移動
今月忙しめなので今月は1話だけの更新です。
ブックマーク、評価感謝感謝です
河口からピラミッドあるかもしれない場所まで大体半日を予定している。予定なのは全員ピラミッドの場所どころかカイロの正確な位置がわからないからだ。ゲームみたくわかりやすくでかいピラミッドが立っているわけでもスマホのマップにピンを立てるわけでもない。唯一ナイル川から見えるかもしれないという誰かの証言を基に移動している。一応見つからなくてももう一つ確かめられる場所があると梵天丸さんが言っていた。どうやら、ナイル川の奥にもう一つ世界遺産があるそうで、ある意味こっちの方がわかりやすいそうだ。
とはいえ移動している間は暇だ。周囲は漆捌さんの子たちが警戒しているので俺の出る幕はない。あまりの暇さに水面を何気なくのぞき込んでいたら梵天丸さんに怒られた。もしここがナイル川ならワニがいる可能性があるそうだ。流石にワニはいないだろうと思っていたが岸辺を見るといた。口を開けてた。
俺に肉はないが万が一水中に引き込まれたらローリングされてただじゃすまなそうだ。
……あれ?ワニって獲物を水中に引きずり込むときジャンプするよな?
今、クロトリの子たちは機動性重視の少し大きい水上バイクに乗っているので体がほぼむき出しの状態だ。この状態危険では?急に思い浮かんだ光景に思わずゾクリと身震いする。冷汗は出ないけど。
流石に俺の不注意で死ぬのはごめんだと梵天丸さんに速度を上げるようにお願いする。
少し燃料消費が激しくなるけどそこは誤差の範囲内、一応スター号には予備の燃料も積んであるので問題なし、ちなみに魔水は割と便利で俺たちの携帯銃のエネルギーにもなるし、対応している船の燃料にもなる。いざとなれば銃から移し替えれば船は動かせる。まぁ、銃からの量なんて雀の涙くらいだから動かせたとしても1隻が限界だろう。
しかも、スリップダメージの表現なのか、ここで魔水を浴びると肌や肉組織が爛れて骨だけになるようだ。一回釣った魚で実験済みだ。正直、あの光景を見た後だと使いたくない気持ちが少しあるが、魔水の発生源である聖杯を停止させると信濃が動かなくなるので止めるに止められない。
農作物の成長促進に信濃の装甲強化、主砲のメインエネルギー、信濃艦内の空間歪曲等々使用用途が多すぎて一辺に止めると信濃が海に浮かぶだけの鉄くずになってしまう。
皆の命が大事ではあるが、生きられなきゃ意味がないので少し魔水の取り扱いを厳重にしている。流石にスーシアに魔水がかかった姿は見たくない。
結構脱線した。
現状燃料に関しては問題ない、食料に関しても信濃の食堂に比べれば味気ないが十分な量が積まれている。不安はピラミッドが見つかるかと原住民くらいだ。……後ワニ
とはいえ、今はワニに追いつかれないくらいの速度でナイル川?を逆走中なので大丈夫だと思いたい。
ピラミッドは……まぁ、見つからなければ帰るだけだし、一番の問題は
「8時方向に土煙を確認、こちらに近づいてきます」
そこまで考えたときにスーシアからの報告が耳に入る。首下げていた双眼鏡で覗くと確かに土煙を上げて何かが近づいている。
「合わなければとも思いましたが出てきたみたいですね」
「……戦闘準備、スーシア」
「了解しました艦長」
スーシアが手旗を綺麗に振るとクロトリ全員が一斉に武器を構える。
クロトリ部隊は一つのバイクに二人乗りで騎乗して、一人が操縦と艦首機関銃を、もう一人がバイクに備え付けられている。武器を使う。今回はアサルトライフル(魔水式)だけだ。本当はもう少し武装できるのだけど、梵天丸さんの要望で観測及び調査用の機材を分けて積んでいるからスペースがなかった。一応、俺も含めて全員が携行の小型拳銃を持ってはいるが普通にアサルトライフルの方が使い勝手がいい。
次第に近づいてくる一団、そしてあることに気が付く、俺たちが乗っているのは仮にもエンジン付きの船で速度は45ノット大体時速83キロ、馬が大体80キロ出せるがそこまで持久があるわけでもない。なのに土煙の一団は速度を落とすわけでも距離が離されるわけでもなく近づいてきている。それに
「何か変な音しません?ブロロロって、まるでバイクでも吹かしているかのような」
そう、明らかに生き物の音ではない俺たちが元の世界の道路でよく聞く音が聞こえるのだ。
「そうですね。てっきりラクダで来てるのかとも思っていましたが、早いですね。あれ絶対生き物じゃないですね」
「もしかして自分らと同じ転移者?」
そうであるのなら話し合いの余地はあるかもしれない。
「かもしれません。けど地上であんなスピードを出す乗り物ってゲームに実装されていなかったはずですよ」
ゲームでは基本海の上が活動範囲であり地上波あくまでおまけ程度、あっても馬車ぐらいだった。
「新しく開発したとか?」
「ここにきて半年弱でそんなもの作れるとかチートもいいところですよ」
実際俺たちは何か作れるわけでもない。調べ物ができるスマホとかがあれば話は別だが、信濃のデータにアクセスしてもバイクの作り方は載っていない。
丸暗記しているのなら問題ないが次は部品をどこで手に入れたのかという話になる。音をよく聞けば何重にも重なって聞こえる。つまり複数台作られていると予想できる。そんな量産できる設備を1から半年で作れるかと言われると無理っぽい気がする。
でも実際にこっちに近づいているから作れてるんだろうなぁ……
そう思って双眼鏡で土煙を眺めていると、土煙の中から赤く光る何かが見えた。なんか見たことあるなと思った瞬間赤い光が線となりこちらめがけて飛んできた。
ビームだった。幸いにしてビームはスター号にもクロトリの誰かに直撃することもなく大きな水しぶきをあげて水面に着弾した。
着弾の波に揺られて船体が大きく揺れる。
「話し合いの余地なしかよ!!」
文句を言っている間も次々とビームが飛んでくる。幸い川幅の広さと船の小ささから直撃はなくあっても至近弾くらいなもので脱落者はいない。とはいえ、こっちの武装は射程圏外だし、俺の持っている銃なら届くが俺自身の腕がへたくそすぎて当たらない。というか狙いが定まらない。揺れている船の上で米粒みたいな目標にスコープなしで当てろとか碌に射撃訓練をしていなかった俺には無理な話だ。
……帰ったら練習しよう。
というか、またビーム?!ビームのバーゲンセールかよ。
「春雷さんどうします?今はまだ遠いので当たっていませんけど、このまま近づかれるといずれ当たりますよ。あのビーム」
そういっている間にも至近弾が増えてきている。
「梵天丸さん最大速度で一旦引き離します」
「いや、最速はずっとは無理ですよ。いずれは速度を落とさないといけないので結局追いつかれることになります」
「わかってます」
エンジンだってずっと回していれば燃料消費が激しいし、いつかオーバーヒートを起こす可能性がある。とはいえ、水上バイクに乗っているだけのクロトリの子たちをいつまでも的にさせるわけにもいかない。これが海上だったら機動性で何とかなったのに川幅があるせいで思うように動かせない。であるならば出来るだけ距離を引き離して相手が諦めるのを祈るしか方法がない。
流石にある程度距離を離せば相手も諦める
……そう思っていた時期も俺にはありました。




