パンの製法について特許を取得
今日からまた更新します。よろしくお願いします。
やっと落ち着いてきたギルドマスターにラウルは話しかける。
「ビシネルさん。今回伺ったのは、このパンについてなのですが・・・。」
「パンですか?」
「はい、柔らかいパンを作ってみたのです。」
「柔らかい・・・?」
ビシネルさんは目の前に置かれたパンをじっと見つめている。
「食べても宜しいですか?」
「はい、どうぞ。その為に持参したのですから。」
ビシネルさんは、まだぬくもりが残っている焼きたてのパンを、ゆっくりと口に運んでいく。ひとくちパンをかじると、切り口がふわっと元の大きさまで戻る。そのようすを見て、驚きの表情を浮かべた。
「柔らかい・・・。こんなパン食べたことがない。」
「はい。この製法などを特許として登録などできないかと思いまして。」
ラウルが特許と発言すると、ギルドマスターが不思議そうに首をかしげる。
「すみません、特許とはなんでしょう?」
この世界には、特許という言葉は存在しないのかもしれない。
「えーと・・・。新しい革新的な技術などを閃いたとき、その発案者の権利を守るための仕組みでしょうか? 他の者がその製法を使用する際は、使用料を徴収できたりするのですが。」
「ああ、それでしたら契約魔法で可能です。」
「契約魔法・・・ですか? 奴隷にするような?」
「奴隷にするのは隷属契約魔法ですね。それとは少し違います。」
契約魔法とはある条件を登録し、それに違反した者に魔法で警告することができる。また、国は違反者のリストを入手可能で、契約者は申請して国からリストを受け取ることができる。もちろん、手数料は取られる。罰則については魔法でするものではなく、きちんとした裁判で罰を与える方法がとられている。
契約魔法の有効範囲は、領地内、国内、他国内、全世界など、全世界以外は多数の組み合わせて指定できる。例えば、自国と、他国の複数の領地など指定できる。
全世界に範囲を指定するのは、可能ではあるが常識的ではない。この契約魔法は国に申請をして行使してもらう必要があるため、全世界で効力を持たせようとすると、この世界の全ての国に申請をしなければならない。通常は商業ギルドが手続きを代行するのだが、そのための費用は天文学的な数値となる。始めは居住地のある領地から始めて、徐々に広げていくのが普通である。
ラウルはニルバーシュ領内を対象とした契約魔法をお願いすることにした。商業ギルドが代行し、国へと申請してくれる。国は申請書を受け取ると、都市核と呼ばれる国独自の巨大な魔道具で契約魔法を行使する。おそらく仕組みは迷宮と同じだろう。龍脈から大量の魔素を汲み上げて、大規模魔法を実行するのだろう。
契約魔法に設定する条件は、『発酵を利用するパンの製造・販売を禁止する。ただし、契約者が許可を与えた場合はその限りではない。』である。契約書自体が魔道具となっており、契約者が直接条件を記入する。契約者の思考やイメージを契約書へと転写することにより、条件の判断が正しくなされるのだ。
数日後、商業ギルドから使いがやってきた。ラウル達は、再び商業ギルドを訪れていた。
「ラウル様、急にお呼びして申し訳ありません。」
「いえ、何かあったのですか?」
「はい、実は・・・。」
ギルドマスターのビシネルさんは神妙な顔つきで口を開く。
「申請の内容を精査している魔法省から呼び出しがかかりました。パンを持参するようにとのことです。」
「魔法省・・・。何か問題でもありましたか?」
「おそらく、柔らかいパンに興味を持ったのだと・・・。」
「なるほど。それを断るのは・・・、難しいですよね?」
「はい。面会しなければ、魔法契約も不可となる可能性が高いと思われます。」
「そうですか・・・。」
ラウルの王都行きが決まった。ギルドマスターも申請者として同席してくれるそうだ、心強い。ただ、王都までの旅路は別々に向かうようにしてもらった。ラウル達は一瞬で王都へと着いてしまうためである。商業ギルドの馬車が出発してから、四日後くらいに王都へ転移すれば良いだろう。
帰宅すると、何故か両親が家で待っていた。不思議そうにラウルは首をかしげる。
「フィデル、王都へ行くんですって? 私達も一緒に行くわよ。」
「え、母様? 何故そのことをご存じなのですか?」
「あら、私は植物を統べる者ですよ。近くに植物があれば、その植物に意識をうつすことができるの。普通にギルドマスターとの会話を聞いていただけよ。」
母様は何でもないかのように、とんでもない事をいった。そんなの盗聴し放題ではないか。
「母様、王城へ行くのですよ? 相手は魔法省の役人です。危険かもしれませんよ?」
「そんなところへ、息子を一人で行かせられるわけないでしょう。」
「う・・・、わかりました。。」
ラウルは精神的には20代だが、外見はまだ10代の子供である。両親を連れて行った方が、無理難題を押しつけられることもないかもしれない。しかし、今回の要件はおそらく利権の問題だろう。ラウルは嫌な予感を感じていた。
出発の日がやってきた。馬車に乗るのは、ラウルの両親とシルフィ。馬車内の世話役にメアリーも同席している。御者席にはニーナ。セバスとエリックは馬に乗って護衛する。
エリックは本当に縫ってきた。申し訳ないが笑ってしまった。頭部と首のところが糸で縫われていて、まるでフランケンシュタインである。一応、死んでいるので痛みは無いのだろう。首のあたりをマフラーで隠している。
ラウルは馬車の前に立つと、目の前に大きな入り口をつくった。スフィア王国の王都アルジェの少し手前、街道から少し離れた細道へとつながっている。前もって人が居ないことは確認している。
「それじゃ、馬車を進めてください。」
「わかった。」
ニーナがゆっくりと馬車を操車する。馬車がすべて出たのを確認すると、ラウルは入り口を閉じた。空間の接続も絶つ。少し遠くには、王都へと入る城門が見えていた。
(さてと・・・、修学旅行以来だな。またトラブルに巻き込まれなければ良いが・・・。)
ラウルは少し遠くを見つめたまま、ゆっくりとため息をついた。
活動報告には書いていましたが入院していました。一週間の入院予定でしたが、術後の経過が良く、四日で退院できました。今日からまた更新頑張りたいと思います。
ブックマークが400件超えていてびっくりしました。ありがとうございます。評価をしてくれた方もありがとうございます。誤字を報告していただいた方もありがとうございます。今後ともよろしくお願い致します。




