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ティリュバリー領主館にて

「ふむ、やはり我がリギース所属の商船のみが襲われているのか」


 テイリュバリーにある領主館、そこの一室で一人の女性が書類を捌いている。内容はリギース周辺で出没していた海賊船の被害報告書、および先日発生したティリュバリー襲撃の際の報告書、その他さまざまな報告書が山のように積み上がっている。


「はい、敵は生存者からの証言と先日のテイリュバリーの襲撃で確認された船の外見と一致。諜報員からの情報とも精査した結果、女王陛下のおっしゃる通りドリツ帝国が我が国を攻撃している可能性しているかと」


 ドリツ帝国は我がリギースと海を挟んで東側に位置する一大国家だ。昔から我が国と領海問題をめぐって対立している国家であるが最近はより一層行動が過激になっている。元々我が国とドリツの中間付近の海域には鉄などの資源が多く眠っていることは分かっていた。少し底をさらえば喉から手が出るほど欲している鉄がわんさか採れる。だからこそ私達はその海域の権利を主張していたがどこまで言っても平行線の話し合いに我慢できなくなったようでドリツは海賊を利用し始めた。私掠船免状を発行しこれにより海賊行為が正当化されてさらに海賊としては自国から支援を受けられるなど便利な点が多い。


 さらに周辺の海賊のほとんどがドリツで免状をもっている。これにより自国の船が海賊に襲われる心配をなくした。

憎たらしくも見事な一手である。これにより我が国はあの領海から手を引かざるを得なくなった。全く忌々しいものだ。


「それと少しお耳に入れたいご報告があります」

「なんだ?」

「ドリツ帝国の海軍が最近活発になっているようです。詳しい事はまだ分かりませんが何か大きな事をする予兆かもしれません」


 そういって一枚の報告書を渡してくる。ドリツに潜らせている者からの報告書だ。ドリツの物価の上昇とドームで完全に覆っている秘密ドッグで何かしらの動きがあるそうだ。それに周辺から大量の金属を集めている様だ。何を狙っているのか分からないが何をしようとしているのはわかる。戦争だ。それが周辺諸国への準備なのか、我が国を狙っているのかは不明だが奴らが戦争を求めているのはわかる。どちらにしろ私達も準備をせねばならない。ならないのだが


「わかった留意しよう。テイリュバリーの様子だが被害はどれほどだ?」

「城壁が機能しない程に損壊、奴らが上陸して男女問わずに連れ去ったので死傷者の数は1000を超えると思われます。明日の陛下の視察は陛下の要望通り町の視察を多く入れています」


 先だってこのティリュバリーに海賊の襲撃があった。警備隊の抵抗も空しく海賊はティリュバリーに侵攻、その中で数多くの民草が命を落とすか攫われ、勇敢な兵が多く失った。今残っているのは新米か運よく生き延びた兵の身だ。ティリュバリーが襲われたと余が知った頃には既に海賊はいなくなっていた。とはいえ、その爪痕は大きく残り未だ民の顔には不安が色濃く残っている。それを取り除くことが出来ればと思い今回の訪問を実行した。しかし、私がティリュバリーを訪問している中でも仕事がなくなるわけでは無い。だから今もこうして空いた時間で仕事を処理している。

とはいえ、問題はまだ解決していない。


「うむ、余の来訪で民草の不安が少しでも和らいでほしいものだ。物資の支援は大丈夫であろうな」

「はい、そのことに関しては――――」

「会議の途中、失礼します」


 バンと会議室のドアが勢いよく開き、兵士が一人部屋に入ってきた。席から立ち上がり怒鳴ろうとしている出大臣を遮り兵士に声をかける。あの兵は確か沖に停泊している船の調査に行った部隊の一人だったはず。


「何があった」

「沖合に停泊している船の詳細な情報が判明しましたのでご報告いたします」


 あの沖合に停泊している船、船体が金属質であることが特徴的なその船は一週間前に突然現れて錨を降ろした。最初はあの忌々しい海賊の仲間かと警戒したが特に何かするわけでもなくそのまま停泊していた。


 向こうから何するわけでもなく、されどこのままという訳にもいかず話し合いの末一週間が経過した今日、調査隊として港に泊めていた数隻の船を出した。調査隊の隊長にはその場の判断で動くようにし、もし乗組員が友好的な態度をとるのなら下手な動きをしないようにこちらに連れてくるように命令しておいた。


 ただ今回の調査隊の隊長は中々に性格に難ありと言われている人物だった。よく言えば自分の身分と背中の晶石を誇りに持っている男。悪く言えば古い考えにとらわれている時代遅れと言える。もし向こうが我々と同じく晶石を持っているのなら問題はない。ただ、向こうがもしウリアと同じように晶石がなければぞんざいに扱う可能性がある。


 こんな男を調査隊に入れたくはなかったが、他に適任な人材が先の戦いで死んでしまったので彼しか現場で指示を出せる人がいなかった。下手に敵を増やすことは得策ではないと私は思っているが彼は現状よりもプライドを優先する節がある。だが、今のリギースは父上がいた時のように栄えているわけでは無い。ウリアからの交易品で何とか持っている状態で、それもドリツから攻撃で限界だ。


 この状況でこれ以上敵を増やしたくない。だが、今来た兵士による報告によればあの船は忌々しい海賊の船を撃沈し、その船にとらわれていた市民を救出し送るためにこの国来たそうだ。もしそれが本当なら大変喜ばしいことだ。少なくともドリツと敵対していると言うことだ。


「それで、その彼らは今どこにいる?」

「現在、救助した人を本人の家に送っているそうで、隊長の案内でこちらに向かっています」

「そうか」


 問題はあの船の乗組員がリギースにとって敵か味方なのか。それだけだ。敵であるなら排除してあの船を利用させてもらう。味方であるならドリツ打倒のために協力してもらう。それと同時にあの船の調査も行い一体何が目的なのかをはっきりさせる。その上で交渉をする。

本来は外交官がすべき事柄だが、相手の目的も未だ分からぬ。少なくともウリアよりも遠くから来たであろう。その途中に何度も困難に遭遇したのも想像に難くない。であるならばこちらも目的とは別にそれなりの誠意を見せて歓迎せねばならない。


「謁見の準備は?」

「既に滞りなく終わらせています」

「では、客人を館で休憩させた後に謁見の間に案内せよ」

「かしこまりました」


 それもこれも全部話をしてからだ。全ては話し終わってから向こうの事情を聴いてから相談して決めるとしよう。


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