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コバンザメへ脱出

「で結局こうなるわけですね!!知ってましたぁ!!!!知ってましたとも!!」

「弁明のしようがありません!!!」


 もはや言い訳すらも見苦しい。


 背負っているおばちゃんを気にかけながら路地を駆け、時々後ろをみる。後ろからは兵士たちが時間ごとに数を増やしながら追いかけられている。どうしてこうなったのかというと、バレました普通に。おぶるのも動くのも苦ではなかったが何かの反応に対して動くのに多少のラグがどうしても出来てしまい。それで見つかった。穴があったら入りたい。


「コバンザメにはいつでも浮上できるように指示は出しておいたので後は逃げ切るだけです!!」


 前方にいた兵士たちを蹴散らしたスーシアが話す。さっきから思っていたがスーシア戦闘力高くないか?確かにガレオン船に乗っていた頃は白兵戦が多かったから戦闘技能に割り振ったが、無双できるほど高かったかと言われるとそうでもないはず。それでもスーシアが無双できているのは驚く。

 しばらく、様子を見ているとあることに気が付く。


「でも、思ったよりも兵隊が少ないですね」


 一度に来る兵隊の数が少ない。大体4人前後の兵隊が来るが、それ以上は少ないし、そもそも来る頻度も少ない。いたぞ!!!とか声を上げているにも関わらずだ。


「多分ですが、彼らは信濃の方に兵を割いているんだと思います。追いかけるよりも待ち伏せする方が楽ですから。その分、スーシアさんが集中しているので何とかなっているんだと思います」


「なら、今はまだ楽な方なんですね」


「ええ、素直に信濃に行けばスーシアさんも数に押されていしまい捕まっていましたね。私達も武器を持っていますが二人とも遠距離武器ですし、万一スーシアさんに当たれば不味いですからね。コバンザメを待機させたのは英断だと思います」


『あの角を右に曲れば川につきます』


 ミアさんの指示通りに角を曲がると、確かに川が流れていた。

川幅数メートルの小さな川ではなく向こう岸が遠くかすかに見える大きな川。今は夜なのもあり向こう岸が辛うじて見れるくらいに大きな川が流れている。


「コバンザメは川沿いに下った桟橋に展望鏡だけ出して私達を確認次第浮上してハッチを開けてくれる予定です」


「よし、あともうひと踏ん張りです。引き締めていきましょう」


 もうバレているのでコッソリ進む必要はない。思いっきり駆け足で川沿いの道を進む。幸運なことにわき道から兵隊に遭遇することなく、しばらく進むと前方に船が数隻止めている桟橋が見える。直後、その船を押しのけて川の底から何かが浮上する。全長40メートル、群青色を基調とした船体の至る所にアクセントに緑色のラインが走っているザ潜水艦と言った形とは違い平べったいヒラメやカレイのようなのっぺりとした形のものが姿を現した。


船は浮上すると上部にあるハッチが開き中から顎ひげを蓄えたおっさんが姿を現す。


「コバンザメですね。あの方は多分フガクさんのNPCのサブロクさんでしょうか?私はコバンザメの方とは合わないのでちょっとわかりません……」


「艦長、梵天丸さん、あの人は確かにサブロクさんです。こっちだと手を振っていますね。もうちょっとです」


 見ればわかるが目立つなぁ……


「そして問題も追加です」


 梵天丸さんが前方を見て呟く。前方、俺達とコバンザメとの距離とほぼ同じ反対側に沢山の明かりが見える。まだ距離が遠いから姿は見えにくいが多分兵士だろう。


「おそらく私達が川から脱出する可能性を考えて配置した部隊でしょう。このままいけば戦闘になりますね」


「はい、なので私が時間を稼ぎます。皆さんはその内にコバンザメに乗り込んでください」


「え?スーシア、何言ってんの?」


 なにしれっと囮になる発言してんの?俺は許可せんぞ


「お願いします春雷さん、このままだとコバンザメにたどり着くよりも先に騎士たちがたどり着いてしまいます。この中で戦闘技術に長けているのはスーシアさんしかいません」


「さっき梵天丸さん言いましたよね。勝手に犠牲になるのは駄目だって、矛盾してませんか?」


「あの時は目的の場所も分からない状況でした。そのような場所で無策のまま囮になればそれは無駄な犠牲になります。意味のない無断な犠牲は駄目です。しかし、今回は目的の場所も制限時間もあります」


「でも」


 わかっている。俺や梵天丸さんでは時間稼ぎすらできない。ミアさんやおばあちゃんも一般人、この状況で出せるのはスーシアしかいないと。でも、でも、嫌だ。うちの子を失いたくない。スーシアが強いのは分かっているだとしても万が一がある。この世界はゲームでないこの一か月滞在して改めて実感した。俺達に二度目は無い。だから危険な事はさせたくない。


「艦長」

「行かせてください」


 とか言ってもスーシアは駄目だろう。今は感情論以外で止める理由がない。


「無事に戻れますか?」

「私は艦長に作られました。艦長がいけると言ってくれれば出来ます」


 そう笑って言うスーシア、それだけ俺の事を信じてくれているのだろう。ならばそれに答えなければならない。


「いけるさ。なにせ君は俺の最高の子なんだから」

「はい!では行ってきます艦長」


 スーシアは笑顔で返事をした直後に一足先に全力で駆けて行った。すまない。


『ミアさん、スーシアが時間を稼いでいるので、行動は急いで、でも気持ちは落ち着いてあの船に乗り込みます』

『わかりました』

『おばあちゃん、今までも結構揺れていたけどもっと揺れます』

『ああ、構わないよ。あたしの事は気にせずに走っとくれ』

『では!』


 向こうから怒号や戦闘の音を聞きながら走る。桟橋を渡りコバンザメの上に乗る。


「艦長様、速く乗ってくだせぇ!」


 そう言ってハッチから体を乗り出したサブロクさんが手を伸ばす。


「いえ、先にミアさんと梵天丸さんとおばあちゃんを!自分は最後に!」

「了解でさぁ!お嬢さんがた乗ってくだせぇ」


 二人が乗る間、スーシアの方を振り返る。まだ、スーシアが時間稼ぎしている様だが数が数だけに少し押されておる。……すまない。


「お嬢さんがたは乗りました。あとはスーシア嬢と艦長様たちだけでさぁ!」

「わかりました。スーシア!」


 返事は無い。俺の声は聞こえている目線がこっちを向いていた。だが、時間が経つにつれて増えている兵士を前に離脱することが出来ていない。長時間無理をさせているのも相まって動きが鈍い。今までは兵士の数も少なかった。だが今は全身鉄で完全武装している。スーシアも攻撃しているが流石に鉄の鎧を貫通する程の威力はない。このままではいずれ包囲されて数の暴力で捕まってしまう。


「艦長様、姐さんが!」


 助けなくては。そう思った時には足が動いていた。


「船長様!」

「すぐに出航できるようにしてください!俺はスーシアを!!」


 俺が指示をしておいて自分が安全になったら見放すなんてことは出来ない。他人に任せることも出来ない。数ある兵隊の中に単身で突撃して他の人に回収してもらうのも駄目だ。俺が責任を取らないといけない。


「スーシア!!」

スーシアに向かって走りながら叫ぶ。


「艦長?!」

『待ってろ!そいつら全員ぶっ殺してやる!!!』


 そう言いながら兵たちの注意が俺に向いた瞬間を見計らって顔に被っていた布を取って俺の顔が兵隊の持っている松明によって照らされる。そう骸骨だ。いきなり殺すと叫びながら骸骨が走ってくる。ホラー物でありそうな展開だが、実際に目の前で起きればビビること間違いなし実際、俺の顔に兵士たちはビビッて動きが止まるか、武器を構えて警戒する。それに対抗して腰から光線銃を取りだして撃つ。狙いは民家の壁の上の方、威力最大でファイア!!

引き金を引けば青い二本の閃光が銃口から発射され絡み合いながら民家の壁に着弾音と共に壁を削る。


 と同時にまばゆい光が俺の背後から敵の方に向かって伸びて行った。振り返るとコバンザメが探照灯をこっちに向けている。おかげで敵が怯んだ。


「スーシア!こっちに」


 その隙をついてスーシアが跳躍して俺の所まで飛んで来たので素早くキャッチして背を向けて走り出す。


 馬鹿め!俺に戦闘技能なんてないわ!!ビビらせるだけビビらせて全力で逃げるだけだ!!


 数瞬の空白の後に兵士たちは自分たちが騙された事実を知った。直後に怒気に近い気配を感じて、後ろを振り向く。絶対に殺すいう意思を感じる動きで兵士たちが一斉にこちらに走ってくる。怒声も聞こえる。


 弓を持っている者は弓を構え、剣や槍を持っている人は我先にと追いかけてくる。追い付かれたら、間違いなく殺される。飲食の必要がなく血が流れてない骸骨の自分に死はあるのかと少し疑問にあるが、今はそんな事よりも急いでコバンザメに入らないと!!

動け俺の足!!ずっと走ってばっかで正直足がガクガクしているけど逃げ切れ!!


「艦長様!」

「コバンザメを出してください!!飛び移ります」

「了解でさぁ!!!船長!出してくだせぇ!」

「うおおおおおおおおおおぉぉぉ!!頑張れ足ィィィィ!!!」


 コバンザメが低い駆動音と共にゆっくりと動き出す。間に合えよ!!

桟橋の端で大きく踏ん張り渾身の力を持って跳躍する。距離にしておよそ2メートル、その間の跳躍はとても長く感じた。一瞬走馬灯的な物が始まるのかと思いはしたが、特に距離が足りなくて川に落ちることもなく無事にコバンザメの上に着地する。


 「艦長様、急いで潜航するので急いでくだせぇ!!


 ホッとする暇もなくサブロクさんから急かされ、急いでハッチに続く梯子を上るためにスーシアを降ろす。


「申し訳ありません。艦長からの命令を果たすことが出来ませんでした」


 地面に立ったスーシアは顔を俯かせながら謝罪をした。俺自身特に気にしていないし、むしろ攻められるべきなのは俺の方だ。俺の指示ミス、本来なら怒られるべきは俺だ。だからスーシアを攻める気はない。NPCに任せすぎるのも問題点だな。無事逃げ切れたら少し戦闘技術でも学ぶとしよう。


「うん、自分は気にしてないから、今は急いでコバンザメの中に入ろう」

「了解しました」


 スーシアは俯いたまま背を向けてハッチの中に入って行った。

なお、スーシア本人としては艦長にお姫様抱っこされて有頂天な気持ちと、先も言っていたように仕事を十分に果たすことが出来なかったことに対しての罪悪感で板挟みになっていた。艦長にお姫様抱っこされたことに対してはもはや顔がにやけるほどに有頂天である。本人にとって自分を生み出してくれた親であり、敬愛と尊敬の対象である人に十分な仕事をしていないのに褒められている状態である。本人としては褒められたことは純粋に嬉しいが、反面十分な成果を出せていないことに対しての罪悪感がある。その罪悪感を払拭する為に次同じ指示が出た時に達成する為に、まずは戦闘系をもっと鍛えなければと心の内に決意を決めている。あの指示が間違っていたとは露ほどにも思っていない。むしろ自分を頼ってくれたと嬉しさ1000%で突っ込んでいったのだ。本人としては艦長を支える人として必死にその内面を隠しているのだ。

そんな事情など春雷が知るはずもなく、スーシアに悪い事をしたと別の罪悪感で一杯だった。


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