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葬式

 甲板に可能な限りの人を集める。行うのは葬式だ。


 この世界に来て初めての犠牲者。負傷者は今までの戦闘中何度かいたが、それでも死者は出なかった。それほどまでにあの蛇の攻撃が強力だったということか、少なくとも女王でさえ装甲貫通はなかった。葬式の準備中にクロトリが残骸を回収し、解析に回しているがどう考えてもこの世界にはありえない技術で作られているらしい。そして少なくとも俺たちのやっていたゲームにもいなかった。知っている形をしていたし、あれも無人機だった奴もいたが全く同じというわけでもない。俺たち以外の場所から飛ばされたと思われる。そして新たに判明したことは俺たちが飛ばされたのはあの白い光に巻き込まれたことが原因にあると考えてよいだろう。


 とはいえ、冷静に考えればあれに入ったとしても戻れるか確証がない。あの時の光ならあの蛇がいた場所に飛ばされる可能性があった。あの時の判断は考えなしであったと言わざるを得ない。


「艦長準備ができました」


 スーシアの声に顔を上げる。現在遺体を水葬するために左舷の機関砲の近くにいる。他には砲雷課と航海課から数名とスーシアのみだ。本来はもっと希望者がいたがいつまたあの蛇が来るかわからない状況でむやみに船員を一か所に集めたくはない。

そばにいるスーシアの手には艦内放送用のマイクが握られている。一応一か所には集めないが航行に支障が出ない程度に傾聴することは許可している。


「諸君、いや皆さんの働きによって信濃は今も沈没することなく航行できています。本日は先日の戦いで先に旅立ってしまった仲間の旅立ちを見送ります」


 そういうとスーシアが合図を出してクロトリ部隊の発射用のカタパルトが片方開く、もちろんクロトリを出すのではなくビニールに包んだ遺体を送り出すためだ。流石に甲板の高さから落とすのはかわいそうだから、なるべく海面に近い場所で送り出すことにした。


「一同敬礼」


 自分がびしりと敬礼すると全員海に、先に逝った戦友に向かって敬礼をする。直後に主砲が動き、魔水式のエネルギー弾が発射される。見送りには必要と考え、許可を出した。

ふと、見ると全員方が震えている。


 そうだよな。ゲームの時には何もなかったスーシア達もこの世界に来て自我を獲得した。俺も死んだ彼らとは話したこともあるし、俺は食事をしなかったが一緒の席で話したことがある。その俺でも悲しいのだ。お礼状に話しているだろうし、何なら同じ課であった子たちにとっては家族も同然、そしてこの世界に来て初めての死に別れ、当然悲しいよな。


 その日は遺体の入った袋が見えなくなっても日が暮れるまでスーシア達の敬礼は続いた。

その後姿を見ている俺のかたにズシリと重い何かがのしかかるのを感じた。

ああ、これが責任というものか、人の命を何百という船員の命の重さか。

元の世界なら感じることのなかった重責に思わず下を向きそうになる。しかし、下には向かずに上を向く、ここで下を向くのはとても失礼な気がした。艦長なのだら上なのだから俺がそういうのはいけない気がする。


 だから、上を向いて冥福を祈る。ありがとう、君たちの死は決して無駄にしないように誓おう。

とはいえ、そのまま解散というのも後味が悪い。言い方が悪いかもしれないが送り出すときには楽しく送り出したいというのが俺の考えだ。というわけで簡単なお別れ会をラウンジで行う予定だ。

料理は出来るなら寿司を出したかったが、この世界の寄生虫とかが怖いので完全に加熱した煮魚、焼き魚やら艦内で飼育している牛を使ったローストビーフ等いろいろな料理が置かれている。流石に全員が同じ場所に集まるわけにも行かないので主計課が各自の持ち場に持っていったりしている。


 俺は食べれないから何となく壁の装飾品の一部になっている。


 いつも傍にいてくれいるスーシアも今は他の子達と談笑してるし、梵天丸さん達も涙を流しながらお酒に逃げてる。顔真っ赤になりながらお代わりを所望しながら他の子にダル絡みしている梵天丸さんは珍しい。なんだかんだ、一番交流しているの梵天丸さんなんだなと感じてその場を離れる。あの状態の梵天丸さんに関わるのはよくない事はあの様子を見れば分かる。素面で関わったらだめだ。

頑張れクロトリ部隊!


 取り合えず寿司の皿を両手で持ち、通路をさまよいながら行き先を考える。機関室は熱いし、航行室はあまり関わりがないから行きにくいし他は行かな過ぎて未だ怖がれる。これは一人艦長室で星を肴にレコードを聴くルートだな。

そう考えながら艦橋への直通エレベーターの呼び出しボタンを押すと丁度来たようで扉が開く


「あ」

「おや」


そして、中にいたミアさんとおばあちゃんと目が合う。





「いや、まさかミアさんがお酒を持っていたとは」

「はい、いつもお世話になっていらっしゃるスーシアさんにと持ってきたのですが、話を聞いたところで必要なさそうですね」

「スーシア多分出来上がっているからね。ここは艦長権限で飲んじゃいましょう」


 リギース脱出後は機関室への斡旋しただけで話すことはなかったので、この際少し話がしたいと艦長室に誘った。

俺は飲めないので二人のコップに焼酎を注ぐ。


 リギースから一緒にいるミアさん、スーシア以下信濃メンバーによるスパルタ教育によってある程度日本語で話せるようになっているが、時たま怪しい。まぁしかない、むしろこの短期間でここまで話せるようになったのが凄い。俺は無理だ。

ちなみに寿司は卵に納豆巻き等、生が嫌いな俺好みの内容になっている。俺は食べれないけど、同じく生が苦手なミアさん達は納豆以外は食べている。


「ところで信濃での生活はどうですか?」

特にこちらに報告は上がっていないので問題はなさそうだが、直接話した方が聞けることもある。


 「はい、リギースでの生活よりもいいです。皆さん親切で仕事も易しく教えてくれます。機関長さんがすこし怖いですが」


 一応、普通の乗組員と同じ生活をさせているが、特に不満もなさそうだ。宗教的なあれこれも来てみたが食事の挨拶とか細かいところが違うだけで大まかな生活リズムは俺達と大して変わらない。

黒雪さんは……まぁ、自分の園に女子が混ざるのは嫌だろうな。手を出してないだけ良しか。


「何か、不満とかは大丈夫ですか?」

「ないです。食べ物もリギースの時よりいいですし、仕事も楽しいです」


 黒雪さんの子達の報告通りだ。偶にエンジンの方をボーっと見る時があるのだそうだがエンジン機構に興味があるのかな?残念ながら俺にはサッパリだからその辺りは黒雪さん達に聞いてほしい。


「ところで艦長さん一つ聞きたいことがあるのだが、いいかね?」

「ええ、大丈夫です」

「この船はどこに向かっているのかねえ?場所を聞いてもあたしたちには初めて聞く場所でしっくりこないのさ」


 乗組員全員には行き先をスーシア以下副長クラスの子達に通達して拡散するようにしているので行き先を全く知らないというわけでない、と思う。


「東です。多分私たちの故郷が東の果てにあるのでそこを目指しています」

「なるほど、艦長さんの故郷が……いったいどんなところなのかねぇ」

「それは……」


 そこまで言って俺は言葉を区切る。素直に日本のことを話していいのか?もし俺の知っている日本を話して実際の日本が血が違ければ嘘をついていたことになる。少し違うならまだいい、ただリギースは中世の英国に近い姿をしていた。

もし日本が全く違う姿をしていれば二人に疑問を抱かれない。つまり当たり障りのない回答を言うしかない。


「……そうですね。私たち自身長く離れていたので出た時と情勢やら何やらで変わっているかもしれませんが、景色がきれいなところでした」


 実際に帰れるのなら帰りたいと思えるくらいにはいい世界だった。もし、異世界転移したらと考えたことあはあるがそれは自分の世界に何の未練もなかった場合の話だ。俺はまだあの世界でやりたいことがあるし、妹とお別れもせずに別れるなんて許せない。


「そうかい。それは楽しみだね」

「ええ、いいところでした」


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