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現状報告会

「――――――以上がティリュバリーであった出来事の報告になります」


 艦内中央に位置する会議室、そこにスーシアを含めた艦橋メンバー全員がいる。そして今しがた行われていたのは俺と梵天丸さんとスーシアがティリュバリーでやった事とどうして戦闘になったのかを説明だ。

 

 スーシアの報告が一通り終わったところで口を開く。


「ありがとうスーシア、とりあえず皆さん言いたいことがあるとは思いますが、自分から一つ、先に言わせてください。申し訳ありませんでした!!」


 スーシアの説明が終わり開口一番謝罪する。


「正直、気が緩んでたと言いますか…………。もう大丈夫だろと思っていた次第でして、本当にマジですいません!!!」


 間違えたと気が付いたらまずは謝罪、これが大事。実際今回の事は俺が油断してたから100%俺が悪い。申し開きも何もない。立場とか関係ない。全身全霊を込めて謝る。


「ま、まぁ顔を上げてください。別に春雷さんが10割悪いわけでは無いですから、どちらかというなら勝手に返事を聞かずに部屋に入ってきた向こうに非がありますよ」

「そうですよ。それに仮にもこの船のトップが頭を下げないでください」

「いえ、この件の原因は自分が油断したことなので」

「まぁ、そうだけどよ。もう過ぎたことだしどうでもいいだろ。それよりもこれからどうするんだ?」


 みんなが優しくて辛い。


「そうよ!問題はここから何処に行くのよ!!このまま暗い海の底でずっといるなんて嫌よ!!」

「そうだな、俺もずっと水中にいるのは嫌だな」


 現在信濃は潜水艦モードのまま南に進んでいる。浮上をしないのは先ほどの戦闘の折に見つけたビーム兵器の大本、リギースの人達の攻撃を防ぐためだ。

人型のサイズで信濃に損害を与えるほどの破壊力を兼ね備えている人達、しかもその船に乗っている乗組員全員で撃つ事も可能だと言うことだ。


 そんなトンデモ兵器と人がセットになっている船が相手、しかも見た限り重力によりビームの軌道が変わっている様子もなかった。そんな船がうじゃうじゃいるかもしれない海域に呑気に戦艦モードで航行していて、集中砲火を浴びせられたりしたら沈むかもしれない。


 黒雪さんがそう言い騒いだことで信濃は空気の入れ替え以外では浮上せずに潜航した状態のまま航行している。とはいえ、黒雪さんもずっと海の底にいるのは本意ではなく。現状次の目的地を聞いていないので半ヒステリックに陥っている。俺としても戦艦は水面を切り裂いて進んで欲しい。


「大丈夫です。次の目的地は決まっています」

「それはどこに?」

「ウリアです。というかそこ以外に行く場所が無いんですよ」


 そう言うと梵天丸さんが一枚の地図を取り出す。一応リギース周辺の地理を描いてあるそうだが、人工衛星の無いこの時代の地図は信憑性が低い。それでもおおよその情報は照らし合わせることが出来る。


 俺達のいたリギースは孤島であり、海を挟んだ東側にドリツ帝国が存在する。聞いた話の限りではドリツは超攻撃手的な国家で日夜リギースとにらみ合い、時には周辺国家へ戦争を吹っ掛けるようだ。そんな国家に信濃が近づけば間違いなく国に利用される可能性が高い。


 周辺国家へもドリツと陸続きになっていてドリツを刺激して戦争に巻き込まれる可能性がある。

俺達の目的は元の世界に帰ることで、争うことではない。出来るなら国同士の争いは避けていきたい。よって東側の国にはかかわらないことにした。


 リギースよりも西側に関しては情報が全くない。


 といのもリギースより西側の海はかえらずの海と呼ばれ、今までいくつもの国が何隻も調査船を出したがどの国の船も一隻も帰ってきていないそうだ。曰く海の妖精が船乗りを水底へ誘う歌を歌っているのだとか。


 梵天丸さんが最大倍率のカメラで西の様子を見ようとしたが分厚くどす黒い雲が広がっていること以外分かっていない。


 俺達としては少し興味があるが、流石に興味本位で近づく場所ではないと思うので西にはいかない。


 そして最後、北には何もない。ただ海が広がっているだけで本当に何もないみたいだ。北極のような氷もなくただ海が広がっているだけで本当に何もないと言っていた。


 そんなところに行っても何も分からないだろう。


 消去法として南になったのだが、南にはウリアという国がある。国と言っても国家があるわけでは無くいくつかの部族がまとまって存在している地域を暫定的にウリアと呼んでいるだけで国ではない。


 そのウリアは現在、リギースが実質的に植民地にし、占領している。俺達はそこに行く。リギースで戦闘したことがバレるのが危険だが、この世界の伝達手段は人力だ。特に不思議な水晶で連絡できるとかそんな便利な道具は無く、人から人への連絡手段は人力か伝書鳩のどちらかに絞られる。


 伝書鳩の場合距離の問題でいくつかの中継地点を経てウリアに届ける手段しかない。

 この場合陸路と海路では障害物の無い海路に軍配が上がるし、疲労や疲れが出る生き物と違い信濃は速度を維持したまま進むことが出来る。このままいけばリギースの様子がウリアに知られるよりも早く到着することが出来る。そこで情報を出来る限り集めて次の目的地を決める。今できることといったらこれくらいだ。


「異論はありません。元の世界に戻る方法も一切分かりませんし、何より情報が少なすぎます。その場所で情報収集も賛成です」

「ならよ、別動隊を作らないか?ほら今回みたいに堂々と行くと面倒だろ?少数で国に潜り込んでスパイ活動するとか。長期的に信濃から離れる任務とか駄目か?」

「悪い考えではありませんが、現状は難しいです」

「何で?別動隊ならコバンザメとかあるじゃん。何だったら俺のクロトリ部隊を出してもいいぜ」


 クロトリ部隊とは漆捌さんが持っている海上機動隊、要は艦載機だ。ゲームでは航空戦力が無かったので飛行機の代わりに水上バイクだが。信濃では対処しきれない敵小型艇の駆除、裏工作、哨戒、等々細々した海の上での作業をしてくれる部隊だ。


「無理です。理由としては、別行動をした後にここへ直接連絡を取る手段がありません。例えば信濃が予定の航路を外れざるを得ない事態に陥った時に事前の集合場所に行けない場合、連絡が取れないと危険です。これが国の場合は移動しないので問題ないのですが信濃は移動していますから最悪合流できずに一生そのままとかありえます」


「あー」


 そう、ゲーム内ならどんなに離れてもチャットやら通話で時間と場所をリアルタイムで指定できた。都合が悪くなればキャンセルないし変更した。だがここではチャットも通話もない。一度出した指示の変更が難しくなる。


 鳩でも飼っていれば伝書バトを使えるかもしれないが……いや、移動するのだから無理なのか?そのへん詳しくないから分からないな


「なので私は別行動に対しては反対です。何かしら遠方と連絡できる手段を入手できれば話は別ですが」

「そっかぁ連絡手段かー考えて無かったぜ」

「連絡手段が確立できれば、十分考慮出来るのですが、現状出来る手段が手旗信号化、光モールスぐらいしかないんですよね。どれも距離が離れてしまうと使えないのでしばらくは保留かと」

「まぁ、この話は追々通信手段を見つけてからしようや。それより話はリギースの事に戻るんじゃが、あのリギースの攻撃は何だったんだろうな」


 リギースでの攻撃と言えばあのビームしかない。最初見た時は驚きと恐怖しかなかったが、改めて思い返すとちょっと格好いいなと思う。特に背中のクリスタルが発光してるのがいかにもって感じで好きだ。


「なにってビームじゃね?」

「いやあれはどう見ても放射ね」

「シャラップ、問題はなんで人がビームを撃っているかという事、ですよねフガクさん」

「あ、ああそうじゃ、ファンタジーとして片づけようとも思うたが流石に無理があると思うてな」

「一応、事前にミアさんとおばあさんに話を聞いたのですが一応ミアさん達もアレ撃てるみたいです。大きさは異なりますが、五体満足で人を後ろに吹き飛ばすくらいの威力があるみたいですね」


 


「事前に教えて欲しかったなぁ」

「彼女たちにとってアレは殴る蹴ると同じ位当たり前に出来る事みたいですねから、私達が何か凄い事ありますか?と聞かれて殴ることが出来ます。とは答えませんからね。それに兵士たちのビームに比べればミアさんのビームは弱いですから彼女からしたら自慢できることではないみたいですから」

「それほどまでにこの世界では背中に石が生えているのが常識なんですね」

「むしろ石が生えていない私達を差別せずにちゃんと客人としてもてなした。女王がおかしいみたいです。ただ、最近は石が小さい子供が増えてきたみたいでミアさんくらいになると対して気になってないみたいですね。差別意識があるのは選民思想、特に貴族が強いみたいです」

「となると、石ナシの上に骨が艦長で自分たちの国を攻撃して、さらに差別対象から逃げられるという恥を重ねがけした。俺達はリギースからすれば……」

「攻撃対象、よくて信濃を利用する為に捕縛ないし拷問、最悪撃沈対象に見られている可能性が高いですね」

「ヒィ」


 フソウさん骨ってなんですか骨って、骨ですけどもっと言い方ぁ……。

あと梵天丸さん完全にビビらせてんじゃん。黒雪さんガタガタしてるよ。


「まぁ、というわけでリギースへの干渉は情報収集に関してはおおむね達成、リギースと友好的な関係を持つに関しては不達成となりました。次の目的地はウリア、出来るならそのまま丘を確認しながら東に回っていきたいなって感じですね」

「わりと適当じゃね?」

「まともな地図何てないので計画が立てられないんですよ。なにか明確な場所があればいいんですけど、全くないのでどうしても行き当たりばったりになりますね」


 リギースの地図もウリアを超えると見切れてしまい。それ以上の情報は無い。

……もしかしてこの世界球形じゃなくて平面だったりしないよな?


「それなら仕方ないですね。詳しい航路は後で詰めていきましょう」

「わかりました。シャーロックさん。現在私の子が書類関係の翻訳作業をやっているので翻訳完了次第皆さんにも情報共有します」

「わかりました」

「他に何か話しておきたいことはありますか?」

「では私から皆様にご報告が」


 スーシアが手を挙げた。


「現在、信濃がリギースでの戦闘で発生した損傷は全体の25%が修復完了しています」


 信濃はリギースで女王のビームで空いた穴に加えて色々な所が傷だらけになっている。潜航中その修復作業をしていたのだが、聞いていた予定よりも遅い気がする。


「以前聞いた計画よりも進みが遅いみたいだけど何かあったの?」

「慣れない海中での修復作業に並行して作業員の間で脱毛や嘔吐を発症した作業員が出てきたため作業が遅れています。ドライさん曰く『イユからの報告だとウィルスや細菌、伝染病の可能性は低い。人には移さないと思うけど、一応隔離しておくね』です」

「「「「それ早く言ってくれない?!」」」」


 何で話さなかったの?割と一大事じゃね?


「実際介護をしている医療スタッフ、面会者に体調不良者は出ていないみたいです」

「いやいや、出てないからよかったじゃないよ!梵天丸さん」

「ええ、至急調査チームを編成、原因究明に動き出します。スーシアさん修復作業は一時停止」

「しかし、信濃の修復がまだ」

「駄目よ!信濃も大事だけど、それ以上にスーシアちゃん達も大事なの!!スーシアちゃん達がいなくなったら信濃は動かないんだから、無理しちゃダメ!」

「梵天丸さん。自分骨何で体調とか多分関係ないのでドライの所に話聞いてきます」

「了解しました。とりあえず原因が判明するまでは被弾個所付近へは原則立ち入り禁止、漆捌さん、クロトリ部隊の何名かを警備として派遣してください」

「わかった」


 他にも指示を出している梵天丸さんに任せながら俺は部屋を出て行った。


 結果を言うならば原因はいまだ不明、ただしドライさんの言う通りウィルスや細菌の仕業ではないようで、少し休めれば回復した。修復作業についてもコバンザメや遠隔操作用のアームを使った作業にすることで修復できるようになった。ただし、作業中は遠隔操作ということもあり信濃が停泊してからでなければ作業できないので、ウリアに到着次第修復作業を始めるようと指示している。


 あとスーシアに少し怒った。

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