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最終武装

『こちらアルファよりシエラヘはやにえを刺した。繰り返す、はやにえを刺した』

「発信機からの信号を確認しました」

「クロトリ全機へ作戦完了、直ちに離脱しろ」

『了解した。帰還したらホットミルクとシャワーを所望する。まじで、おわり』


 モニターに映った光信号の返事に苦笑しながら気を引き締める。クロトリは脱落者を出さずに仕事をした。ならばこちらも成功させなければならない。


「最終シークエンスに移行、トリガー下ろせ」


 スルスルと天井が降りてくるのは直列砲専用トリガー。撃つのは俺だ。あの時無人艦とは言ったが中に人がいる可能性もゼロじゃないし、一番のミスを人のせいにしたくない。

作戦立案の責任者として一番重大な役割を背負う。


「機関そろそろ最高速度維持するのが厳しくなってきたわ!!撃つなら早くして!!!」


 機関の聖杯は無限に魔水を製造するが、無限を取り出せるわけじゃない。直列砲と機関にほぼすべての魔水を注入している現状聖杯二基分の生産量より消費が大きい。このままだと撃つ前に機関が止まってしまう。


「対閃光防御、クロトリは?」

「全機離脱確認したぞ。ぶちかませ」

「よし、船体半固定左舷錨下ろせ」


 ガコンと動きジャラジャラと錨が落ちていく。

海底に錨が着いた途端、ガクンと一瞬船体が沈み錨を起点に船体がドリフトしながら半回転する。

ああ、夢にまで見た戦艦ドリフト。できるならこんな時につかいたくなかった

そこにレザーが飛んでくる。現在信濃はドリフト中その無防備な横っ腹に光が直撃する。

とんでもない振動が船体を揺らし、非常灯が点滅する。思わず艦長席の前にある机に手をかけて支える。この感じ装甲が貫かれたな。

「低射砲台付近に着弾、空間歪曲魔法が切れて内部から誘爆が発生中、隔壁及び消火装置起動」

「黒雪さん直列砲は?」

「問題ないわぁ!!でも、今の攻撃でやばめだから、さっさと撃っちゃって!!!」

「了解、電力完全停止!非常電源に切り替え」

瞬間、艦内の照明が全ておちて赤灯に照らされる。某宇宙戦艦よろしくメインエンジンの燃料を全て使う関係上エンジンの再起動分のエネルギー確保のために非常電源に完全に切り替える。


「船体完全固定!!」


右舷の錨も降ろし完全に船体を固定する。


「直列砲内1200度を突破、臨界!!」

「最終セーフティ解除、主砲完全固定」


 主砲三番が二番に主砲二番が一番に砲身に入れ完全に固定される。副砲を撃鉄、主砲2番3番を薬室として主砲1番をバレルとする。あの船が船全体を一つの銃にすると例えた、こちらは前面にある主砲全部を使って一つの攻撃を撃ちだす。威力は落ちると思うがその分チャージが短くなる、魔水を使わない他の武装は使える等利点もある。


「軸線に乗った」

信濃が180度回転して蛇を正面に捉える。蛇はまっすぐこちらを見て口元から火花を散らしながら光が漏れている。発射10秒前みたいだ。トリガーに手をかけスコープを覗く。スコープの先は主砲一番の正面が写っている。つまり蛇の胴体部分が中心になっている。


「カウントダウン省略、直列砲発射!!!」


 本来はカウントダウンをやるべきなのだが、数えている間に動かれたらたまらない。俺はカウントダウンを省略して引き金を引く。

 すると、とてつもない爆発音とともに副砲と三番の接続部分から爆炎がこぼれ、次の瞬間には赤と青の混じった信濃を丸々包み込めるほどの光線が主砲一番から先を進んでいく。光線に風圧があるのか煙が晴れ一瞬だが敵の姿が見れる。よけようとしたのかどうかしたのか分からないが当たる直前にイルカのようにジャンプして光線を飛び越えようとした。

が光線は胴体を吹き飛ばし重力に従って落下した頭を焦がした。


「直撃であれば吹き飛ばしますか」


 直列砲が撃ち終わり、余韻のような物に浸っていると梵天丸さんが呟いた。モニターには胴体が消し飛び装甲がドロドロに溶けジュウジュウと音を立てながら煙を上げている蛇の頭部分だ。胴体は消し飛んだか海底に沈んだか。


「もう動かないか……?」

「流石にあの状態で動くとか……ないわよね?」


 あれで動いたら頑丈のレベルを超えてゾンビだよ。ロボットの域を超えている。


「クロトリに確認させる。シャワーはおあずけだ。」


 耳のヘッドセットで何度かやり取りをしている。多分手旗信号をさせるために話しているんだろう。その間に指示を出す。


「スーシア、砲身の冷却を……」


 本来あれが水中前提なのは発射直後の砲身の異常な温度だ。1200度出すのだから仕方ないが冷却が間に合わなければ最悪砲身が曲がる。水中なら発射と同時に周囲の熱で冷却できるので問題なく発射できる。ただここはゲームじゃないので塩が付きそうだけど。


「もう既に開始しています」

「あ、そう、じゃあ負傷者は」

「すでにイユさんとドライ先生が治療を開始しています」

「そっか……」


……どうしようやることない。

 何か指示することは無いかと考えているとスーシアが浮かない顔をしている。


「9名、現在先の攻撃に巻き込まれて亡くなっているのを確認できた人です」


そういうスーシアの顔は少し悲しそうに見えた。


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