死者達の迷宮7
ラウルは無事にダンジョンマスターの資格を得た。
「えーと、君のことは何と呼べばいいのかな?」
「はい、マスター。私の個体識別名は、『シリアルナンバー001』番です。」
そのゴーレムは自分の製造ナンバーを答えた。
「それじゃあ、呼びやすいように名前を付けないといけないな。」
早速、名前を考えることにした。
(シリアルナンバー001だから、ゼロゼロワン。おーおーいち。おおい。んー、いまいち良い名前が浮かばないなぁ。おおい・・・、おおい、おおいは多い。青い。葵・・・、葵ってどうだろうか? んー、日本人みたいな名前は変かな?)
「葵というのはどうだろう?」
「マスターの付けてくれた名前なら、どのような名前でも嬉しいです。」
どうやら、気に入ってくれたようだ。
葵という字は、漢字ではこのように書くとラウルが説明する。地面に書かれた文字を見て、葵はそれを古代文字だといった。どうやら、漢字はこの世界では失われた文明の文字とされているようだ。
「それで葵はこのダンジョンの付近を流れていると思われる、龍脈の流れを変えることは可能か?」
「マスター、龍脈についての情報はインストールされておりません。ダウンロードしますか?」
「お、おう。。頼む。」
「アクセスが拒否されました。すみません、私には権限がありません。」
ラウルは頭を抱えた。
どういうことだ。神様はダンジョンマスターになれば、母様を救えるといった。しかし、その方法がまったくわからない。どうすればいいのだろう。
「それでは、迷宮について詳しく教えて欲しいのと、ダンジョンマスターの権限について詳しく教えてもらえるか?」
「畏まりました。まず、迷宮とは・・・。」
葵によって長々と説明が始まる。要点をまとめるとこうだ。
迷宮は神様によってつくられたものである。目的は、魔物を迷宮内に閉じ込めて外に出さないようにすること。魔物は普通、魔素のたまり場から生まれてくる。迷宮の動力源は、多くの場合魔素のたまり場から汲み上げられる魔素である。
今回は神様の転生魔法により、一度に沢山の者が生まれ変わった可能性がある。その後も、龍脈に流れる多くの魔素によって、通常の方法で魔物として生まれてくる個体も多くいるようである。
「続けて、ダンジョンマスターの権限について説明します。」
ダンジョンマスターとは、迷宮の管理人のことを指す。その権限は次のようなものである。まず、迷宮の構造を自由に変更することが可能だ。次に、迷宮に汲み上げられる魔素をダンジョンマスターは自身の体内に取り込むことが可能である。さらに、迷宮内に宝箱などを設置することも可能だ。ただし、初期設定のままだと、力尽きた冒険者の装備などが宝箱の中身となる。その際には、新品に修復されたり、グレードが上がったり、逆に呪いがかけられる場合もあるそうだ。
ラウルは、迷宮が汲み上げる魔素を取り込むことが可能だという所に興味が湧いた。
「葵、迷宮が汲み上げた魔素を、俺以外へと送ることは可能か?」
「はい、マスター。マスターの空間魔法を迷宮の能力に融合させたため、魔素を好きなところへ転移させることが可能です。」
「おおー。それは良いことを聞いた。」
つまり、迷宮が汲み上げる魔素を、直接母様の元へと送ればいいのではないか。ラウルはそのように考えた。おそらくだが、それが神様のいっていた救済策なのだろう。
「では早速ですまないが、魔素をこれから指定する場所へ送ってもらえるか?」
「畏まりました。」
母様のいる大木の位置を説明しようとするが、なかなか難しい。
「この周辺の地図を表示できたりはしないか?」
「はい、魔素感知能力、空間把握能力、鑑定能力により可能です。」
葵がそのように返答すると、ラウルの目の前に大きな地図が表示された。地図には周辺の詳細な地図が表示されている。ラウルが驚いていると葵が首をかしげながらいった。
「この地図は、マスターのスキルを融合したため可能になっています。本来ならば、マスターは自分でこの地図を表示することが可能のはずですが・・・?」
「あれ、そうなの?」
「はい。」
どうやらラウルでも、スキルを完全には使いこなせていないようである。
地図を操作して母様のいる森を表示してみた。まるで上空から覗いているように見ることが可能である。これは地図というよりも、衛星から送られてくる写真のようである。写真のようではあるが、ちゃんと街道や住宅などの表示も立体的にされている。実際に地図上でマーカーが動いており、そのひとつひとつに名前が表示されている。エルフがいる集落から少し北にいくと、大きな木が表示された。名前はドライアドと表示されている。
「ここだ。このドライアドと表示されている大木の元へ魔素を送ってくれ。」
「畏まりました。」
葵は少し動かなくなったが、すぐに返事をくれた。
「完了しました。迷宮に不要な魔素を永続的に転移させる処理を追加しました。」
「そうか、ありがとう。」
これでひとまずは安心だろうか。魔素が不足することは無くなったはずである。
ラウルはほっと胸をなで下ろした。
すぐにでも、母様のところへと行きたいが、ラウルにはまだやることがあった。それは、ボスである父様とお祖父様を迷宮から解放することである。




