艦内見学説明会
「え、働きたい……ですか?」
『はい』
ある日の昼下がり、皆が昼食のために離席している中一人艦橋に残って作業しているとスーシアがミアさんを連れて入ってきた。
俺達がウリアから出航して数日、結構色々あってミアさんの事を後回しにしていた。
それまでの世話はスーシアに頼んでいた。偶に世間話もかねてスーシアに話題を振っていたが問題は無かった。おばあさんもイユさんのマッサージの甲斐あって普通に歩けるくらいにはなった。結構快適な生活を送っていたようだけど急にどうしたのだろうか?
スーシアに詳しい話を聞く
「―――つまり、お世話になると決めたはいいけど、客としてではなく、一乗組員として働かさせてほしい……っと」
俺の言葉にミアさんが頷く。信濃に来てからスーシアと定期的に言語の勉強をしているらしく、まだ話せはしないが聞くことは出来るようになっている。
うん、わかる。
皆が忙しい中一人何もしないと罪悪感が湧くやつだ。俺も経験ある。
とはいえ、ミアさんに会う仕事か、……全然思いつかん。
俺が働いてたの人事部じゃないし、少し適正を見るためにも艦内の仕事を見学させた方がよさそうかな?他の人に任せるのも何だし俺がやろう。どうせ戦闘が無いと暇だし。
「なるほど、分かりました。とりあえず、これから信濃での仕事を実際に案内するのでそこでミアさんにあった仕事を選びましょう。スーシア、悪いけど」
「こんなこともあろうかと各所に連絡は済んでいます。私もミアさんのサポートとしてついていきます」
スーシアまじ有能
「……んで最初はここと」
「まぁ、いいんじゃない?ミアさんも一番慣れてるところだろうし、では改めてようこそ医務室へ。主治医のドライです」
そう言う訳で突如始まった。職場見学会、最初はミアさんもお世話になった医務室。
「ナイスチューミーチュー看護用ドールのイユです」
「ここ医務課の主な仕事は負傷者の治療、診察、介護になります。現在稼働中のドールはイユさんだけですが、患者が増えた際には各所に収納されている看護用ロボットが起動します」
「人間がやるとどうしてもミスが起きやすい。最終的な判断や指示、許可を俺が出してイユ達が行動する。実に効率的だろう」
本当のことを言うとドライは医師免許を持っていないので応急手当以上のことをイユ達に丸投げしているのである。とんだ闇医者だ。ゲームでは問題なかったが、ここに来た時にどうするかと話の議題に上がったこともあった。結果としてこのメンバーの中に誰も医療従事者がいなかったこと、本人はともかくイユさん達の診断は正確であることから、一応まだ医務室の主治医を名乗れている。本人も勉強してるみたいだし頑張って欲しい。
仕事の9割はイユさん任せだけど
『ドライ先生とイユさんにはお世話になっています。ありがとうございます』
「ありがたくもらうけど、お礼ならイユに言って一番頑張ってるから」
お礼合戦が始まりそうな気がするので切り上げる。本当はどんなことをしているかを見せたかったけど今重症の患者は原因不明の体調不良者のみ、何が原因かわからない以上必要以上に人を近づけるわけにはいかない。
さっさと切り上げで次に向かう
「ようこそ戦闘課へ!今回簡単な説明を求められたクロトリ部隊の隊長アッシーマだよ」
「戦闘課、漆捌さんの所です。これは信濃の戦闘時に主砲などの迎撃システムの操作や定期メンテ、クロトリ部隊員、など多岐にわたるので戦闘する時に出番があるとしかいえません。何もない時は待機か訓練、他の部署の荷物運びなどをしています」
ゲーム時代はNPCの入れ替わりが一番激しかった場所だったりする。今は一人も脱落していない。
「そう私達の任務は敵を倒す事、銃を撃って棒で叩いて引き金を引いて、虫を追い返して、戦闘で活躍するところ。それ以外だとまぁ暇だから訓練とか他の子の仕事をちょっと手伝ったりしてるよ」
「辛い事?仲間が死にやすい事だね。戦闘時には文字どうり矢面に立つからどうしても犠牲者がでちゃう。でも戦闘中に止まれば次に死ぬのは私か私を庇う誰か、だから戦闘中はどんなにつらくても前を見てる。それ以外だと特にないかな?多分すぐに泣いちゃう子は向いてないと思うよ」
それだとミアさん一般人だから向いてなさそうな気がする。本人も乗り気じゃなさそうだ。
次
「どうも主計課のマミヤです」
「次に主計課、基本的に信濃内での雑用を行う縁の下の力持ちです。物資の管理、飼育スペースの野菜や牛などの管理、信濃のメンテ、出撃の手伝い。信濃でも最も人が割かれていると言っても過言ではない部署です」
梵天丸さんの管轄の部署だったりする。梵天丸さんは船務課だが主計課にもちょくちょく顔を出している。怒られたりクレームが無いということはうまくやっているのだろう。
「辛い事ですか?……物資の管理がとにかく大変ですね。空間湾曲魔法でスペースがとにかく広いので一々確認するのも大変でそれに動物や野菜は品種改良しているとはいえ生ものなのでどうしても予定外な出来事が起きやすいですね。物資の数え間違えと牛のお産がバッティングした時なんて……フフフ、つらい。船務課の人達には頭が上がりません。人員随時募集中よろしければ……え、まだ読み書きの書きが出来てない?あ、ふーん」
戦力外だそうだ。
「次は航海課、レーダーなどの計測機器を用いて目的地までの航海ルートの算出、天候予測等船が出来るだけ安全に航海できるようにしている部署です。トップのシャーロックさんは船の操舵を行っています」
「因みにここで出た気象情報を主計課に渡して洗濯物を天日干しする日を決めてもらったりしてるんだ。乾燥機もいいけどやっぱり日光で乾かした方が気持ちいいからね。」
わかる。雨の日に室内乾燥するより、外に干した方が良い匂いがするもんな。
「辛い事?航路変更が偶にあるけどそこからの修正プランや具体的にどれくらいの誤差が出るのとか考える事かな。戦闘とかになると位置が滅茶苦茶になるから現在位置の把握が大事になってくるんだ。この海GPSがないからね」
「コバンザメ、信濃底部に接続している小型潜航艇です。基本的には海底の調査や生態調査、海底の物資の回収やら信濃ではやりにくい細々した船外活動等を担当しています」
「基本的に海の中を見ながら一日を過ごすからな最初は珍しいと思いますがそのうち飽きる。仕事はコバンザメから潜水服を着て海底探査したり、船務長様の依頼で地引網したりと色々ですね色々。辛い事?海底に沈んだ船を調査していたら魚がつついてる腐乱死体を見つけたりすることですかね。戦闘時一番危険なのが戦闘課なら、何もない時に一番危険なのがうちらじゃないですかね」
「機関室、この信濃で一番重要なエンジンである聖杯機関に関わる人達が働いています。聖杯から出てくるエネルギーは無限にして無尽蔵ですが、エネルギーそのものである魔水は汚染物質以上の有害物質の塊、人間にとってはとんでもなく危険な代物で、取り扱いを間違えれば機関室は全滅しかねない代物です。本来は聖杯の水、魔水対策として防護服の着用を推奨しているのですが……まぁ、はい」
見ればわかる。誰も付けていないのだ。面が汗で曇る、手元の細かい作業が出来ない、ただささえ暑いのに熱がこもる防護服をずっと着れるわけないだろうが!!という意見が多数寄せられ、戦闘時を除いて義務化はなくした。多分戦闘中も脱いでる。確認できないけど
一応防護服のアップグレードは続けているけど、まだメリットよりもデメリットの方が多いみたいで着てくれない。かなしい
「常時キツイからな。倒れてもらうと困るから水分補給だけはしっかりしてもらうぜ。あと髪が長いと引っ掛かるから短くしてもらうくらいか、仕事は現場職な都合上オヤ……姉さん以外は現場からたたき上げだ。最初は荷物運びと手伝いくらいだが、慣れてくれば内部構造の説明やら覚えることが沢山あるぜ」
どこも流れは同じだ。話を聞いて見学させてもらって終わる。体験とか仕事の邪魔にしかならないので雰囲気だけ感じてもらう。
その他細々とした場所を見学した後に食堂に集まる。艦長室地味に遠いからね。
「それで一通り見学は終わりましたが、良さそうなところはありましたか?」
俺の隣にスーシアが座りお茶を優雅にすすっている。対面にはミアさんがメモを見ながら悩んでいる。
俺は飲めないし食べれないので黙って見守っている。気分は面接官
『……決めました。機関室』
「わか……え?機関室ですか?」
スーシアが驚いた顔でミアさんを見る。俺もびっくりしている。主計課か船務課に行くと思っていたから驚きだ。
「一応理由を聞いてもいいですか」
『落ち着くんです』
「おちつく?」
怒号が響き渡り、隣に超危険物質があるあの場所が落ち着くのか?わからない。わからないがそういう人もいるだろう。
『はい、まるで家にいるような、私が元々あそこにいるのが当然のような……そんな気がするんです』
スーシアの方を見ると目が合った。とりあえず頷いておく
「わかりました。手配しときます」
お願いします。
こうしてミアさんは機関室で働くことになった。途中黒雪さんが、私の楽園に女を入れるなぁぁぁぁ!!と暴れたけど全員で抑えて説得した。今のところは大丈夫そうだ。




