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謁見

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 大きく損壊している門が俺達を出迎えてくれた。町もそうだったが海賊の襲撃で町や城が損傷している。普通一隻の船が襲ってきただけなのに町や城が荒れ果てているように見えるが、あの海賊ビーム兵器を持っていたからこんな風に町が壊されても違和感ないのか。門は本来は城壁で唯一の出入り口として機能するはずだったのに今の城壁は修復も進んでいるが穴だらけでどこでも侵入できそうになっている。本当ならこれだけボロボロならその分警備の兵が多そうなのだが、これも想定よりも少ない。


「こっちだ」


 ロバートさんは門番として立っている兵士何か話した後に門を開いて中に入るように促した。その指示の通りに門をくぐるとそこそこ大きな建物が建っている。よく思い浮かべるような立派な城よりは小さいが屋敷というには大きい、6階建ての小学校2つ分くらいの大きさがあり、少なくとも町のどの建物よりも大きいことが分かる。損傷も少なくここだけ厳重に守られていたことがうかがえる。


 ただ建物内の内装は思ったよりも煌びやかではなくあまり威圧感や豪華絢爛って感じではない。少し綺麗なお屋敷って感じだ。それでも採用試験の面接でも上がってしまうような俺にとってはめっちゃ緊張する。もし俺が骸骨でなく普通の肉体だったら緊張でお腹が痛くなっていたかもしれない。ゲームでも町の王宮とか入るとその豪華さに圧倒されて壁に沿って歩いてしまう程度の肝っ玉しか持っていない。


 船に乗る時のワクワクした気持ちはもう既に無くなっていた。

二人は大丈夫だろうか?何か梵天丸さんは大丈夫な気がするけどスーシアにとっては初めての場所だから緊張してないだろうか?とチラリと見ると二人とも特に気にしていないような顔をして歩いている。なんで?どうして?梵天丸さんはまだわかるけど、スーシアはなんでそんな平気そうな顔をしているの?君そんな豪胆な子だったの?俺知らなかった。


 そうして館内に案内され長くもない廊下を歩いているととある一つの部屋に案内された。そこそこ大きいソファに綺麗なベット明らかに客室と思わる場所に案内された。


『この部屋で待っていろ』


 ロバートさんはそう言うとテディさんを残して他の兵隊たちと一緒に別の所に歩いて行った。テディさんも外で待っていると言って扉の外で待機している。


「ちょうどいいですね、この後の話し合いをしましょう」


 動じる様子もなく梵天丸さんがソファーに座って足を組んだ。本当に動じていないむしろ部屋の主のようにすら感じる。今後の確認もしたいのは俺も同じなので梵天丸さんの反対側に座る。スーシアは少し悩んだ後に俺の隣で立っている事にした。座ってもいいのにと思う。


「そうですね。ここまで順調に入ることが出来ましたが、何処まで進めるのか分かりませんから」

「そのことですけど、春雷さん、確認ですけど別動隊のことは覚えていますか?」


 向こうの船に乗る前の話し合いでフソウさん達コバンザメのメンバーは信濃から離れて予定通りならティリュバリーに流れている川を上っているはずだ。


「今は行動に変更がなければ港の近くに流れていた川を可能な限り遡って環境調査をしているはず。その後はテイリュバリーの水中に潜んで非常時の脱出手段として使用する予定でどんなに遅くても一週間以内に戻ってくる予定ですよね?」


 これは転移した先の世界がどんな地形をしているかを調べるための一環だ。今の所俺達が持っているのはこのテイリュバリー周辺の海図のみで他の地図は信濃の砲撃で吹き飛んでバラバラで読み取ることが出来なかった。だからフソウさん達には周辺の情報収集を頼んでついでに俺達が追われるような事態になった時に逃走手段として使わせてもらう。


「その通りです。ただ、裏を返せば私達は一週間の間、何か問題が起きた場合には自力で信濃に戻る手段が無いのです。一応一週間後にコバンザメが戻っているのか確認したいところではありますが、方法が無いんですよね」


 俺達の通信手段は艦内放送以外は遠近問わず持っていない。ゲームの時はパーティチャットやボイスチャットで連絡を取り合っていたが、ゲームでもない世界にチャット画面が出るわけもなく今こうしている間コバンザメが何をしているのか俺達は全く分からない。一応信濃には艦の外にスピーカーがあるが、そんな物を使えば目立つので使わない。


 つまり予定通りにコバンザメが戻ってきたとしても直接確認する以外に知る手段が無い。そして、どうやって確認するかの話し合いは結局決まることが無かった。


「それでしたら私が行きましょうか?」


 そのことをどうすべきか話し合おうとした矢先、スーシアが自分から立候補した。


「え、大丈夫?」

「艦長忘れましたか?私、戦闘技能は高いんですよ?それにこの屋敷の警備は割と緩いので容易に抜け出せると思います」


 戦闘技能はゲームのステータスを決めるためのスキルのような物の一つだ。他に操舵技能や、調理技能等いろいろな技能をレベルを上げるたびに出てきたステータスポイントを使用して獲得レベルアップすることが出来た。


 確かに俺はスーシアの戦闘技能を多めに入れたが、転移した世界でもアレって適応されているのか?いや、先の実験でスーシアの運動神経がすごい事は確認できてるし、今まで信濃が問題なく動かせていたのはスーシア達が優秀だったのに他ならない。もし全員が技能ナシの素人だったら先の海賊の攻撃で反撃することも出来なかったはずだ。だからスーシア達には技能が適用されていると思う!多分!

そう考えるとスーシアに任せていいと思う。少し不安だけど。


「なら、よろしく頼むよ」

「はい、お任せください」

「ただ、危険だと思ったら、すぐに戻ってくること無理して達成しても良いことないからね」

「はい、危険を冒してバレてしまえば艦長達に危険が及びますからね。気を付けます」


 いや、普通にスーシアにケガしてほしくないから言ったんだけど、まぁ危険な事はしないと言っているしいいか。


「では、コバンザメへの連絡はスーシアさんに任せるとして、あとは話す内容の事ですが」

「はい」

「特に注意することは背後に何も国が関わっていないことがバレることです。今彼らが高圧的であっても敵対していないのは私達を殺せば背後にいる国と戦争になると思っているからです。馬鹿か敵対している国の人じゃない限り何もしていない客人を殺そうとはしません。ただ私達を殺しても怒ってくる相手がいないとわかったら、私達の信濃の技術を手段を選ばずに取ろうとするでしょう。それこそ拷問や脅迫を用いて、それを防ぐために私達の話を合わせようかと思います」


 確かに全身金属の船なんて帆船が主流の人達から見れば十分に珍しい物だ。さらに信濃の性能を知れば、自分の国にも入れたいと詳しく聞くことになる。その過程で俺達の背後に庇ってくれる国や組織が無いと分かれば、何しても仕返しが来ないと考えるかもしれない。

俺だけが拷問を受けるならまだいい。もし、この国が手段を選ばないのならスーシアや梵天丸さんにも被害が及ぶかもしれない。


「なるほど、では具体的にはどのように話を合わせますか?」

「日本を出します。国の文化、名前、どのような場所かを聞かれた場合には日本を当てはめて出してください。その方が私達の間で認識違いが起きにくいでしょう。取り合えず私達は日本という国から来た友好的な関係を築きに来た使節団と言うことにします。何か書類が必要になったら信濃に戻ってでっちあげます」

「じゃあ信濃に関して聞かれた場合はどのくらい情報を出しますか?」


 流石に隅から隅まで言ってしまえばそれこそ相手が欲しくなる情報が盛りだくさんだ。話せる情報は出来る限り抑えた方が良いと思う。


「なるべく少なめで、ただこちらも情報が欲しいのでそうですね……船体の全長や重量等パーソナルデータ程度は出して構いませんが、それ以外は国家秘密と言って躱してください。特に聖杯エンジンやコバンザメに関しては絶対口外しないでください」

「わかりました」

「最後に情報収集は欲しいと強く思っている方が不利になります。もしそういう場面に出くわしたら冷静を装って相手の回答に同調して自身の回答を過少に評価させて相手をいい気にさせてください」


 言っていることはわかるがそれをできるかどうかは別の話だ。俺、転移前はまだスーツが綺麗な新入社員だったし、それも給料が少ないので実家暮らしを余儀なくされる程度の会社だ。そんな俺に出来るかどうかと聞かれたら出来ないと答えたい。ただ、今回は俺が自分から行くといったし梵天丸さんにも付き合ってもらっている。だから出来ないとは言わない。出来る限り死ぬ気で気を付けて努力する。


「が、頑張ります」

「スーシアさんも何か聞かれたら余計な情報は言わないようにお願いいたします」

「了解いたしました」

「後は引きだす情報ですけど基本的にはこの世界についてなら何でもですね。私達はこの世界について何も知らないのでどんな情報でも私達には重要な物なので話せるだけ話を続けてください。強いていうならこの世界の地理や広さ、地図などを入手できる機会があれば出来る限り入手してください。これからの航海で必要になりますから」


 俺らはこの世界について本当に何も知らないミアさんにも聞き取りはしていたが自分の生活と一般的な知識を教えてくれたくらいだ。例えば自分の町の特産物とかその街の特徴とかその他諸々を教えてもらった。だが、当然貴族社会の礼儀やら何やらをミアさんが知っている訳もなく、唯一知っているのは個人の名前程度でそのあたりの情報が不足している。俺は中世の貴族社会にそこまで詳しいわけでは無いが何か無礼を働いたら大体碌な目に遭っていない気がする。もし、トップと会う時に変な事をして二人を危険な目に合わすわけも行かない。とりあえずはそれっぽい動きをして敵だと思われないようにしないといけない。


「最後に謁見に関してですが、向こうの無礼の範囲が分からないので私が後ろから小声で指示します。自己紹介はなるべく相手を上にするように話してください。それから―――」


 そうして一通りの話し合いが終わった頃に扉がノックされる。俺が出ようとするとスーシアが先に動いて扉をあけた。

扉の先にはテディさんが立っていて何事か話をしている。ここからだと聞き取れなかったがスーシアが頷いた後に戻ってきた。


「艦長、謁見の準備が整ったそうなので自分に付いて来て欲しいそうです」

「わかった。行きましょう、梵天丸さん」


 謁見の間はそれ程遠くはなく三階の一番奥のやたら大きい扉が謁見の間の入口になっている。そこから漂う厳粛な空気に無いはずのお腹が痛くなってくる。怖い。


『あ、あのテディさん、謁見の際に気を付ける事ってありますか?自分のいる国とここでは様式も違いますから何か粗相をすると自分の立場が無い者で』


 沈黙による緊張を紛らわすためにテディさんに話しかける。言い終わった後で気が付いたが俺の態度って使節団らしいか?だけど今更変えることは出来ない。


『そうですね、特に気にしなくても構いません。そちらの国の礼儀で良いと思います』


 ロバートさんがいないからなのかテディさんの口調が柔らかい。正直助かる。

本当はもう少し話して緊張を誤魔化したいところではあったがもう謁見をするへの入口が見えている。


『信濃艦長、春雷様、副艦長、梵天丸様とスーシア様ご入場いたします!!』


 そうテディさんが叫んだ後扉がゆっくりとこちらに開き光が零れる。


『頑張ってください』


 テディさんはそれだけ言うと扉の脇に立ち待機し始める。

 一度深呼吸して歩き始め俺の一歩後ろをスーシアと梵天丸さんが付いてくる。部屋は縦長で一番奥に誰かが座っているのが辛うじて見える。天井には豪華なシャンデリアが一定の間隔で配置されている。床にはレッドカーペットがまっすぐ伸びその両脇にお金持ちっぽい服を着た偉そうな人たちが両脇をずらりと並んでいる。全員が俺達を値踏みをするかのようにこちらを見ていて物凄く逃げ出したい。回れ右したい衝動にかられながら一歩ずつ前に進んでいく。下を向いて誰からも目線が合わないようにして歩きたいけど頑張って前を向いて歩くと前に進むにつれて偉そうな人たちの表情が見えてくる。


 大体が値踏みをするような顔をしているが中にはこちらを侮るような顔、何かを探るように嘗め回すような視線を送っている人。三者三様の視線を送っているが正直どの視線も俺にとっては怖い以外の何物でもない。周りを見るのは止めようと正面を向くと凍てつくような視線が俺に向いているのに気が付く。綺麗な顔立ちの女性がカーペットの到着点、部屋の奥にある数段の階段の上の玉座に座ってこちらを見下ろしている。年齢は思ったよりも若く20代前半、少なくとも俺と同年代か年下のように見える。服やドレスはその権力を示すように遠くからでもお金かけているのがよく分かるが一番目を引くのが彼女の背後、正確には背中のクリスタルだ。今まで見てきたクリスタルは大きくても一対で15センチだった。でも彼女のクリスタルは一番長いので1メートル前後しかも下にもクリスタルが続いているが段々と小さくなっている。途中で隠れて見えなくなっているが、多分腰まで生えているのではなかろうか?


 その代わり玉座も背もたれが途中で無くなっていて少し豪華さに欠けている。しかしそれも彼女の装飾とクリスタルの迫力であまり違和感がない。そして、その胸は悲しいかな、平べったい。そこだけ女王の迫力の無い平和な地帯であった。

クリスタルもデカい、顔も幼さが多少残っているが女王の風格を感じる。だが、その胸は大海原のように凪いでいた。


 妹を思い出すような平べったさに思わず安堵の笑みがこぼれる。


 ……顔隠していてよかった。


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