海底の雑談
「そういえば」
ある日の多分昼過ぎ、展望台で何気なく艦橋メンバーで食事をしている時だ。多分なのは現在信濃が潜水艦モードで海底を航行中なので日が見れないからだ。浮上しもいいが、万が一でもリギースに見つかる確率を潰すために潜り続けている。
まあ、俺は食べれないから外を眺めながらお茶を継いでるだけなのだが、それはどうでも良い。探照灯に照らされて映るグロテスクな深海魚を目の当たりにしながら平然とカレーを食べている皆に若干引いているがそれもどうでもいい。
……歯キモ
「どうかしました漆捌さん」
「転移したのって俺ら以外いないのか?ほら、あの時マップ内にはモブじゃ無い奴らの船とか一杯あっただろ?」
俺達の目的は元の世界に帰ることではある。その為にリギースにしたし、他に仲間がいないか情報を洗ったり事情聴取した。がこれといってめぼしい情報は無かった。しかしないとは言い切れない
「……梵天丸さん?」
困った時は梵天丸さんに聞く。
「えー、んー、いるとは思いますけど……そもそも、どこまでの範囲がどこに転移したのか全然分からないんですよね。それにほら私達みたいな近代艦ってここの世界の人達から見ればオーバーテクノロジーじゃないですか、もし手に入れたら徹底的に隠すと思うんですよ」
この船は分かりやすく例えるなら時間断層、向こうにして見れば調べれば調べるほど利益しかでない宝の山。手に入れたら秘匿して隠して調べるのは当たり前。であるならそう簡単に出会えないのは当たり前か。
「ってことは、今の俺達って割と危ないのでは?」
どこかの国の庇護下にない。というか逃げてきた。はたから見ればカモがネギしょってる状態ってわけか、ネギというよりも50.5センチ主砲だけど。
「だから逃げてるんですよ。現状国に縛られて自由に移動できなくなるよりは、多少リスクを追ってでも自由に動けた方が楽ですからね。春雷さんも嫌でしょう?国やら政治のしがらみに取りつかれるのは」
無論嫌だ。なんか、仕事みたいで嫌だ。ここはゲームの世界ではないかもしれないけど、それでもなるべく自由に生きていたい。
「ええ、でもなるべく戻れる仲間は多い方が良いですから、もし会うことがあれば同じプレイヤー同士なるべく仲良くやっていきたいですね」
「まぁ、ドリツにさえ行かなければいいと思いますよ。リギースにとっての日独伊の独みたいですから、あとはあの潜水艦野郎どもが敵に回らなければモーマンタイです」
「潜水艦ね」
全員の頭に思い浮かぶのは改装前の信濃を大破に追い詰めた潜水艦、元ネタなんてくそくらえなオリジナル船体、遠隔操作による魚雷発射で発信源を誤魔化して、徹底的に虐めながら攻撃してきたクソ潜水艦、でもカッコよかった
こう、武骨で硬派なデザインの信濃と違って曲線を生かした滑らかなデザイン大好き
「とはいえ、敵対したとしても自分たちが沈めると後味が悪いので基本無力化の方向で進めていきましょう。これから先何が起きるか分かりませんので」
「オーケー。とはいえ、流石にこっちが撃沈しそうなら構わず攻撃するぞ」
「まぁ、一番大事なのは自分の命ですから……そういえば信濃の修理状況はどうなっていますか?」
先日のリギース脱出時に女王からの攻撃を受け信濃は少し損傷した。潜水時には隔壁を閉鎖したので損害は大きくなかった。現在はコバンザメを損傷個所の近くを航行してもらって修理拠点になってもらっている。
「現在、潜水航行中なので通常より遅れていますがウリアに着く頃には完了するかと」
「体調不良者は?」
「艦長達の指示通りに全員に検査をさせた後に隔離を実施していますが、特にこれと言った原因の発見報告は上がっていません」
となると、ウィルスの線は低いのか?ドライはともかく助手をしているユアさんが検査でミスをするとは思えないし、となると原因は?
一応修理班にはあの報告の後、潜水服と防護服を着させて作業に当たってからは体調不良者の報告は出ていない。
「原因不明か……とりあえず、体調不良者は体調が改善しても一週間は隔離して検査して異常なしなら持ち場に復帰してもらって」
「分かりました。各班長と話してシフトを調整します」
「お願い」
これで体調不良時と完治した後のデータが揃うから原因究明できたらいいなぁ。
そう言えば俺、骸骨だけど病気になるのか?今での出来事から痛覚やら視覚やらの感覚系は元の位置にそのまま残っているかもしれない。体、本来肉やら内臓があって手が入らない部分に手を突っ込んでみたが特に痛みを感じなかった。
……うーん、自分の体の事なのに全然何にもわからん。
そうこうしている内に館内放送で13時を告げるラッパの音が鳴り響く。
「おや、お昼も終わりですね。では皆さん、先に艦橋で待っていますね。」
そういって先に席を立った梵天丸さんに続くようにぞろぞろと部屋から出て行く。
いくかぁ




