↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/72

平穏無事には終わらない

『これは……この報告書は……!』


 屋敷の一室でジェームズは一枚の羊皮紙に目を通している。内容はドリツ帝国の内偵情報とウリアに関しての報告書。その内容は一隻の船がドリツ帝国の港に停泊しているとの情報。それだけなら何も問題はなかった。しかし、その港に停泊している船はあの船、信濃とは似ても似つかぬ姿をしているが全体が金属で構成されている船であるということだ。少なくともあの船の乗務員は一隻で来たと言っていた。しかし周辺国家にあの船を建造できるような技術を持った国は存在しない。故にこの報告書に書かれている船はテイリュバリーに停泊している船と何かしら関係があると予想できる。この報告でそれが本当の事なのか怪しくなってきた。


 そしてウリアに関しては半月ごとに戻ってくる定期船が来ないというものだ。その時期はあの船がテイリュバリーに来航した直後だ。元々海獣に襲われて行方不明になる船は出ていたが、今回はあの船が来てからずっとだ。


『この二つの件に少なくともあの船が関わっている可能性があります。特にドリツにて確認された船に関しては関わっていると思われます。もし我が国よりも先にドリツがあの船を手に入れるような事があればあの国の軍事力が飛躍的に増強される恐れがあるかと』


『また未確認情報ですが、一週間ほど前にテルズ川を大きな影のような物が移動しているとの報告もあります。これもあの船がここに来てから報告が上がりました』


 部下の報告を聞きながら思考をまとめる。とはいえそれほど難しい物ではない。あの船が疑わしいそれだけだ。ウリアの事については知っているかどうかはわからないが、少なくともドリツの船に関しては何か知っているだろう。


 本来ならばゆっくりと聞き出したいところだがあいにくと時間が無い。何せ明日には奴らが船に戻り出航してしまうからだ。既に物資や送り物の積み込みも終わっている。時間的にも今から陛下や大臣たちを起すことは出来ない。ならば私自身が直接出向くしかあるまい。

自体は一刻も争う、すぐに行くとしよう。

私は席を立ち部屋を出て廊下を護衛の騎士たちと共に駆ける。






「一時はどうなることかと思いましたが何とかなりましたね」


顔に巻いていた布を取って椅子に深く座る。久しぶりに空気に当たるととても爽やか無い気持ちになる。ここ一か月ろくに布を外さずに寝たり話したりしていたので取った時の解放感といったらたまらない。


「春雷さん」

「もう今日で終わりですから、ちょっと位いいじゃないですか。自分、ここで過ごしている間は寝てるときも起きてるときもずっと同じ格好だったんですよ」


 そう言うと梵天丸さんはため息をついた後にスーシアの方を見たがスーシアは苦笑するだけだ。


 本当なら寝る部屋は同じではないが、最期の日と言うことで情報共有とその他の話し合いのために今は梵天丸さんとスーシアの所にお邪魔している。仮にも女性の部屋でノックもせずに入ってくる阿呆はいるはずもない。そしてノックされても待ってくれれば布は被せられる。


「……まぁいいですが、リラックスしながらでいいので話しは聞いてくださいよ」

「わかってます」


 海軍の軍服風コートを脱いでシャツの第一ボタンを外しながら椅子の背もたれにもたれる。

この服好きだけどずっと着てると堅苦しくて嫌になる。ゲームの頃は着心地なんて気にせずに過ごしていたが、今はこの服しか服が無いのでずっとこの服を着ているが、窮屈でかなわない。その内楽な服を探してみようか。


「さて当初の予定通りこの国である程度の情報を収集することが出来ました。とりあえず、東のドリツ帝国はリギースと敵対している国家なので危険、西のアメリアはそもそも情報が全くないので危険、その他国家も友好的ではあるがオススメされていません」


 その辺りは俺も聞いている。ドリツ帝国は話を聞いた限りだと明らかに戦争準備中だ。俺達を向こうに行かせないように過剰に話している可能性もあるが危険な所にはいかないのが一番、俺達はドリツに行かない。


 「はい、ジェームズさんも同じような事をおっしゃっていました。笑顔で握手していますがお互いに逆の手にナイフを持っているような関係だと推察します」


「ええ、そんな状況で代わる代わる他の国行くような事をすれば国との政治に完全に巻き込まれることになります。それは避けなくてはなりません。面倒ですから」


「それはわかりますけど、具体的な次の目的地はどうします?流石にずっと海の上を漂流するなんてことは嫌ですよ」


「そうですね。一応皆さんの意見も聞きますが今の所はウリアが最適かと」


「理由は?」


「あそこは一応リギースの占領下にあります。植民地と言っても過言ではないかと。他の国に行って軋轢を生むよりはいいかと、それに聞くところによると現地住民の中にも話が出来る人たちがいるとか、今は情報なら何でも欲しいところ。現地の人ならではの話も聞けるかと」


「うーん、個人的にはアメリアに行ってみたいですけど、ウリアの方が堅実的ですね」


「春雷さんの理由は?」


「魔の海域とか物凄くファンタジーっぽくないですか?!」


 言った船が二度と帰ってきていないとか海獣とか言う化け物がいるとか聞けば聞くほど行きたくなるところだ。


「なるほど、却下です」


「ですよねー」


「当たり前です。ここ多分異世界ですよ。死んだらリスポーンとかないので危ないところは極力避けます。スーシアさんはどうですか?気になる国はありますか?」


「え?わ、私ですか?私は……そうですね……ネページが気になりました」


「ネページですか?確か、アメリアを超えた先にあるとされている島国の話ですよね?でもそれって伝説上の話、私達の世界で言うところのアトランティスとかムー大陸みたいな場所であると決まっているわけではないので行けるとは限りませんよ?」


「はい、それでも行ってみたいと私は思います。未知の場所を探し冒険し暴き出す。それが艦長がここに来た理由ですから、私はそう言う未確定な場所に行くのが大好きなんです」


 確かにそうだ。サービス開始時はあのゲームはマップ機能なんてなく自力でマップを埋めていく必要があった。そのおかげで海域のほとんどは未開拓、広さは現実世界の地球並、初期ユーザーはこぞって競争するようにボートで沖へと飛び出しそして何度も沈んだ。かくいう俺もその内の一人だった。誰も見たことの無い場所へ行くのが楽しかった。誰も発見していない島を見つけた時の気持ちは計り知れなかった。未知のモンスターに遭遇した時は心が躍った。

いつの間にか忘れていたな。そしてそんな昔の事をスーシアは覚えていてくれていたのか。


「……なるほど、私もこれがゲームなら賛成でしたが、残念ながらここは異世界なので興味本位で危険な所には行くのは賛成しかねます。私達の最優先目標は元の世界に戻ることですので」


「そう……ですよね。申し訳ありません」


 まずい、スーシアが正論を言われ過ぎてシュンとしている。空気が何か暗くなっている気がするなんとかしないと


「も、もし、全員で無事に帰ることが出来たら思い切り冒険しましょう!ですよね梵天丸さん!」


「そ、そうですね。幸い燃料の心配はありませんから物資の続く限り進んでみましょう!何なら今度あのクソ潜水艦ギルドにカチコミしましょう!」

「いいですね!重装甲戦艦の火力で蹴散らしましょう!ついでに海底都市に眠ってるタコ野郎にも突撃しましょう!だからスーシア、シュンとしないで元気出してください」


「そうですよ。あのデビルフィッシュの化け物にラムアタック仕掛けるので元気出してください」


「……これって慰めになってますか?」


「知りません。私一人っ子で特に他の人と関わりなかったので、こういうのは得意じゃないんです。春雷さんは妹さんがいると聞いていたので、こういうことは得意だと思っていました」


「妹の機嫌は物を与えながらとるので……」


「……兄妹の悲しい事実を垣間見ましたね」


「えぇ、新発売のハーゲンをあげないと治してくれなくて」


 「あぁ、美味しいですからねハーゲン……」


 不味い話がそれてきた。今の話でスーシアの機嫌が直るわけが……


「その、ハーゲン?って美味しいんですか?」


 そこに食いついたか……!


「ハーゲンですか?美味しいですよ。再現レシピ知っているので今度キッチンをお借りして作ってみます?」


「はい!是非お願いします」


 スーシアの機嫌が直ってよかったが、梵天丸さん何でも知っているな。食事会の時も堂々としていたし色々知識も深いしいいところのお嬢様だったりするのかな?


 いや、メンバーのプライベートの詮索はご法度、口を滑らせたり自分から話さない限り出来る限り聞かない、知ろうとしない。それが楽しくゲームをするための原則だ。そう詮索しないこれが大事。

気持ちを切り替えて俺も会話に混ざろうとした時だ。


コンコン

『夜分遅くに失礼する。少し話したいことがある』


 この声……ジェームズ大臣だったかな?こんな時間にどうしたんだろうか?


『あ、はいどうぞ』


 反射的にそう答えた。直後に二人が焦る。


「いや、どうぞじゃないですよ!顔!顔!」


「艦長!顔が隠せていません!」


「やべ、そうだった!」


 完全に気が抜けていた。今まで部屋に直接訪れてくる人は全くいなかった。そしてもう信濃に帰れると完全に油断していた。俺の姿は骸骨だ!今までさんざん注意されていたのに何で忘れていたんだ俺!!


 慌てて止めようとするが時すでに遅く。扉は開かれその先にはジェームズ軍務大臣が立っていた。目は飛び出そうなほどに見開かれ信じられない物を見たような表情で固まっている。口はパクパクと動かしているが言葉を紡げていない。

後ろを見れば護衛の兵士がこちらを見て唖然としている。

お互いに動くことは無く、とても長い時間が経ったような気がする。

先に動き出したのはジェームズ大臣、腰にある剣の柄に手をかけ口を開く。


『ば―――!』


 化け物、彼が言うだろう単語を予想するが止める術はない。剣は引き抜かれ切りかかられる。とにかく止めようと手を伸ばすが、それよりも早く俺にいたスーシアが素早く飛び動き出した。


 スーシアは素早く口を開いている大臣の無防備な顎に強烈なアッパーカットを繰り出た。大臣の開いた口がふさがり体が天高く飛び上がる。次にスーシアは地面を蹴り後ろにいた護衛の兵士たちを恐ろしく速い手刀で全員気絶させた。そして最後に落ちてきた大臣の顔目掛けてハイキックをお見舞いした。一瞬。一瞬のうちに俺の前に立っているのはスーシアだけになった。護衛の兵士達は全員倒れ伏し、先ほどまで後ろにいたはずのスーシアが大臣と兵士の間に立っていた。

なんで大臣を二回攻撃したのか疑問だが。それを気にしない位にスーシアがかっこよく見えた。

パワフル!恰好いい!!


 そしてスーシアの機嫌を練るべく損ねない様にしようと心に決めた。

某なろうアンチ漫画がバッシングされたのを見て心臓バクバクになっています。

自分のもう一つの作品大丈夫かなぁ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。