センコウ
ブックマーク、初評価ありがとうございます。
「流石です。女王陛下」
「このまま悪魔どもを滅ぼすぞ!!!」
私の一撃を放った後に部下たちの歓声を浴びながらも私は内心あの船を恐れている。
先ほどの一撃は私の最大威力だ。並大抵の船なら跡形も残さずに消し去れる威力のはずだ。
それをあの船は一切の損傷なく、向きが変わる程度で済んでいる。いくら金属で覆われていようと私の攻撃を受けて無事だった船は無かった。
騎士団の斉射も被弾しているが破損している様子はなく、多少傾く程度だ。それも浸水による傾きではなく、われらの攻撃に押されて傾いているだけだ。
反撃も一隻ではなく、数隻をまとめて屠るほどの威力がある。聖咆哮は石ナシでは出来ぬはず。なのに、あれほどの攻撃を一身に受けながら損傷しない船体に戦慄する。
やはり、敵に回すのは危険だ。
とはいえ、事情を聞かずにミスミス逃すなど論外だ。ジェームズの話の真相も知らねばならない。一方の話を聞いてすべてを理解した気になるのは早計、話を聞かせてもらうためにも一旦足を止めてもらうぞ。
「余が攻撃した個所を重点に攻撃せよ」
面での攻撃が駄目なら攻撃を一点に集中させて突破する。
女王?!女王何で?!というかビームって女王が出してたの?!背中に水晶とかスペ〇ジっぽいとか内心思ってたけど口からビーム放つとか完全にゴジ〇だろ!
「春雷!どうする?撃つ?撃つよな?撃っていいよな?撃たせろ」
「当たり前です!ですがその前におも舵いっぱい!!艦首回頭!幸い先ほどの攻撃で艦首が回りました。これを利用して信濃の回頭を続けます。あとは――――」
「熱源反応多数!敵の一斉射撃来ます!」
指示が終わる前に梵天丸さんから報告が上がる。馬鹿野郎!!駆逐艦の主砲張りの装填速度でビーム兵器撃ってんじゃないねぇ!!もっとちゃんとエネルギーチャージしろ!!!
「衝撃に備えてください!!!」
右側面に敵のビーム?ブレス?が断続的に直撃して船体が大きく左側に傾く。
直後、艦首左側面から爆炎が発生し大きく揺さぶられる。場所的には女王のビームが直撃してたとこだ。先の攻撃で弱っていたところに追撃で破られたのか!
どこかのガラスが割れる音を聞きながら被害状況を確認する。
前方側面に数か所穴が開いて空間歪曲魔法に乱れが発生、搭乗員に被害者は出てない、飼育スペースの牛が一匹焼けたくらいの被害だ。まだ大丈夫、人的犠牲は出ていない。
だがこれ以上の攻撃を食らうと不味いとのこと。
ここで戦闘継続はまずい。ひとまず奴ら全員の目を潰して仕切りなおす。
「漆捌さん、噴煙式煙幕ミサイル発射用意!ひとまず敵の目を潰します!」
「アイアイサー、煙突噴煙式煙幕ミサイル発射!」
艦橋の真後ろ本来の船ならエンジンから出た排気ガスを出す部分の煙突、なんだけど聖杯からの魔水を使ったエンジンを使用している信濃は排気ガスを出さないので非常にエコ、代わりに煙を出しながら時限式で爆発してさらに煙をまき散らす視界妨害用のミサイルの発射管に改造してある。ゲーム的に言うなら敵のターゲティングとマップの反応を一時的に隠せるアイテムだ。こっちから撃ったらすぐバレるけど
流石に目視で敵を観測している向こうは流石に見えなくなるでしょ、というか見えなくならないとキツイから見えなくなってください。
そんな願いが通じたのか煙が無効の船を覆うと敵の攻撃が散発的になり、次第に止む。よかった、マジでよかった。
「今の内に逃げましょうよ!」
「いやそれだとさっきと同じ事が起きますね。漆捌さん何隻沈めました?」
「多分14隻ぐらい本当はもっと撃ったんだけど、ビーム?ブレス?が信濃に当たって照準が乱れた」
「そうですかー、そっかー」
少ない、敵の船の半分も沈めてない。本来なら戦艦の処刑場、本領発揮できる真横をさらしているのにこんな状態とは……
「やっぱり逃げましょう!」「は?ここは殲滅でしょ、主砲の火力なら船体に直撃すれば一撃で屠れるぞ。ここまで来て尻尾巻いて逃げるわけにかないだろ」
黒雪さんと漆捌さんが意見を言う。シャーロックさんと梵天丸さんは船の操舵とレーダー監視で意見する余裕がなさそうだ。さっきから一杯指示を出してる。
漆捌さんの意見は難しい。先の戦闘時間で14隻、半分も削れていない。それに比べてこちらは船体に少なくない穴が開いた。この我慢比べはこちらが不利だ。
ただ、先程の女王の攻撃で右に動いたことで先ほどよりも簡単に方向転換しやすくなった。逃げようにも最大船速になる前に攻撃を食らえば先ほどと同じように信濃がドリフトしてしまう。しかし、殲滅するまで信濃が無事である保障は無い。何か何か手は無いか?
やはり逃げるには全ての船を撃沈するしかないのか?
……いや、まてよ?色々考えていた俺の頭に一つの光が浮かんだ。
確か信濃の改造計画で色々提案した物の中にアレがあったような……しかも俺が発案した奴だった気がする。取り合えず現状を打破できる方法がこれしかなさそうだし試してみるか。
「まだ方法はある。潜水艦モードの使用にワンチャンかけてみたいと俺は思う」
「え?……なるほど、確かに潜水艦モードなら逃げられそうですね」
信濃に搭載されている3モードの2つ目、潜水艦モードを使用すれば安全に逃走できるはずだ。潜水艦モードはそのまま信濃を潜水艦として運用することだ。一応装甲の中に水圧装甲が入っているので本物の潜水艦ほどではないがそれなりの深さまで潜水できる。一応ギルドからの発進の時に海中から出たのもこのモードのおかげだったりする。
「ああ、そうか、その手がありましたね」
「で、でも今の状態で潜水に失敗すれば、無事じゃ済まないわよ?!ナハドッグの時には無傷だったから出来たけど今は損傷しているじゃない!私溺れて死にたくないわ!」
黒雪さんの言う通り、現在信濃の船体前方右側面は先ほどのビーム?ブレス?が直撃、貫通して穴が数か所空いている。一応隔壁で閉鎖しているが、このまま潜水すると被弾個所から水が入ってくる可能性がある。けど、これ例外にある打開策が殲滅以外にないのでこれしかない。
「しかし、これ以外で逃げ切れる手段がないし、このままだと逆に撃沈される恐れがあります」
さっきの攻撃で穴の開いた箇所に連続で攻撃されれば空間歪曲魔法の維持が困難になり、拡張していた空間が戻って爆発が起きる可能性がある。
「で、でも……」
「大丈夫です!今しがた応急修理が完了したとの報告が上がりました。深度50mまでなら潜水できます」
それでも、あまり乗り気ではない黒雪さん。
「黒雪さんお願いします。こうしないと逃げれないんです。これに欠ける以外だとあの人たちを皆殺しにしないといけないんです。でも、それはしたくないんです。だからお願いします」
「……分かったわよ。これじゃないと逃げきれないんでしょ。その代わり絶対に成功させるわよ」
「当然です」
一度興奮状態を治める為に深呼吸をする。今すぐ敵の攻撃が再開するかもしれないがそれでもこの潜水艦モードは絶対に成功させなければならない。
「とりあえず全隔壁閉鎖」
「了解しました。全隔壁閉鎖」
「向こうから来るガレオン艦と距離を取りながら潜水艦モードに移行します」
「了解」
舵輪を思いっきり回しながら横にあるコンソールを操作する。信濃の前方と後方それぞれの側面にあるスクリューが周り、まだ囲まれていないはずの方向へ進む。
「総員、シャーロックさん以外はシートベルトを着用」
「向こうのガレオン艦の様子は?」
「まだ煙は張れてないのでこちらを認識で来てません」
なら大丈夫そうだけど、もう油断しない。敵船が煙を抜ける前に潜水して姿を隠す。
「では、信濃潜水艦モードに移行シークエンス開始!」
その宣言と同時に艦内の照明が消えて代わりに非常灯に切り替わり、艦内を赤く照らす。
「了解、潜水艦モードに移行開始、艦橋変形します。同時に艦橋正面ガラスに耐圧シャッターを下ろします」
潜水艦モードになる時に、第一艦橋と艦長室の水平を保ちながら艦橋の根元部分が前方に倒れる。それと同時にシャーロックさんの隣にもう一つ舵輪が出てきて頭上から細かい計器のような物が降りてくる。
潜水艦と戦艦では操作する物の量が多い。例えば戦艦だと左右への操舵だけだが、潜水艦は浮上と潜航をするので立体的な操作技術が必要になる。そして計器も速度の他に深度等を表示する計器が必要になるからこんな感じに増える。
「変形完了、続いてメインバラストタンクに注水開始、ベント弁開放」
「前方トリムタンク注水開始、艦首潜水開始」
「え?前方だけですか?」
「そうです」
潜水艦が沈んだり浮上する仕組みは、このメインバラストタンクに水を入れたり空気を入れることで可能になっている。ベント弁はタンク内の空気を外に出さずに艦内に入れる為に必要な物でこれで泡を出さずに潜水できる。そしてメインの他に前と後ろ傾きを調整する目的のトリムタンクメイン、タンクを補助する役割のネガティブタンクがある。このすべてをコントロールすることで潜水艦は浮上と潜航が出来るようになる。
「メインバラストタンク、トリムタンク順調に注水中、甲板がもうすぐで沈みます」
段々と甲板部分に海水が被って行き、船体が少し斜めに傾く
「後部トリムタンク注水開始」
信濃の船体が少し傾く程度で止まりゆっくりと船体が海に沈んでいく。
「潜水艦用スクリューに切り替え、ハイスキュー・プロペラ回転開始」
「高エネルギー反応!」
梵天丸さんの報告と同時に信濃の横を閃光が駆ける。艦橋部分が低くなっているので今までの閃光よりも迫力が違う。続いて次々と閃光が信濃の横や上を掠める。
緊張状態でこの攻撃はまずい。ミスが出る前に声をかける。
「いやぁ!!」
「慌てるな!!まだこちらを認識できていないはずです!!今のはでたらめに撃っただけ、落ち着いて潜水シークセンスを続けてください!大丈夫後部の装甲ならまだ問題なく攻撃を受けられます」
その為に先に前方を水に沈めたこれによりもし被弾しても無傷な後部で受けられるようにした。
「りょ、了解です信濃艦橋部分まで潜水を終えます」
その報告の後に横や上から聞こえていたビームが通る音が鈍くなった。
「信濃潜水完了、続いてバルバスバウ・ソナー起動します」
一応強化ガラスに強化魔法をかけている。艦橋のシャッターとガラスは深度300mまでなら問題なく潜ることが出来る。それでも海底の様子が艦橋からでは見えないので、このソナーを使用して海底までの距離を測る。
「信濃潜水艦モードコンプリートです。現在深度10m」
無事潜水艦モードに移行完了できて、少し安堵した後に気を引き締める。まずは被弾個所の修理を進める。次は向こうで何があったのかの報告をしないと。
「よし、ではこのまま潜水しながら全速離脱!ついでに少しずつ修理を進めてください!」
「心配ご無用です。修理の追加人員は回しています。現在内側から耐圧潜水スーツを着て少しずつ進めています」
「あ、うん。ありがとう」
スーシアが有能すぎて辛い。黒雪さんとの会話の時もそうだけどスーシアの対応が俺よりも早いの本当に偉すぎる。
「でこの後どうするのですか?」
「というか何があったんだ?」
潜航してからしばらく、レーダーからも海上の船影が見えなくなり少し緊張が和らいだ時にシャーロックさんと漆捌さんが質問した。
艦内通信は入っていないが多分扶桑さんもドライさんも聞きたいだろうし実際黒雪さんは聞きたそうにこっちを見ている。
「そうですね……とりあえず全員に説明する必要があるので、一旦距離を空けてからドライさんと扶桑さんを呼んでから話すのでちょっと待ってください」
取り合えず謝罪の言葉を考えることにした俺だった。




