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仮説と証明方法

評価ありがとうございます!!

「だから私達に何の連絡もせずに勝手に出航したんですか」

「……はい、本当に申し訳ございませんでした」


 信濃が元の場所に戻って数十分後、置いて行かれたと思った梵天丸さんが修羅のごとき勢いで戻って来て何が起きたのか聞いてきた。その余りの勢いに俺は思わず正座をした状態のまま受け答えしている。

「緊急事態でしたし、それに梵天丸さん達に連絡を取る手段が思いつかなかったので」

実際、結構あたふたしていてそれどころではなかった所もあるけどあの時は完全に頭から抜け落ちていた。


「手旗信号出すように指示すればいいじゃないですか、なんだったら船外アナウンスもありますし手段は結構あると思うんですが?」

「あ」


言われてみればそうだ。あとモールス信号を船のライトで使えば、梵天丸さんの子が気が付いたのかもしれない。


「完全に忘れてました」

「……とにかく次からは何か連絡してください。本当にビックリしたんですよ。クーデターでも起きたのかと思いました」

「はい……本当に申し訳ないです」


 穴があったら入りたい。貝になりたい


「ほら立ってください。膝が汚れてますし何より他の人達が見ていますから」


 もう一度謝りながら立ち上がる。ここにはスーシアを含め何人かいる。仮にもこの船のトップが土下座したとか梵天丸さん達は気にしないかもしれないが、スーシア達NPCが何するか分からない。


「さて……と、とりあえずこの話はここまでにして、次にこちらの話をさせてもらいます。こっちも聞いて欲しい……重要な話があるので」


 パンパンと手を打って空気を切り替えた。全員黙って俺から梵天丸さんに視線を移す。


「まず、話の結末を端的に言うと私達は異世界転移していない可能性が浮かんできました」

「「「は?」」」


全員が息を揃えて間の抜けた声を出す。

異世界転移していない?


「いやいや、この状況はどうみたって異世界転移だろ?ラノベで呼んだぞ。ゲームのキャラが異世界に転移する奴、この状況どう見たってこれだろ」




「落ち着いてください。説明します」


「まずこれを」


 そう言って梵天丸さんがパネルを操作すると艦橋のパネルの一部がとある画像を表示した。

見覚えがある画像だ。細部は違うかもしれない。しかし大体の形は合っている。何度も見たことがある。俺達の世界にある世界地図だ。ヨーロッパが中央にあるから少し違和感があるが確かに世界地図だ。


「これはあの村の村長がこの世界の地図と言って見せてきた物です。皆さん見覚えがありますよね?」

「……あぁ、見間違えるはずがねぇ。これは俺達の世界の地図だ」

「そうメルカトル図法で書かれている私達の世界の地図。少々細部は異なりますがおおむね私達の知っている世界地図と一致している。そして、それをこの村の村長はこの世界の地図であると言ったんです。この意味がお分かりですね?」

「ま、まだわからねぇじゃねぇか!!偶々大陸の形が同じだけかもしれねぇ!しかもこの地図が本当にこの世界の地図なのか分からないじゃないか!!」

「ええ、なので私は可能性といいました。無論否定材料もあります。まずは時代と技術の不一致です」

「時代と技術の不一致?私達この世界に飛ばされてからそんなに時間たってないけど何でそんなことがわかるの?」

「無論憶測ですが、この世界の技術はあの蒸気船を除くと私達の世界と比べると精々中世ヨーロッパ、大体5世紀から10世紀前後の文化を築いています。そんな時代の地図がこんなに正確に大陸を描けるわけがありません。適当に描いて偶々私達の知っている世界地図と似ている形になった可能性があります」




「そうなの?私ちょっと社会系の授業苦手で分からないんだけど」

「中世の頃の地図だとアングロサクソン図があります。しかしその地図は東が上にあり当時天動説が主流だったために世界が平面であるものとして描かれ範囲も限定的、地形に関してもそれほど精度の高い物ではありません。というかこの地図が作れるほどでありませんでした」


 多分、わかりやすく話しているのだろうけど、黒雪さんと漆捌さんは全然わかってなさそうだ。俺も分からない。梵天丸さん物知りだなぁ


「へ、へぇつまりこの時代の人にこの地図は作れないと言いたいのね?」

「その通りです。それともう一つ、このしるしが書かれている場所がこの村の場所みたいです。」


 どこから取り出したのか差し棒を手に持った梵天丸さんが地図の一点を指す。

場所はアフリカ大陸の赤道付近よく見れば海岸から少し内陸寄りの所に印のような物が書かれている。

けれど


「おかしいですね。もしそれが村の印なら少し内陸すぎませんか?」

「これだと信濃が陸に上がってないと無理だな」


 シャーロックさんと扶桑さんの言う通りこの地図だと村が内陸すぎる。信濃にタイヤでもついてない限りたどり着けないはず、無論信濃にそんなバイクみたいな機能はついてない。


「ええ、私も疑問に思ったので先ほどうちの子に現在位置をこの村に合わせた信濃の航海情報をこの地図に反映するように指示をしたんです。そしたら」


 画面が切り替わり、先ほどの地図に何本かの線が追加される。この線が信濃の航路という訳か

この地図が正しければリギースの位置にイギリスが存在している。

だが確かにいくつかおかしいところが見える。


「大まかには合っているっぽいがやはりおかしい」

「そうね。リギースの位置がイギリスに近いけど、やっぱり丘に上がってないと無理な場所があるわね」

「やっぱり、異世界なんじゃねぇか?」


 大体の意見が否定的、異世界だと思っている。しかし


「でも大まかには合ってはいると思うので簡単に排除していいとは思えないですね」


 確かにずれがあるがイギリスやアフリカなどの大まかな位置は合っている。もしこれが全くの見当違いな地図であるなら梵天丸さんがわざわざ話すわけがない。


「ええ、なので私としてはいくつかの可能性があると思っています。一つはこの地図が全くの偶然で似ているだけの地図」

「そうだな」

「しかし、偶然にしては似すぎていますし、村長曰くこの村が出来る時から存在していたそうです。そんな昔の物がここまで精巧に作られているのは何かあると思います」


 確かによく見れば細かいところまで彫が入っている。リギースなら可能かもしれないがここはある意味原始的な生活をしていた集落のような物、そこでここまでの彫り物が出来るかどうかは微妙な所だ。


「二つ目は?」

「二つ目はこの世界が私達の世界と地形がよく似ているパラレルワールドである可能性。これが最も説得力があると思います。」


 パラレルワールド、話が一気にオカルトに飛んだ。いや俺達が異世界転移している時点で人のこと言えないか。ある意味これもオカルトだ。


「……なるほど並行世界ってんなら地形が似ているのに説明が一応つくな」


 そうパラレルワールドであるならある程度の疑問点は説明できる。だってパラレルワールドだからで全部説明できる。ある意味完璧理論だ。ただ俺達が転移しているからこそ説明できる可能性であると言える。


「しかし、これもこの地図が存在している理由が分かりません。村長もこの地図の伝来にそこまで詳しいわけではありませんでしたので」


 正直パラレルワールドと言えば何とかなる気がしなくもないが、流石に理由がパラレルワールドだからだけだと根拠としては薄い気がする。


「それで、最後の可能性はなんですか?」

「最後の可能性は……」

「この世界が私達の世界の過去か未来どちらかの世界である可能性です。個人的にこの説が有力であると私は考えています」


 全員が黙る。一切考えたことの無かった可能性、というか予想外な可能性。


「は?何言ってんだ?」


 漆捌さんも結構動揺している。実際俺達も動揺している。この世界が俺達の世界であるのなら元の世界に戻る方法を探すという俺達の目的は既に達成されていることになる。


「そう言えば最初に話していましたね。この状況が異世界転移ではない可能性があると。これがそうなんですか?」

「ええ」


「根拠はあるのですか?」


そう根拠、


「最初に疑問に思ったのは言語です」

「言語?」

「リギースで話していた言語、あれは明らかに英語でした。何で異世界で英語が通じるのか最初は疑問に思いました。だって異世界ですよ?普通未知の言語とかあるでしょう?なのに何で英語で話してるんですか?と」


 言われてみれば確かに何でこの世界で俺達の知っている言葉が使われているんだ?今までご都合主義だと思っていたが


「そして、この村で使われていた言語、私達との会話では英語が使われていましたが村人同士の会話にはニジェール・コンゴ語が使用されていました」

「ニ、ニジェー……なに?」

「ニジェール・コンゴ語主にサハラ砂漠以南の地域で使用されているアフリカの言語のひとつです。そしてそれはこの村の位置的にも一致しています。そしてリギースの位置はこの地図でいえばイギリス、この説が正しければこの二つの地域で私達の世界の言語が使われている理由になります」


 何でアフリカ大陸の言語事情まで知っているのか疑問に思うところだが、そのおかげで俺達はこの事実を知ることができた。


「……この世界が私達の世界の過去か未来だから同じ言語を使用していると」

「その通りです春雷さん。それに」

「いや、それでもおかしいだろ!」


 続けようとした梵天丸さんの言葉を遮って漆捌さんが声を荒げる。


「だったらこの地図がおかしいだろ、過去だってんならこんな地図があるのがおかしいし、何より俺らの歴史に背中にガラスみたいなのが生えている何て聞いたことねぇし元の俺らの背中に生えてねぇ」


「そのことに関してこじつけですが説明できます。まず、地図に関してはオーパーツの一種だと言えば説明できます」


 俺達の世界の不思議、スペースシャトルに似ているゴールデンシャトルや錆びないデリーの鉄柱、古代ギリシャのコンピューター、アンティキティラの歯車、水晶ドクロ、いや水晶ドクロは少し前に偽物だって言われてたか。

 ゲームでもイベントアイテムとかイベントボスとして何個か登場していたな。

とにかく、梵天丸さんはこの地図はこれらオーパーツの一つと言いたいのか


「私達の時代ではまだ発見されていないのか、なにかが原因で今後失われるのかは分かりませんがこれで一応説明がつきます」


 実際かなりこじつけに近い。オーパーツにしても地図が精密すぎるし大体、話が飛びすぎている。この説もそうだが大他の説が無理を通しているように見える。


「オーパーツ、まさか梵天丸さんがそんな単語を言うとは」

「無論こんなことになっていなければ言いません。言っても頭がおかしいと言われるでしょうから」

「なるほど、けどリギースにいた彼らの背中に生えている水晶に関してはどう説明するの?」

「時代なんて不確かな物です。現に私達は100年も前の事も満足に解明できていない。その象徴の一つがオーパーツです。なので背中の石が1000年の間になくなり、都市伝説になったとしても問題ないです。そしてわずかに残った伝承がイギリスで存在する妖精伝説になったとすれば」

「一応説明できると?」

「無論かなり無理やりなのは理解していますというかこじつけに過ぎない。他の三つに感じても結構無理がある。ですが、最後の説の証明方法はあります」

「それは?」

「この世界で私達の知っている建造物を見つければいいのです」

「建造物を見つける?」


「ええ、それでこの説が証明できます。もしこの地図通りに移動してそこに私達の知っている建造物があれば、それは少なくともここが私達の世界であることの証明になります」

「いやまてよ。確かにビルとか通天閣とかなら未来ならあると思うが過去に残ってる物なんてあるか?」

「例えば万里の長城は秦の始皇帝が紀元前に作り始めた物です。私達が思い浮かぶ長城は明時代の物が主ですが、それでもここが私達の世界であると証明できます」


 そうか、昔からある建物を探せばいいのか、そして地図に照らし合わせて探してあればここが俺達の知っている世界、なければ異世界であると証明することが出来る。


「なるほど、問題は何処を目指すかですね。万里の長城は有名ですが内陸すぎます。私達はリギースに追われている身、なるべく時間のかからない場所がベストですが」


 シャーロックさんの言う通り水辺付近の方が都合がいい。とはいえ水辺で昔からある建造物か、ビックベン……は無理だな。少なくとも中世にはないし、あったとしても場所は地図的に場所がリギース内だ。

…………案外ないな


 他の人達も案を出しているが却下されている。誰だマチュピチュって言った奴、水辺付近って言っただろ。古墳って……ここ合ってるならアフリカだぞ?日本まで結構かかるぞ!あるかわからないし。


「あ、あるじゃんいい感じの奴」


 皆であーでもないこーでもないと話している中、黒雪さんがパチンと指を鳴らして何か思い出したらしく鳴らした指を梵天丸さんに向ける。


「それは?」

「ピラミッド!!」


 ピラミッドか、確かに位置的にはアフリカ大陸にあるし、近くにナイル川が流れている。信濃での侵入は厳しいが信濃に収納されている小型ボートを使えばいいな。


「…………なるほどピラミッドですか、いい案です。うまくいけば、ここが過去か未来かも証明できます」

「そうなのか?あれってそんな便利なのか?」


 言い方悪いけど、でっかい石の三角錐だよ?


「ええ、昔のピラミッド、よく例に出されるギザの三大ピラミッドは昔は階段状ではなく石灰岩の化粧板で覆われたツルツルした四角錐だったと言われています」

「え、そうなの?」


 最初からあのピラミッドでは無かったんだ。それは知らなかった。


「はい、ですが当時は遺跡の保全何て考えはなかったので盗人の手で石灰岩が削られカイロの町の舗装に使われ結果として今の形になったと言われています。そしてその採掘がおこなわれたのが、おおよそ10世紀前後と言われており、もしここが過去の世界で10世紀より前の時代であるなら私達が知っているピラミッドではなく綺麗な白のピラミッドが見えるという訳です」

「仮にきれいじゃないピラミッドがあったとしてもそれはそれでカイロの町で情報収集が出来ると言うことですね」

「そう、そして補修に使われた時期を調べれば私達のいる時代が分かると言うことです。なければここは異世界です」

「よし、そうと決まったら早速準備をしよう。多分カイロっぽい場所……仮称カイロと呼ぼう、仮称カイロまでの航路を設定しよう」

「今から出発は急すぎる。もう少し航路を練ってからにしないか」

「なら先にご飯を食べましょう。さっきからお腹がへって辛いのよ」


 目標が出来てから皆の行動は早かった。まだ話がありそうな梵天丸さんを放ってさっさと艦橋から出て行ってしまった。結果今残っているのは梵天丸さんとスーシアと俺、あと梵天丸さんの所の子だけだ。


「行ってしまいましたね。あと一つだけ話しておきたかったのですが」

「呼び戻しましょうか?」

「いや、大丈夫です。スーシアさん今にしてみれば皆さんが混乱する可能性があるので話さなくてよかったと思っています」

「一応俺がいるから聞いときたいんだけど」

「……まぁいいでしょう。最後はここについてです」


 そう言って梵天丸さんが指をさしたのは南太平洋チリの下あたりから左に進んだ地点、海上だ。本来ならそこには何も無いはず。しかしこの地図には小さい点のような物がある。


「最初これを見つけた時はゴミかと思ったのですが、触ってみるとしっかりと彫られていたんですよ。それに何か見覚えがあるんですけど、私の記憶にここに島があるなんて覚えがなかったので疑問に思いまして皆さんに聞こうかと思っていたんですよ」


 言われてみれば確かに何か見た覚えがあるような?確かゲームのイベントで行ったような?でも何か思い出したくない気がしてくる。絶対に思い出してはいけない記憶を呼び起こそうとしているような……


「……確かになんか見覚えがあるような?でも思い出したくないような?……スーシア分かる?」

「いえ、残念ながら私も分かりません。これが梵天丸様の聞きたかったことですか?」

「そうです、でも私自身あまりこのことについて言及する気が起きなかったので別にいいかと思いまして、というかあまり話したくない気持ちが大きくなってくるんですよ」

「とりあえずこの話はここで終わりにしましょう。自分もあまり触れたくないのでそれがいいかと、というか皆さんを追いかけないと」

「では、今回はここまでにして皆さんを追いかけましょう。スーシアさんはどうします?」

「艦長が行くのなら私は残ります。追い返したとはいえ、また敵が来る可能性があるので」

「それではよろしくお願いします。春雷さん行きますよ」


 梵天丸さんがエレベーターのボタンを押して俺を押し込むように乗り込んだ。




後日


「機関始動!!目標仮称エジプト、ナイル川河口!信濃抜錨!!」

「機関始動」

「ウリアでの地図と同期開始、仮称ジブラルタル海峡を通過してナイル川河口への航路を設定完了、信濃第5船速で発進」


 俺たちはウリアを離れることにした。ヒーローGさんはもともとの船の損傷具合から余り長期間の航海は危険であるとして、ウリアがリギースに責められないように用心棒を続けることにした。


 少し負い目もあるから、修理用の物資は置いていくことにしたが、お礼と言われて祭りに巻き込まれた。俺の姿をみても俺らの方が骨っぽいぞとお年寄りに囲まれたくらいでリギースほど騒ぎにならなかった。いい人たちだった。


 ヒーローGさん達とも協力関係を結ぶことができた。とはいえ、内容としては元の世界に戻る方法を見つけたら一度ウリアに戻って報告すること、ウリアを守ること、など大した内容ではなかった。


 お互いに連絡手段がないので不安しか残らないが頑張るしかない。


まだわからないことだらけ、それでも船は進む仮説を証明する為にそしてここが何処かを証明する為に


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