死者達の迷宮5
ボス部屋の奥にはまた下りの階段が続いていた。後ろを振り返ると、まだボスの部屋へ続く壁は開いたままである。ラウル達が部屋から出ると、奥の壁は閉まり、ボスが再び出現するはずなのだが。
「ボスが復活しないのかな?」
ラウルは首をかしげた。
迷宮で倒された魔物は、迷宮へと吸収されて再び出現する。もしかすると、父様の遺体が回収されない場合、ボスは復活できないのだろうか。ラウルはその可能性を考えたがそのまま先へ進むことにした。
(ボスが復活しなくても、俺達には関係ないことだ。むしろ、ボスと戦う必要がなくなって幸運ではないか。)
地下8階層に下りてみると、目の前にいきなりボス部屋の扉が鎮座していた。こんな事は初めてである。扉には今までとは違い、かなり細かい装飾がなされていた。
「なんとなくだけど、ここが最深部のような気がする・・・。」
「いきなりボスとの対戦だと、少し休憩が必要だと思います。」
セバスが助言をくれる。ラウル達はボスの扉の前で、異次元空間へと続く入り口を開いた。
「今日はここまでにして、明日攻略がんばるか。」
「はい、主様。」
各自それぞれ休んで明日に備えることにした。
翌日、扉の前に集合すると、ゆっくりと押し開けた。
地下8階層のボス部屋は、前回のボス部屋と同じような造りであったが、広さが倍以上あった。奥の中央にはすでにボスと思われる敵が佇んでいた。その容姿はスケルトンであった。違うのは、高そうな服装に身を包んでいることくらいである。手触りが良さそうな毛皮のコートを着ていて、頭蓋骨の上には王冠が載っている。
右手に大きな杖を掲げ、何やら呪文を唱え始めた。
「気をつけて、何か魔法をつかってくるようだ。」
「・・・。」
セバスはボスを見て何やら困った表情で黙り込んでいる。
「セバス・・・、まさかまた?」
「はい・・・、あれは前国王、ロイ陛下ではないかと・・・。」
ラウルもその可能性は考えていた。この墓地に眠っていた者が魔物として生まれ変わっているとしたら、多くの兵士と同じように王族もいるはずだ。。父様はヴァンパイアに、母様は精霊に、そして、お祖父様はスケルトンに生まれ変わったというのか。。
前方では長い詠唱が続いており、地面にいくつもの魔法陣が浮かび上がる。そのひとつひとつから、スケルトンナイトが地中から現れていった。そして、その後方にはスケルトンが杖や弓を持って同じように出現した。
ラウルはそれぞれ鑑定していくと、スケルトンナイト、スケルトンアーチャー、スケルトンメイジと表示されていた。そして、中央にいる前国王様にはリッチキングと表示されている。
リッチという魔物は、高位の魔術師が不老不死の魔法に失敗した成れの果てだと聞いたことがある。リッチキングはその上位種ではないかと考えられた。
「ロイ陛下、私です。近衛兵団の団長セバスです!」
セバスは父様に言ったように、繰り返す。しかし、魔物となった元国王様は右手の杖を掲げて、スケルトン達に命令を下す。
「駄目です、ウェイン殿下のように意思疎通はできないようです。」
「まぁ・・・、骸骨だしなぁ。声帯もないよね。。」
しかし暢気に会話をしている場合ではない。スケルトンナイトは完全に姿を現し、こちらに向かって走り出そうとしていた。とりあえず、元国王に攻撃するのは避けて左右のスケルトンナイトに攻撃を仕掛けることにする。
【カット】【カット】
ラウルの攻撃で、スケルトンの首がコロコロと地面に転がっていく。味方と混戦になる前に魔法で始末しなければラウルの出番は無くなってしまう。瞬く間に、元国王のみが残った。つづけてラウルは元国王を封じ込める。
【カット】
防御結界で元国王を取り囲む。父様と同じように、異次元空間を作成しそこに閉じ込める作戦である。元国王の周囲を青く光る結界が立ち上がった。ラウルが安心したところ、元国王は右手の杖をまたも高く掲げて何やら呪文を唱えた。すると、周囲の結界が斜めに切り裂かれた。
「なっ!?」
元国王の顎の骨がカタカタと上下に動く。
(くそっ、笑ってやがるのか。)
次の瞬間、ラウルの目前が青く色が変わった。
「うおっ」
ラウルは慌てて瞬間移動して避けた。元いた場所が空間魔法で切り裂かれる。
元国王は空間魔法まで使えるようである。そんな相手は今までにいなかった。この世に空間魔法を使える人間がラウルだけではないようだ。
シルフィが援護のために魔法を放つ。それも、空間魔法の防御結界で簡単に無効にされてしまった。
「みんな、青い四角や線が表示されたらすぐに逃げるんだ!」
「「はい。」」
セバスが元国王に向かって突っ込んでいく。しかし、次の瞬間にはラウルの真後ろに瞬間移動してきた。後ろから杖で攻撃を受ける。不意を突かれたラウルはその場に倒れ込んだ。
「ラウル様!」
「くっ・・・、大丈夫だ。」
防御能力を特に上げているラウルは、杖で殴られた程度ではそれほどダメージを受けていないようであった。これが剣だった場合そうはいかなかっただろう。そう考えるとラウルはゾッとした。すぐ後方にいる元国王に向けて手のひらを向け、ラウルは叫ぶ。
【プッシュ】
元国王の姿が一瞬にして掻き消される。
一瞬の隙を突き、ラウルは元国王を異次元空間に放り込む事に成功する。しかし、相手は空間魔法の使い手、簡単にこの世界に戻ってくるかもしれない。そう考えたラウルは、壁に向かって走った。壁の手前まで来ると手をかざして叫ぶ。
【ポップ】
すると、壁から骸骨の腕が生えた。
しばらく様子を見ていたが、動く気配はない・・・。
「ラウル様、これは・・・。」
「壁の中に転移させた。」
ラウルは動かなくなった元国王の腕を見ながら、静かにそう言った。




