赤道祭準備
「赤道祭やろうぜ!!!」
「……急にどうしたんですか?」
突然来た漆捌さんの声に驚く
朝のティータイムを邪魔した罪は大きい、とはいえ俺は飲めないので夜間の報告に来たスーシアに飾られていただけの紅茶をごちそうするだけなのだが、そのスーシアが驚いて紅茶をこぼしている。
謎の蛇ロボット辺りから何かと落ち込んでいるスーシアを元気にしたいとこっちから誘ったのが始まりだが、なんだかんだ毎朝の日課になっている。俺自身も飲めはしないが香りをかぐととても心が落ち着く。話がそれた
「赤道祭だよ。赤道祭!」
「いや赤道祭はわかりますよ」
大航海時代赤道付近は風が弱くさらに雨が降りやすかったこともあって木造船にとっては無事に通りにくい場所であったと、そして船乗りたちは無事に乗り越えられるように行った儀式、それが赤道祭の始まりと言われている。
「で、何で赤道祭なんですか?」
「ここに来てずっと緊張続きの日々だったろ?たまには気分転換もしたいと思ってよ!」
確かに転移してからリギース、ピラミッド、蛇と途中日数が開いているとはいえ結構な出来事ばかりだ。気分転換もいいかもしれない。ただ、それは日本に着いてからでもいいと思う。
いまの信濃はインド洋東部インドネシア方面を航行中……位置的には島が見えてもおかしくないのに全然見えない。ただ、思ったよりも浅瀬が多いので座礁しないようにコバンザメには先行してもらっている。確かに赤道付近を航行しているが赤道祭をしている余裕はない。
「気持ちはわかります。とはいえ正直、リギースから敵対している身としては出来るだけ遠く安心できる日本に着いてからでもいいと思います」
「ええ」
「いえ、艦長、私は漆捌の案に賛成します」
「なんで?」
ここでスーシアから賛成意見が出るとは思わなかった。
「先の蛇型ロボットとの戦闘によって発生した信濃の損傷がまだ完治していません。航行中でも修理は可能ですがどこかで停泊して修理をした方が、修理期間が短縮されます。その際に一緒に赤道祭をするというのはどうでしょう」
確かにさっきのスーシアの報告書には修理が予定の期間をオーバーする可能性があると書かれていた。あの仕事熱心な子たちが予定をオーバーするのは驚いたが、なるほど連戦続きで流石に疲れている可能性もある。であるなら気分転換も兼ねてやってみるのもいいかもしれない。
「……やってみましょうか」
「やったぜ!!」
この俺の一声で近いうちに赤道祭を開催することが決まった。
とはいえ、敵襲が来る可能性も捨てきれない。先の蛇のように光の中から現れるかもしれない。監視は置くし、もちろん修理が最優先なので修理人員は停泊している分多めに入れる。
ただしその分停泊期間は多めに入れて修理は終わっても祭りに参加できなかったということはないようにする。
スーシアとその辺りの打ち合わせをしながらふと甲板の方を見る。クロトリの子かな?なにやら作業をしている流石に航行中の現在はいつ敵と会敵するかわからない状況で赤道祭用の飾り付けはしていない。その辺りはわかっているだろうからやっているのは測量と飾りつけをどこにするか話しているんだろう。少しほほえましい。
「信濃の現在地は艦長達の言い方で言うならマレーシア諸島近辺にいます。予定では北上してマレーシアを通過して日本に接近する予定で……艦長?」
「ん?ああ、聞いてるよ。それでどこに信濃を停泊させるかだよね?」
赤道祭をやるとはいえ何もない海原で停泊するなんてことはしない。ということで信濃の停泊場所を探している。とはいえ、この世界と俺たちの世界がどのくらい変わっているのかよくわかっていない。梵天丸さん曰く少し沿岸部が内陸に移動しているそうだ。つまり、少しだけ陸地が少なくなっているかもしれないとのことだ。
「はい、幸いマレーシア諸島は島が多いので隠れて停泊するにはうってつけの場所ですが、何処に停泊すべきか航海課が決めかねてまして艦長に決めていただきたいのです」
そういわれても俺もマレーシアに関しては知識だけで行ったことはない。ゲームでは何回か行ったがこの世界の地形がどこまで変わっているのかわからないから自信がない。とりあえず思いついた地名を候補に混ぜてもらおう。
「……マヌス島のゼーアドーラ湾とか?」
「ゼーアドーラ……確かにこちらでは補給基地とドックが建設されていましたので停泊場所にはいい場所だと思います。早速航海課に進路変更を進言してきます」
そう言ってスーシアが部屋を出ていこうとする。え、これで決まり?急に不安になりスーシアの腕を掴む。今までは判断が必要な場面ばかりだったから即断即決で指示出したけど、マレーシア諸島まではまだ時間があるからもう少し話し合ってもいいんじゃないか?
「待って候補の一つだよね?」
「いえ、艦長のご指示に従うとのことで航海長の了承もいただいています」
シャーロックさん!!!航海長が納得してるなら何も言えないじゃん。
「……そう、じゃあ、よろしく」
「はい、では失礼します」
肩を落として手を離すとスーシアは一礼してから部屋から出て行った。
今度廊下の照明を落として後ろから驚かしてやる。
とりあえず皆の赤道祭での出し物を見てみようか




