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想い

 私の判断に間違いはなかったと思います。艦長の腕では不安定な足場であの影を全部撃ち抜くことは難しい。だからこそ、もし、撃ち漏らしがあればサポートできるようにスポッターになりました。そしてその予想は当たって最後の一体は私が倒しました。予想外名だったのは砂嵐が思ったより激しくゴーグル越しでは撃てず外す必要があったことでした。


 砂嵐は発生直後だったのか10分ほどで抜けましたが、砂の入った目は痛くダメだとわかっても目をこすってしまいます。


 はぁという艦長のため息が聞こえます。無断で勝手に撃ったことに怒っているのでしょうか?

それともスポッターとしての役割を放棄したことでしょうか?


「とりあえず船内に、まずがごみを……」


 そこまで言った艦長の言葉は聞こえず代わりに私を横に突き飛ばしました。

私は艦長をそこまで怒らせてしまったのでしょうか。


 いやだ。きらいにならないで。


 思わず出てきたこの気持ちを理解する前に謝罪しようと目を開けると

そこにあったのは腕を噛まれて水中に引きずられようとしている艦長と、艦長の腕を噛み水中に引きずり込もうとしているワニ?でした。


 だめ


 思考するよりも先に体が動く。素早く起き上がり、最短の距離を最速で駆ける。ほとんど倒れているけどこの距離なら間に合う。そう考えて私は腕を伸ばす、艦長も私に向かって手を伸ばす。けれど、私の体は答えない。思い出したかのような目の痛みが私の手を一瞬止める。一瞬だけどその一瞬は致命的でした。


 私と艦長の手は届かず、艦長は水面に落ちていきました。


「…………艦長?」


艦長が落ちた水面を覗いて声を掛けます。ですが、返事はなく。不気味なほどに静かでした。


「……あ」


 そう呟いた私の目から涙がこぼれます。それは今も続いている目の痛みではなく。私の大事で大切な人を失ったからと理解したから、でも認めたくない


「いやだ」


 もう目の痛み気にならない。フラフラと立ち上がって進む。艦長を助けないと。そう考えておぼつかない足取りで歩きだそうとした私の腕を誰かが掴みました。


「駄目ですよ。スーシアさん」

「梵天丸さん」


 私の腕を掴んだのはワニでなく、梵天丸さんでした。


「はなしてください。艦長をたすけないと」

「駄目です。この状況でスーシアさんも失うわけにはいきません」


 振りほどこうとしますが、梵天丸さんは両腕で掴んでいるので振りほどけません。というより思ったより体に力が入りません。

そのままズルズルと船内に入れられます。そのまま船内の椅子に座らされて、水が入ったコップを目の前に置かれます。

こんなことをしている場合じゃない。助けないと。

席を立とうとする私を梵天丸さんが肩を抑えます。


「やめて、ください」

「スーシアさんのしようとしていることはわかります」

「なら、邪魔を」

「どうやって助けるつもりですか?銃はほとんど使い物になりません。残っている無事な銃もワニに無駄打ちできるほど余裕があるわけでもありません」

「私が直接」

「いくらスーシアさんが強くても、水中でワニに勝てるとは思いません」

「でも何もしないよりは」

「何もしないよりは……その考えは理解できますが、何もしないより無駄な行動をする方がよほどマシではありません。もう一度言います艦長を助けられる確証がない限りは行かせません」


 そう言われて思わず、梵天丸さんの胸倉をつかみます。


「何で……何でそんなに冷静なんですか?!」

「……」


 揺さぶっても答えない梵天丸さんを見て思わず腕に力が入る。

「私は目の前で失ったんです!!大切な大事な私の艦長を!!私のせいで!!」


 力がうまく入らなくなって手を離しへたり込む。

 

「そう、私のせいなんです!私が……!余計なことをしたから……艦長は私を庇って……私が……私が…」


 私がゴーグルを外さなければ、余計なことをしなければ、艦長は……艦長は……


「余計ではありません。スーシアさんのアシストがなければこの船は沈んでいました。それで冷静?ハハ、冷静であろうとしているだけですよ」


 そういう梵天丸さんの手は血が出そうなほどに握り込まれています。


「『椅子の人であるしかいないなら、いかなる状況でも冷静であれ』そう言われ続けて、そう教えられ続けました。だからこんなことになっても思考を止めることはありません」

「……」

「大切な人が死んだ。それに悲しんでも構いません、当たり前です。でも、その死を無駄にしてはいけない。春雷さんはあなたを庇った。それの命捨てようとするのは許さない。絶対に、わかりますね?」

「……」

 少しの葛藤の後に首を縦に振ると、梵天丸さんが何かを差し出します。砂にまみれたそれは艦長の帽子でした。


「艦長がいなくなった場合、部隊の指揮権は副艦長のスーシアさんに移ります。スーシアさん、部隊としての目的は?」

「……仮称ピラミッドが存在するかの調査です」

「ならば先に優先するべきことはわかっていますね」

「……」


 感情は今も変わらない。でも、やらなくてはいけない事がまだ終わっていない。

艦長なら進む。

なら、私も続かなくては。

ふと、床を見ると艦長が脱ぎ捨てた艦長服が置かれている。私は席を立って服を羽織る。サイズが合ってないのでブカブカですが、それでも


「調査を続行するためにクロトリと合流します。梵天丸さん舵を上流に」

「了解しました」


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