調査
クロトリ隊の皆さんに合流直後すぐに移動を開始します。あのワニは砂嵐が来るとわかって隠れていたと予想します。であるならば、止まったままなのはいけません。出来うる限り全速で目的地に急行すべきです。最悪燃料が足りなさそうになっても下りであるなら川の流れに沿って進むので節約できます。
「いい判断だと思います。目的地は多分地上ワニに襲われたとしても十分に対処できます」
そこからさして大きな問題に遭遇することなく順調に川を遡ることができ、位置的にもピラミッドがあるといわれている座標付近についたので持ってきていたカニ眼鏡でピラミッドを探します。私も一度見たことがあるのであの特徴的な三角錐は見逃しはしません。
「どうです?何か見えますか」
「……いえ、それらしきものは船上からは確認できません」
ですが、それらしきものは今のところ見つかりません。見えるのは砂と低い木くらいで人工物のようなものは見えません。
「元の世界からならナイル川からでもピラミッドを見ることが出来たはずなんですけどね」
「となると、ここは異世界と?」
「そう……なってしまうんですかね?」
「……?いえ、待ってください。10時の方角です何かピカピカしているのが見えます」
「ピカピカしたもの?」
運転を変わって梵天丸さんにかに眼鏡を渡します。少しして考えながら梵天丸さんが一言。
「春雷さんならイベントか何かでビックゲストがステージから出てくるときに滅茶苦茶ライトアップされているのを遠くで見る状態とか言いそうですね」
言っている意味がよくわかりませんが、方角的には目的地の方なんですよね。
「……調査します?」
「調査します。どちらにしても目的地付近なのでここから徒歩の方がいいでしょう」
「方角的のも多分あっちですね、ピラミッド」
「早速指示してきます」
指示の元皆さんテキパキと上陸して野営地が作られていきます。日付が分かりませんが、7日ごとにカレーを作るようにしていますが、今日はカレーの日ではなかったようです。
そして、先のビームを撃ってきたやつらのような存在がいるかもしれませんので部隊を分けて、1チームを紹介隊にして光っていたところの下調べに向かわせます。
本格的な調査は念のために夜暗闇に紛れて敵対的な存在がないかを完全に確認してからにします。今は下準備、夜戦装備の点検、夜食の準備とそれなりに忙しい。
「戻りました。周囲に敵影は見当たりません」
「ご苦労様です。装備の点検をした後に野営の手伝いをお願いします」
報告を聞きながら、最短で指示を出す。一応副艦長なので
「了解しました」
「下見部隊帰還しました」
目的地の偵察のために出したクロトリの二人が帰ってきました。片方が下見部隊と自称しましたがネーミングセンスはないと思っています。
「お疲れ様です。どうでしたか?」
「なんかやばかった」
やばかったではわかりません。もっと具体的に
「厳密には砂丘を挟んで反対側まで近づいたのですが、目的地付近から異常な熱を感じ、砂丘の向こうの温度を計測したらまさかの1000度オーバー、覗いたら失明どころじゃないと思い、砂丘の向こうを見ずに報告のために帰還しました」
「……なるほど」
1000度オーバー、流石に艦長達に鍛えられた私たちでも無理な温度ですね。
「では個所の観測をして温度の変化を記録してください」
時間によって温度に変化があれば低い時間を狙って調査をすることができます。もし温度が変わらなければ高温用装備を取りに一旦信濃に戻らなければいけません。
現在の装備は日光や紫外線を防ぐための装備しかありません。艦長ならそう判断するはずです。
私の指示のもとに動き出した部隊員を見送った後にキャンプの設営に集中します。この後すぐに撤退するにしてもこのまま数日滞在するにしても活動拠点は必要です。そのためのキャンプ地を設営しているのですが、同時に周辺の調査と見回りも行っているので圧倒的に人手が足りません。
艦長ならもっと上手く配置できたでしょう。
自分の力不足を感じながらも手を止めずに作業を続けます。
そして2日後の夜
「これより、目的地の本格的な調査を開始します」
ランタンの明かりに照らされている皆さんを見まわします。
到着してから目的地を観察した結果、日中は1000度を超えていても夜の間は周りと変わらない気温に変化していることがわかりましたので、夜の間に調査を完了させます。
もちろん武装して
「目的はこの世界が異世界かどうかであること、怪しいと思ったことや物は報告と回収を忘れずに、また目的地に何があるかわかりません十分な警戒を怠らずにこれ以上の離脱者は許しません」
「「了解」」
「では行動開始」
キャンプ地に最低限の人員を残して目的地へ出発します。
もし、何かあっても救援用の狼煙を上げることはできます。
ここは砂漠なので上を見上げれば遮るものもない満天の星空が広がり、月明かりがライトの光を必要としない程に地面を照らしています。
「私達の知ってる星空って地上の明かりに星の明かりが負けてしまってますからね。この世界に排気ガスも地上の明かりも私達の世界とは比べ物にならない程小さいからこそ見える景色ですね。出来るならスクショしたいです」
「そうなんですね」
梵天丸さんが見上げて呟く言葉は私にはわからないものがあります。それでも、どこかうらやましそうに眺めているということは、梵天丸さんは普段見れなかったんですね。
……でも、このくらいの空なら毎日見てましたような?
見れば砂丘の向こう側が光っているのが見えます。もう少しで目的地ですね。腰をかがめて砂丘を上り、頂上付近でうつ伏せになり、這って向こう側を恐る恐る覗き込みます。
幻想的でした。見渡す限り透明な大地、クリスタルなのかガラスなのか分からないが透明な物体が地面を構成して月明かりと星明りを反射させてキラキラ光っています。
奥にはピラミッドらしき影が見えますが光が強くて見えません。
「光強すぎませんか?ほとんど何も見えません」
「多分地面の中もガラス化して遊園地の鏡迷路みたいな状態になっているのかと」
「その月明かりをほぼ無限に反射?」
「そしてため込んだ光が放出されてこの明るさになっているのだと思います」
「?」
夜でこれなら日が出ている昼はどうなるのか、簡単話、先の偵察の時はこれの太陽光バージョンを観測したということですね。本当に危なかったです。
「チームの役割は説明した通り、チームαが艦長達調査隊、βが撤退準備、γが周囲警戒をお願いします。この周囲に敵性反応はありませんがくれぐれも油断しないように」
砂丘を超えて再びガラスの園を見る。日が雲で隠されていてもまだ明るいと思えるほどの輝きを放つ園には不自然なほどに傷一つありません。
「呆けてる暇ありませんよ。敵影ナシ、ゴーゴー」
梵天丸さんの言葉で全員が駆け足で一面のガラスの中に駆け込みます。
踏んでみてわかりますが、これは複数のガラスでは無く超巨大な一つのガラスのみで形成されています。
しかも、何か少し暖かい?先も言ったようにガラスに傷のような物も見えません。先日の砂嵐は装備品の双眼鏡をすりガラスにしたほどに強かった。なのに、ここのガラスは傷がない。
堅いのでしょうか?そう思い腰に差している光線銃の底でガンガンと叩いてみたが普通に傷が付きました。強度としては普通のガラスです。じゃあいったいなぜ?もっとよく見たいところだが、まずはピラミッドっぽかった物を見なくては
「………これどう思います?」
梵天丸さんの指さすそれはピラミッドと言っていいのか分かりません。少なくとも私の知っているピラミッドとは少し姿が違います。
私の知っているピラミッドはマップ上にあった。綺麗な三角錐の石製の建物です。
目の前の建造物は石で作られていると思います。多分三角錐であったと思われる。きっと大きかったのだろうと推測できます。
今は半分解けているような状態でガラスがかぶっているように見えます。。
「ピラミッドと言えばピラミッドのような……一体何があったんでしょうか?」
「多分このガラスが原因ですね」
「昼間のここは太陽光が乱反射して作られる。いわば天然の窯のような状態です」
日中は太陽光で際限なく温度が上がり砂やガラスそのものが融解、夜には冷えて固まる。それが長い間繰り返されることで地盤すらもガラス化しピラミッドを飲み込む。先の傷一つなかったガラスの状態も傷が付いたが次の日には溶けて無かったことになったというのが正しい様です。
「そんなことが可能なんですか?」
信濃の全火力を用いてもこの状況を作り出すのは不可能そうですが
「到底無理です。しかし、リギースでの技術レベルからしてこの大きさのガラスを用意すること自体が不可能なので、自然に元からあったと考えるしかないんですよ。とはいっても何でこんなところにでっかいガラスがあるのか、ここで何があったのか。今では皆目見当もつかないので、一旦情報を信濃に持ち帰って解析する必要があります」
「ですね」
「既にサンプルと映像は取っている最中なので後はここで気が付いた事を記録していくだけですね」
「……」
結果的にピラミッドらしきものは見つけましたが、梵天丸さんがいっている三大ピラミッドというものなのか、はたまた偶々同じ形をしているオブジェなのかよく分かりません。
「未来か、過去か、の話でしたら未来だと思います。私達の知っているピラミッドガラスに埋もれてませんし。ただ、未来なら未来であのピラミッドが何でこんなことになっているのか……それを考えるよりここは異世界だと仮定した方が『まぁ異世界だしそう言うのもあるよね』で済ませられるんですよね。現状過去の世界では無いのは確かです」
「元の世界なら近くにカイロの町もあったはずなんですけどものの見事に一面ガラスなので既に無くなったか埋もれたか、異世界なので元々無かったとも考えられます」
「結局異世界で何でも説明出来ちゃいますからね。ただロボットは謎です。明らかにこの世界から見て浮いています。そして――――」
「副艦長、周辺のサンプルの採取、および記録映像の撮影終わりました」
一人推理の世界に入りかけていた梵天丸さんを遮るようにクロトリの子が報告してくれます。
「了解しました。日が出る前に撤収します。いいですよね?梵天丸さん」
「……大丈夫です」
「では撤収!」
私の号令に答えるように全員が駆け足でキャンプ地に戻ります。




