裏で動く人たち
「見つけましたねキャプテン」
海面より浮かび上がる潜望鏡に映るのは以前我らが沈めかけた船『信濃』、形は違えど装甲に走る魔水の色を間違えるはずもない。よもや因果というのものは
「ああ、そうだなアイニだが、仕掛けるのは今ではない。我らは海の狩人、ひっそりそして確実に―――」
「そんな物どうだっていいわ!!敵の姿を見ながら何故攻撃せん!!」
「お言葉ですが我らの船クートゥルケンは奇襲を得手とした戦法を得意としています。とはいえ、戦艦一隻を落とすのは骨が折れる。まして奴は理想郷の信濃、一度沈めかけた相手とは言え油断は禁物です。ここは様子を見て」
「ならん!総統閣下より敵モーガウルの拿捕を受けたというのに艦隊は壊滅、唯一無傷であった我々が追撃の任についているというのに、あまつさえ目の前にいるというのに手を出さぬのはドリツ帝国民として断じて許される行為ではない」
それは功を焦ったお前が原因だろうと内心ため息をつく。自分は安全なところ、敵は数の暴力でねじ伏せようとした。一応注意したが、結果は艦隊のほとんどを失うことになった。このままでは帰れないとあいつは我らだけでの追撃を開始した。
我らとしては好都合ではあるがな。
「そうですか。我らはドリツ帝国民ではないので関係ありませんので」
「な!き、貴様」
「いい加減にしろよ。うちのキャプテンが今は手を出さないと言ったのだ。待てを憶えろビグレッド」
「き、貴様ら!この私に歯向かうのがどういうことか分かっているのか!」
「アイニ、やめろ」
お互いに熱くなりすぎだ。
「将校閣下、陛下は無謀なる失敗より盤石なる成功を望むお方だ。ここで無意味な失敗を出してしまえば閣下のキャリアに傷が付いてしまう。我らは確実に勝利のために動いているのです。ご理解を」
「む、むうしかし陛下は急げと」
「とはいえ、今ここで奴らと事を構えても勝ちの目はないと言わざるを得ません。機が熟すのを待つのです。あの船は陛下のお気に入りと肩を並べるほどの船、手に入れれば階段などあってないような物となるでしょう」
「そ、そうか、ならば待つとしよう」
「ええ、そうしたほうがいい。とはいえもうすぐ日が暮れる閣下は自室でお休みください後は我らにお任せください」
「うむ、任せた」
そういうと艦橋から足音をたてながら出て行った。防音しているとはいえ、無用な物音はたてないでほしいものだ。
「ッチ、あの食うだけしか能のない豚どもめ」
「いうなアイニ、豚に失礼だ。奴らの血肉は我らの胃を満たすが奴らは何もしない。豚の方が偉いぞ。そして我らはまだ利用される立場だということを忘れるな」
「でもよぉキャプテン俺は悔しいぜ」
「理不尽はやり返してもいい。だが時と場合を考えろ。我らの行動次第でドリツにいる我が同胞の命にかかっていることを忘れるな」
「……ん、わかってるぜ」
そう用心していたつもりなのだが、別世界と気が付き心が高ぶっていた我らの一瞬の油断をつき我が同胞が何名かドリツに捕まっている。返してほしくば傘下に入れと。逆らわなければ……
あの口ぶり既に我らの対策を立てていたと見える。敵は我ら以上に用意周到、ならば期を待つしかない。
「案ずるな既に策はある。それに言っただろう時と場合を考えろとバレない嘘であるのならやり返せ、やりすぎは駄目だがな」
「……そうか、良い事聞いたぜキャプテン、俺早速考えてくる。日が沈むまでまだ半日もあるしな」
「ああ、潜ってしまえば慣れている我らでもない限り外が明るいか等分かるわけない。精々不規則な生活をお送りしてもらうさ」
「あとは奴ら次第か……ルルホームはどうなっている」
「指示通りコッソリ海底を張って付いて来ているぜ」
「あとは何処で仕掛けるか…だな。潜航しろ、尾行する」
船は静かにレーダーにも発見されずに再び海中に消えていった。
―――時空間物質転送装置起動、本機以外の全16基の転送装置との通信途絶、同時転送不可、残存エネルギー40%
―――入力を確認、転送先、北緯7度東緯78度、時刻54874年後入力完了
―――ERROR生体反応を検知、該当年へ生体ユニットを伴った転送は現在出来ません。転送体から生体ユニットを外して再度入力してください
―――ERROR生体反応を検知、該当年へ生体ユニットを伴った転送は現在出来ません。転送体から生体ユニットを外して再度入力してください
―――ERROR生体反応を検知、該当年へ生体ユニットを伴った転送は現在出来ません。転送体から生体ユニットを外して再度入力してください
―――シュレディンガー式未来観測により事象確定のゆがみを感知しています。現在生体ユニットの時空間転送は行えません。繰り返します。現在生体ユニットの時空間転移は行えません。
―――ERROR一度に転送できる数を逸脱しています。減らしてください。
―――生体ユニットが確認されませんでした。時空間転送装置起動、時空介入開始、転送先異常なし、転送開始
―――転送完了、降臨計画分のエネルギーを維持する為にスリープモードに強制移行します。
―――警告、転送装置への強い衝撃は転送に障害が出る場合がございます。




