死者達の迷宮8
「葵、現在ボスとして登録されている魔物を解放することは可能か?」
「はい、可能です。」
どうやらボスを解放させるのは簡単にできそうである。
「それでは、6階層から8階層までのボスを解放してください。」
「はい、別の魔物をボスとして登録する必要がありますが、どの魔物にそれぞれの階層を任せますか?」
「いや、ボスの部屋ごと削除してくれ。」
「畏まりました。」
これで元近衛兵団の者達も迷宮に縛られることはないだろう。
ラウルは続けて指示をだす。
「それから、7階層でダンジョンは終わりにして、最奥に地上への転移魔法陣を設置してくれ。」
「畏まりました。」
後方でズズズッと大きな音がしている。おそらく、地下へと続く階段を撤去しているのだろう。これでここ地下8階層は誰もアクセスできなくなった。防衛の面ではもっとも安全だろう。
「それで、ボスとして待機していた者達は今現在どうなっている?」
「はい、他の魔物と同じように迷宮内を徘徊させております。」
「仮にここに呼んだとして、襲ってくる可能性は?」
「迷宮の管理下にいる間は、マスターに危害を加えることはできません。」
どうやら迷宮内にいる魔物はすべて管理されているらしい。考えてみれば、迷宮から出られないように制限をかけているのだから当然であろう。つまり、迷宮の管理下から解放してあげれば、その魔物は自由に己の意思で行動が可能だということか。
「よし、解放したボスをここに転移させてもらえるか?」
「畏まりました。」
すると、ラウル達の後方にスケルトンナイトとデュラハン、リッチキングが現れた。デュラハンは馬は連れておらず、おかしな挙動をしている。ラウルは何か思いついたような表情になり、すぐさまインベントリ内からある物を取り出し、デュラハンに返してあげた。
もちろん頭部である。
「申し訳ありません。7階層を担当していた魔物が、今現在、行方不明のようです。」
「ああ、その者なら俺が預かっているから大丈夫だ。」
葵は首をかしげたが何も言うことは無かった。
ラウルは『ポップ』を使用して、異次元空間から父様もここへと呼び出した。父様はあたりをキョロキョロとしていたが、ラウルがダンジョンマスターになったためか、襲ってくることはないようである。
(さて、とりあえずここに呼んでみたが、どうしたものか・・・。)
まず実力的に1番弱いと思われたスケルトンナイト一体のみを、迷宮からの支配から解放してもらった。襲いかかってきても、すぐに対処できるだろう。
迷宮から解放されたスケルトンナイトはあたりをキョロキョロと見回した後、顎をカタカタとずっと動かしている。手を一生懸命動かして意思疎通を試みている様にも見える・・・かも?
「うん、予想はしていたが、何言っているのかさっぱりわからないな。」
「そうですね・・・。襲ってこないところを見ると、我々に敵対意思はないのでしょうか?」
「わからない。」
セバスも眉間にしわを寄せて唸っているようだ。
ラウルは会話ができそうなデュラハンを解放してもらうことにした。
解放されたデュラハンは、しばらく何も喋らなかったし、身動きもしなかった。しばらく様子を見ていると、目がキョロキョロしたと思った後叫んだ。
「ん・・・? ここは何処だ? 何故目だけしか動かない? 首が回らない。」
(は? 何いってんのこいつ。)
そしてデュラハン本体は持っている頭をポロリと床に落とした。ゴロゴロと頭が転がっていく・・・。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、めがまわるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
そして、セバスの足下に転がってくると、驚いたように表情を激変させ、
「え? セバス団長!?」
「エリック、記憶が戻ったのか?」
「何故、セバス団長があんなに巨大に・・・・、てか床が近いっ!?」
「エリック、落ち着いて聞いて欲しい。お前はどうやらデュラハンに生まれ変わってしまったようなんだ・・・。」
「は? 何いってるんすか団長。」
セバスがエリックと呼んだその頭を持ち上げると、本体の方に顔を向けた。
「な! 頭がないアンデッドですか!? なんであんなのがここに?」
「あれが君の本体だよ・・・。」
「え・・・、えーー? またまたぁ、だんちょぉー、冗談きついっすよぉ。」
ラウルはそっとインベントリ内から鏡を取り出すと、エリックの顔がよく映るように鏡を向けた。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ、生首ーーーーーー! て、生首が驚いて・・・って、これ俺かよ!!」
ようやくエリックは、現実を受け入れたようだった・・・。
「葵、どうやら迷宮から解放すると、前世の記憶をもった状態で意識を取り戻すようだ。」
「マスター、普通はこのようなことはありえないのですが・・・。」
「もともと前世の記憶を持っていたのだが、迷宮に捕らわれて操られていたのだな。おそらく無理矢理ボスとして戦わされていたのだろう。」
「そんなこと・・・。」
葵は首をかしげている。
残りのスケルトンナイト達も迷宮から解放してあげることにした。どうやら全員が前世の記憶をもったまま生まれ変わったようである。魔物に生まれ変わってしまったのは、襲ってきた盗賊に対しての恨みからそうなってしまったのだろう。前世の記憶を持っているのは、おそらくだが神様から恩恵を受けたのだろう。
それぞれ迷宮から解放されたスケルトンナイト達は、周りをキョロキョロとしていた。同じようなスケルトンナイトに驚くもの、自分の体が骨になっているのに気がついたもの。顎をカタカタと動かしているが、声が出なくて落ち込んでいるもの。皆、受け取り方はさまざまのようだ。
しばらくすると、スケルトンナイトのひとりがエリックに気がついた。ラウルが嫌な予感がして身構える。そのスケルトンナイトがカツカツと歩いてきて、エリックの頭の前で止まった。じっと、頭をみて首をかしげている。そして、目をキラリと光らせた。
(なんだ!?)
何を思ったのか、そのスケルトンナイトはエリックの頭を掴んだと思うと、一番奥にいた同じスケルトンナイトへと頭を投げた。
「ちょっ!?」
エリックが驚きの声をあげる。
受け取ったスケルトンナイトは、目をキラリと輝かせて、隣へとパスをする。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、やめろーやめてくれーーー!」
しばらく、スケルトンナイト達によって、ラグビーのような遊びが続いた。。
スケルトン達は、とても嬉しそうにはしゃいでいるように見えた・・・。
(こいつらの脳味噌って、どうなってるんだろう・・・。)
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