければ武装できるのでそちら側の改造をした船もあったりする。
脱線した。
つまりこの体当たりはコバンザメでも発見できなかっただろうということだ。
「カタパルト展開、敵にべたべたされる筋合いはない。離れさせろ」
まるゆの位置からカタパルトを展開すれば距離を離しつつカタパルト展開による水の抵抗で方向も修正できる。カタパルトの展開が始まりまるゆも抵抗しているが少しずつ押されていってる。
「ジェットアンカーを左右に射出、突き放して近づけさせるな!」
シャーロックさんが操作してジェットアンカーを後方に射出する。あのまるゆには驚いたが注意すれば反対方向から体当たりをかまそうとしている伊型潜水艦に気が付く。
「まるゆ、及び伊型潜水艦の離脱を確認」
「機関全速前進!」
ドゴーンと爆発音とともに水しぶきが上がり船体揺らす。高速艇モードでもない信濃の速度ではすぐに三笠のところまでたどり着くことはできないが、何とか目黒い点として見える距離まで近づけた。問題は左右に展開している潜水艦だ。
「左右装甲板に魚雷の被弾及び浸水を確認、隔壁閉鎖します」
本来の信濃ならこのくらいの攻撃なら傷がつく程度で収まるが、今は魔水が装甲分まで回せていないので装甲が半減した状態だ。その状態だと少し威力の高い魚雷だと突破されてしまう。
しかし、それでもこれは信濃の迎撃で少ない方だ。
「迎撃を継続、手が止まったら沈むと思え!!」
『あいさー魚雷全門開放!装填急げぇ!!』
「エンジン出力落ちてるわよ!必要個所以外を全て出力カット、今止めたらおしまいよ!」
「空間歪曲魔法、数か所の停止を確認及び融合爆発が発生、消火作業と復旧開始」
少ないからと言って大丈夫なんてことはない。相手は俺達と同じ転移者、攻撃に使われている魚雷はガレオン船ぐらいなら一撃で沈めれる。そんな魚雷を現状数十発食らっている。流石に戦艦の装甲でも限界があるが、それでも前に進まないと勝てない。
あとそんなにどっしり構えられるのは好きじゃないんだ。こっちが近づいてるんだから、そっちも近づいてもらおうか。
「アンカー前方に射出、敵戦艦に括り付けろ!」
「アンカー敵戦艦のマストに命中、目標との距離1000を切りました」
「後方の島の斜面から熱源反応?!」
「は?」
敵戦艦の後方からこちらの周囲に砲弾が着弾し水しぶきが上がる。
「被弾なし!!」
「無視無視、アンカー巻き取り開始」
錨が巻き取られ二隻の距離がさらに短くなる。
「残り500」
「総員衝撃に備えろ!」
俺はパネルに体を傾けて淵を掴む。瞬間、耳をふさぎたくなるほどの高音と振動が体を揺さぶる。
揺れが止まったと同時に体を起こす。
「被害報告」
『主計課、コーヒーがこぼれました』『戦術課、被害なし』
「艦長、その他被害なしです」
「ありがとう、それで」
向こうの反応は……
「艦長、向こうから光信号が」
「よみあげて」
「はい」
そしてスーシアによって読み上げられた文章はやはりというべきか、話し合いの提案だった。




