赤道祭その2
「でこの区画はーー」
「フガクさんの釣り堀区画ですね」
場所としては艦体の左側面、ただそこから水面までは遠いのでタラップを使って海面に浮上しているコバンザメまで降りてコバンザメの上で釣りをして釣った魚は簡単な検査で毒があるか判定してから主計課の子が設置している特設調理場で調理して美味しくいただくことができる。
刺身は怖いので煮魚とか焼き魚が基本だが俺も食べれたら食べたかったくらいにいいにおいがする。
「お、春雷さんやってくかい?」
「フガクさん、釣果はどんなんです?」
「色々連れてるぞ俺の知ってる魚は見てないが出る料理はうまい。今のところ料理食べて気分が悪くなった奴もいないし大成功もいいところだ」
ふむ、流石にサイケデリックな色合いをした魚はリリース対象だけどそれでも主計課の子達がフル回転で動いているところを見ると結構な頻度で釣れているみたいだ。
「艦長私たちもやってみましょう」
「そうだね」
「了解だ。餌は向こうでもらってくれ」
そう言ってフガクさんは木の枝でできた釣竿をくれる。
信濃はコバンザメで網を使った漁ができるのでわざわざ釣竿を使用した漁をする必要がないので赤道祭限定の即席釣竿を用意している。壊れてもいいように数は用意してある。
「特に時間はないけど、他のやつらもやりたいだろうし適度に切り上げてくれ」
「了解」
「おーい二人行くぞ!!」
「了解でさー!!お二方ようこそ!まぁ細かいルールはないんで楽しんでください。これ餌です」
と、フガクさんの子が芋虫もどきが入った缶を渡してくれた。生きているので蠢いている。
「あースーシア苦手なら自分が代わりに……」
「え、なんですか?」
虫系苦手かと思ったけど素手で行けるのね。ワイルドだなぁ。
俺自身特に虫が苦手というわけではないので針に虫を刺して釣り糸を垂らす。
「……」
「…」
こういう無言の時間もいいけど他の子はどうしているのか気にはなって周りを見ると、和気あいあいとしている。うーん、スーシアにもあんな感じで話した方がいいのか?
「艦長は」
「うん?」
「艦長はこの世界の事をどう思いますか?」
「どう、って?」
「私はこの世界が好きです。艦長達がいて、信濃で冒険出来て、他の皆さんも同じです。リギースや蛇が出た時には驚きましたし、亡くなってしまった方がいたのは残念ですが、それでも私はこの世界に来たお陰で艦長のお役に立てました。ずっといたいくらには」
チラリとスーシアを見るがスーシアはまっすぐ釣り糸を見ている。赤道祭といういつもとは違う空気に零れた質問みたいに聞こえる。だからこそ、嘘偽りなく答えなくてはならない。
「…俺もこの世界に来て大変だったことばかりだったが、楽しめはしたかな」
他の人から聞けば人が死んでいるんだと言われそうなところだが、実際にバーチャルじゃない本物の信濃を動かして、調査して現地人と交流してスーシア達と過ごす。ロボットの構造に目を輝かせて、信濃の改造に精を出す。
うん、俺はこの世界をどうしようもなく楽しんでいる。
「そうですか!なら!」
「だけど、ずっとは無理だ」
遊園地にも毎日いたら飽きる、嫌になる。そうなる前に外に出てまた今度こようと思う。この世界も今は楽しいが10年20年といたら嫌になると思う。この世界の思い出を嫌にしたくない。楽しい思い出のまま帰る。
「俺はスーシアのこと結構大事に思っている。だからこそ、この気持ちを失くしちゃいけないんだ」
「…わかりました」
その後は会話が続かず、俺が切り上げようというまで終始無言だった
結果としてはそれほど誇れるものではなかったが、結果が欲しかったわけではないから満足だ。モリがあったら使いたかったが、仕方ない。
その後もボートレースや土器作り体験コーナーとか色々楽しんだ。
そして楽しかった赤道祭もあっという間に過ぎていく
「楽しかった赤道祭もこれで終わり最後に艦長お願いします」
「うん、とはいっても自分が言うことは特にありません。しんみりさせるわけにもいかにないのでどうしようかと考えて、思いつきました」
そう言って軽く手を叩くとスーシアがギターを手に持つ。よく考えたら俺とスーシアは出店の管理とかで何も出してなかった。というわけで
「超々大和型信濃艦長春雷、歌います」
「「「は?」」」
「聞いてください。『真っ赤なスカーフ』」
終わりの曲としてもそして俺自身の思いを出せる曲としてこれ以上ない選曲だと思う。
そして、歌い終わり締めようとしたとき、突然鳴り響く警報音
「レーダーに艦影確認!」




