赤道祭開始
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「それでは赤道祭を始めるにあたって艦長よりお言葉をいただきます」
そうスーシアからの紹介の後に俺にスポットが当たる。
あれから何とか座標から思っていたよりも小さい島を見つけ出し、停泊することに成功した。
一応あの島にリギース人やゲリラロボみたいなビームを吐いてくるヤベー奴がいないか調べてから準備を始めた。準備に2週間、開催期間6日間の一見すると大型企画になったが、準備期間は修理期間と並行、6日間も3日間でサービスを受ける側とする側を交代するためから実質3日間開催だ。
準備期間は本当に大変だった。穴を埋めて空間歪曲術式をかけ直してもらって、ついでに予定にない信濃の総メンテを始めたりして、時間がカツカツだった。
準備も一味違う出し物をしたい気持ちだけが先行してよくわからない食べものやら、島にでかい的を置いて信濃の主砲で撃つ巨大射的だのやばい提案が出てきた。時に胸倉をつかみあったり、頭に水を掛け合ったり、スーシアがツボって笑いが止まらなかったりしたが、何とかここまでこれた。
いや、本当に大変だった。
場所は信濃甲板の第3主砲の横イベント自体は艦内で行われるが開始のあいさつは全員で行われる必要があるみたいで全員が集まれる甲板で行われることになった。被り物を被せてすぼめた航海灯もといスポットライトに照らされて乗組員ほぼ全員の視線が俺に向けられる。正直めっちゃ緊張する。骨じゃなかったら汗ですごいことになってたかもしれない。
とはいえ、協力は惜しまないと言った手前ここで尻込みをしていてもしょうがない。
「この世界に飛ばされてはやくも3か月が経過しようとしています。皆さんのおかげでここまで航海できましたが、まだこの世界のことも元の世界に帰る手段もわかりません。とはいえ、ここまでの航海が並大抵のものではありませんでした。これからの6日間は労いの意味も込めています。飲んで騒いで下さい。無礼講です」
最期に俺は勢いよく持っているグラスを掲げる。
そして開始の合図を出す。
「これより赤道祭を開始します!!」
その声が合図に全員が雄たけびを上げ始めた。楽しみにしていたんだろう。そう思うとほほえましい気持ちになる。掲げていたグラスをスーシアに渡して俺は壇上を降りる。
ここからは各々自由に動く、俺は艦長室に引きこもるつもりだ。上の立場の人間が祝いの席にいても圧をかけるだけだし、この骸骨の姿では怖がらせてしまう。なら適当な食べ物をもらって優雅に祭りの様子をモニターしてるとしよう。
あ、チョコバナナもどきとラムネ
食べれないけどお祭りの食べ物って持ってるだけでもテンション上がるな。後で梵天丸さん達にでも渡そう。
そう思ってのんびり歩いていたら後ろから急いで走ってくる足音が聞こえる。人数は一人かな?全く、お祭りでテンションが上がってるのかな?ぶつかったら危ないから端に避けよう。チョコバナナを壁側に避難させて通路を開ける。だが、足音は俺の後ろで止まった。
ん、スペースが足りなかったか?そう思い振り返るとスーシアが肩で息をしながら立ち止まっていた。
「どうした?何か問題が?とりあえずラムネ飲んで落ち着きな」
そう言ってラムネ瓶を差し出すが、スーシアは受け取らずに呼吸を整えて、目を閉じて一度深呼吸した後に目を開いた。
「艦長一緒に回りませんか?」
「え?」
こんな時まで俺といなくていいのに
「いや、ほらクロトリの子とか、梵天丸さんとかと回れば?自分はこの姿だと怖がられるだろうし」
「大丈夫です。その格好もいいとは、思いますがちゃんと対策は考えています」
そう言ってスーシアはお面を差し出した。これ漆捌さんが作った屋台用のおめんだ。モチーフというか形がまんま某連邦の白い悪魔だ。ゲームに実装されたら全部モザイク処理されそうな完成度だ。なるほど、これを被れば少なくとも骸骨の顔を見られることはないと
「怖がられるのが嫌でしたら、これを被ってください」
「しかし、艦長がいると圧にならないか?せっかくの赤道祭だ。皆には余計な気を使わせたくない」
上司との飲み会ほど嫌なものはない。常に気を使わないといけないし、酒はつがないといけない。俺がトップになったこの状況でスーシア達に余計な気を遣わずに祭りを楽しんでほしい。
「私たちにとって艦長達の指示は絶対です。艦長が言っていました無礼講だと、なので私たちは指示に従って全力で無礼講します。ご覧ください」
スーシアが指さす先には船務課の子たちに引っ張られている梵天丸さんだ。
「船務長、あっちのフランクフルト美味しかったですよ!行きましょう」
「梵天丸様、あちらの海で捕れた魚すくいも面白そうです。やってみませんか?」
「面白そうですね。ではフランクフルト貰ってから挑戦しましょう。あ、あとあそこの焼きそばも買いましょう」
モテモテだ。傍から見たが幼女に引っ張られているミニスカ履いた海賊という何とも言えない絵面だが、本人がなんだか嬉しそうだからいっか。あの幼女も本人の趣味だし、何も言うまい。俺も似たようなことをしてるし言う資格はない。
「わかりましたか?私たちは好きで関わっているんです」
満面の笑みで俺に問いかけるスーシアは一緒に行きたそうな圧を感じた。正直なところ俺でいいのかという思いがあるが、そうでなければ誘ったりしない。
「ああ、わかったよ。それで何処に行こうか?おススメとかある?」
「はい!この先にイユさんによって1mm単位で調整された射的場があるので挑戦してみませんか」
「何その絶対取らせないという意思を感じる射的は」
イユさんがいるということは絶対ドライが関わってるだろ。ものすごく気になるじゃん。行かねば。
「よし、じゃあその射的場に行ってみるか!」
「はい!」
スーシアの返事を聞いて二人で歩きだす。
「ところでスーシアいつもより積極的な気がするんだけど?」
「無礼講ですから」
「なるほど」
…………あれ?これってデー……やめよう、せっかくスーシアが誘ってくれたのだ。ここで余計なことを言って気まずい空気を作るのはよくない。




