砂塵の中の攻防
少し長めです。
「……よし」
大体わかった。多分、斜め読みだったから自信ないけど
「本当に大丈夫ですか?」
こちらをチラチラ見ながらも梵天丸さんは巧みなかじ取りで敵の攻撃をかわしている。正直、この体じゃなかったら船酔いでリバースしてたのかもしれない。
「頑張るしかありません」
「……本当に気を付けて」
「艦長、間もなく砂嵐に突入します。準備を」
「わかった」
梵天丸さんに無言でサムズアップしてから船の外へ出る。
船内から一歩外に出ると照り付ける太陽が体を白く照らす。ちゃんと肉がついてたら汗が出そうな日差しだ。そしてそれを遮りそうなほどに大きな砂嵐が見える。というかもうほとんど隠している。風も強くなっているので帽子が飛ばされそうになるのを慌てて抑える。
何だったら上着がバサバサして鬱陶しいので脱ぎ捨てて船内に放り投げておく。あれか、骨だから中身に風が入り込むのか。面倒な体だ。
ちなみにスーシアの服は男性用の軍服を着ているのでスカートでバサバサとはためくこともない。個人的な趣味だったが役にたつとは。
……いや、そんなこと考えてる場合じゃない。
まだ説明書の内容を覚えているうちにと早速作業に取り付け作業に取り掛かかる
「スコープとの同期完了、こちらの作業は完了しました」
「えっと最後にリングにネジを締めて……こっちも完了だ」
丁度作業が終わった直後に視界が悪くなる。砂嵐に入ったようだ。危なかった。
……ってアッツ!!飛んでくる砂が熱い!!息苦しさとか眼孔に砂が入る痛みはないが砂が骨に当たるとすごい熱い。なるほど存在してない器官は外からの刺激はないが、骨に痛覚は通っていると……わけわからない体だ。
取り合えず、目が痛くならないのならヨシ!めちゃ熱いけど!!
「作戦開始」
「了解しました艦長」
そういうと手元にあるナースコールみたいなボタンを一回押す。これは砂嵐の中では船内にいる梵天丸さんに意思疎通ができなからと準備していたもので押している間船内にブザー音が鳴るボタンだ。今回は短く押したことで作戦開始、つまり旋回して欲しいと伝えたのだ。
瞬間船が大きく傾きドリフトに近い形で船体を180度回転させる。競艇みたいだ。スピードを殺さないように最高速度を維持したままスピードなのでとんでもない遠心力が来る。飛ばされないように片手で船の淵を掴み、もう片方の手でスーシアの襟を掴む。ゲーム時代のステータスだけは反映されているので身を投げ出されないように踏ん張るのはスーシアも簡単だけど一応念のために支える。
水上ドリフトが終わったのを確認してから手を離す。一瞬スーシアがこちらを見ていたがタオルとゴーグルで顔が完全に隠れているのでどんな表情をしているのかわからなかった。
「……システム起動、スコープの照準同期します」
有線の通信機から聞こえる声から多分少し怒ってるっぽいかな?後で謝らないと
そんな考えを片隅に置いてスコープ覗く。赤外線カメラ機能とか色々機能があるけどそれでも微妙にそれっぽいのが見えるだけで撃っても当てられる自身が全くない。俺一人なら無理だ。
「速度、角度、測定完了。風速は……ビームなので除外……と、艦長照準を15度上げてください」
「あ、はい」
言われたとおりに銃口を上げる。……15度ってこんくらいかな?
あとはスーシアの合図に合わせて引き金を引くだけ
撃つ姿勢を維持したまま合図を待っていると、スコープ越しになんとなく影が見えてきた。動いてないな、ビームの明かりも見えない。流石に砂嵐を動きたくないのか。
俺も出来るなら動きたくなかった。砂が当たって熱いし痛いし……
「艦長今です」
だからこそ、この一撃は外せない。引き金を引く。明らかに出てはいけない音を出しながら銃口から青白い光が一直線に飛び出し、影に直撃した。
「よし!」
「まだ別の個体があります準備を!!」
スーシアに怒られた。予想通り銃口の周りにガラスっぽいのがくっついている。この状態からしてシリンダー内も同じような状態になっていると予想できる。無理して二発目を撃とうとして暴発する可能性があるので、スコープを外してから捨てる。
足元のトランクケースから次の銃を取り出してスコープを取り付ける。今ので1つ消える、確認できる影は残り6つ。
今のところ、動く気配はなしビームを使うと銃がダメになるのは向こうも同じことということか、こちらとしては願ったり叶ったりの状況今のうちに数を減らさせてもらう。
次の射撃準備が完了と同時に構える。今すぐ撃ちたい気持ちを抑えて気分だけでも深呼吸する。
「艦長、銃口を5度下げて、偏差を含めると、もう2センチ右に向けて撃ってください」
スーシアからの指示を半ばやけくそに近い形で答えて引き金を引く。細かい数字の調整をすぐできるか!!
そんな俺の思いとは裏腹に銃口から出た光は一直線に影を貫いた。
「流石です艦長、このまま……」
フラグに聞こえたスーシアの言葉は言い切る前に回収された。動かなかった影が先ほどまで見えていた光を放ちながら動き出したのだ。
「まじか」
しかも、さっきまでの攻撃よりも強力に光っているように見える。一発分に全力をぶつけてくる気か。
「スーシア、梵天丸さんに回避しろって合図を出せる?」
「それを梵天丸さんと決める時間がありませんでした」
ですよねー
「とはいえ、この砂嵐でも流石にあの光を見逃すはずは無いので避けると思います」
そういながらスーシアは俺の腰に抱き着いた。
「え、どうしたの?」
「艦長、回避中でも影の数は減らした方がいいと思うんですよ」
「うん」
「回避中の船は揺れます。なので私と艦長がふらつかないようにと思いまして」
「なるほど?」
あまり深く考えないようにしよう。ありがとうスーシア。
改めて銃を構える。この状況で優先するのは発射直前のやつ、一発撃ってしまえば撃てなくなるのでビームを相殺、もしくは壊す。
幸いこの砂嵐でもビームの光はよく見える。スーシアのアシストは、今は必要ない。狙いを定めて引き金を引く。
一番光っていた奴が派手に爆発したが次の準備が整う前に他の影の光が大きくなる。
「クソッ」
スコープを付けている時間はない。半ばやけくそに定めて銃を構えて引き金を引く。
照準もまともに定められていないので本当に当たるか不安なのだが、運がいいのか日頃コツコツと訓練を続けていた成果なのか、放たれたビームは同時に向こうからは跳んできたビームの一発にぶつかった。
まじで?
当たったことへの驚きと喜びが入り混じっているが余韻に浸る間もなく、残ったビームが飛んでくる。
その数4本、……うん、無理!!
「……流石にこの砂嵐でも光は見えますよ」
瞬間、足元、いや船が大きく揺れて回避行動をとり始めた。思わず銃を放り投げて船の縁を掴んだ。梵天丸さんビーム見えてるのか。回避行動をとったことで照準がずれて船の周囲に水柱が上がる。
ヒェッ、帽子カスッて脱げた。
でもこれなら何とかなりそう。先も言ったように敵さんのビームは一発で砲身に砂、熱で変形したがガラスがついて使い物にならないどころか撃っている最中に爆発している。でこれで、相手は全滅、俺たちの耐久勝ち。
そう思っていた。
敵が爆発した後からあるはずのない光が見えた。あれは俺がやけくそで相殺したビームを撃ってきたやつ。
考えればおかしかったのだ。敵のビームが俺の銃程度で相殺できるなどあのビームの太さからは考えられない。自壊を前提としているからこその威力を落とした2連射、俺の銃だと威力調整はすぐできないからこそ考えていなかった。
マジでやばい。またくらえ!!やけくそ、銃撃!!!
……うん、まぐれは連続で続かないよな。ふざけんな!!こんなところで死んでたまるか!!!
船は回避行動を終えて若干失速気味で船の脇腹をさらしている状態。いくら俺でも向こうの状況なら外しはしない。今からホルスターから予備の銃を取り出そうにも今スーシアが密着してるから抜けない。
と思ったが腰にあった重さが無くなった。
これで、撃てると腰のホルスターから取り出したが、それよりも早く俺の後ろから閃光が飛んでいき、発射直前で光り輝いていた影を撃ち抜いた。
撃ち抜かれた影が崩れ落ちたことでこちらを狙っている光は完全になくなった。
時間にして10分も立っていないとは思うがとても長い戦いに感じた。そこから数分で砂嵐は抜けていった。規模が小さかったのか、どちらにしてもあの規模くらいなら逃げようとしても、すぐに追いつかれていた可能性が高い。結果論になるが倒しに行く判断をしたのはよかった。
上を見て気分だけでも軽く深呼吸してから振り返る。
そこにはゴーグルを外して目元を一生懸命こすっているスーシアがいた。足元には赤熱した物体が付いた銃が転がっている。なんとなく予想はできていたが、撃ったのか、でも何でゴーグルを外してるんだ?
「どうしたの?」
「ゴーグル越しだと見えにくかったので……外しまして」
目に砂が入る前に撃ってしまえばいいと、なるほど小さくため息をつく。俺の練度不足か、もう少し銃を撃つ練習をしとけばスーシアに無理をさせずに済んだのに……。
反省すべきことは山ほどあるが、まずはスーシアを船内に入れよう。目にゴミが入った時にこするのはダメだから船内の水で洗浄させないと。
「とりあえず船内に、まずがごみを……」
そこまで言ったところで、スーシアの背後から大きな口が飛び出してきた。
評価、ブックマークありがとうございます。
ポイントが自己ベスト更新したのでにやにやが止まりませんでした。これからもよろしくお願いします。




