表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

70/90

死者達の迷宮3

 地下7階層は、他の階層とは少し造りが異なっているようだった。側面の石はこれまでとは違い、触るとスベスベとしていて綺麗に磨かれている。御影石や大理石などが使われているのだろうか。高級感が漂っていた。


 ラウルは慎重に通路を進んで行く。しばらく進むと、大部屋が前方に見えた。

「いきなりボスの部屋ですかね?」

 セバスは不思議そうに話す。

 ボスの部屋であれば、大きな観音開きの扉があるはずだが。そのような扉はない。


 通路から大部屋を覗いてみると、大量の魔物達が部屋の中を徘徊している。ここは魔物のたまり場なのだろうか。スケルトンナイトや、グール、犬のゾンビ、ゴースト。今まで出没してきた魔物が勢揃いしている。天井には数匹のコウモリも見える。アンデッドの迷宮で生きているコウモリを見るのは不思議な気分になる。


 これらの魔物を一度に相手をするには厳しい。遠くから、1種類ずつ通路に誘い込み、安全に倒していくことにした。まずはすばしっこい犬のゾンビから倒していく。犬を誘い込んだときに、すべての魔物が一緒に雪崩れ込んでくることも想定していたが、それはなかった。

 犬、グール、ゴーストの順に倒し、最後に防御力の高いスケルトンナイトを倒す。ラウル達は危なげなく魔物達を倒していく。


 その階層には、このような大部屋がいくつかあった。それらの部屋を細い通路でつないでいる。細い通路には、ごく希に宝箱が落ちていることがあった。宝箱にはそれほど高価と思われる物は入っておらず、推測だが、この迷宮で亡くなった冒険者の装備品だろうと考えられた。

 また、宝箱に手を伸ばすと蓋が突然持ち上がり、手に噛みついてくる魔物もいた。前世ではミミックと呼ばれるモンスターなのだが、残念ながら鑑定する暇はなかった。次回からは、鑑定してから宝箱をあげようと学習するラウルであった。


 地下7階層も問題なく進んでゆき、ボス部屋と思われる大きな観音扉が目の前に現れた。


「一度、休憩しよう。」

 ラウルは、ボス部屋の前で異次元空間の入り口を開き、家で小休憩を取った。


 全員の疲れが取れたところで、改めてボス部屋の前に立つ。

「いくよ? 準備はいい?」

「はい、主様。」

「はい、ご主人様。」

「ラウル、大丈夫よ。」


 セバス、ニーナ、シルフィは返事してくれたが、メアリーさんは緊張している様子で、扉をじっと見つめていた。ラウルはゆっくりと扉を開いていく。すると、部屋の中は大きな神殿のようであった。かなり部屋は広く、左右に神殿特有の白い柱が何本か立っていて、天井を支えている。

 部屋の奥は一段高くなっており、そこには豪華な椅子が一脚、ポツンと置かれていた。しかし、ボスらしい存在は確認することができなかった。


 ラウルが不思議そうにあたりをキョロキョロしていると、セバスが緊張したような声でいった。


「上です!」

「え!?」


 天井を見ると、天井に数え切れないほどのコウモリが、逆さに張り付いていた。目が真っ赤に光っていて非常に気味が悪い。しばらく警戒していると、コウモリ達は部屋の奥へと飛んでいく。どうやら、椅子の周りに集まっているようだ。それらは次第に黒く固まっていったかと思うと、一つの塊となった。


 しばらくすると、コウモリの姿は確認できなくなり、目の前にはひとりの男が椅子に座っていた。男の服装は、頭からつま先まで真っ黒であった。黒のジャケットに黒のズボン。ジャケットの内側には白いシャツが見えている。目を真っ赤に光らせ、こちらをじっと見つめているようだ。この時、ラウルの脳裏にはある魔物の名前が浮かんでいた。その名前は『ヴァンパイア』である。不死者の王とも呼ばれ、アンデッド最強の魔物だと記憶している。


「また、この部屋に招かれざる客がやってきたのかね・・・。」


 驚いたことに、今度の魔物は喋りかけてきた。その声を聞いたセバスは、剣先を地面にカツンと鳴らし、顔を驚愕な表情へと変えていく。


「セバス?」

「ま、まさか、この声は・・・。ウェイン殿下?」


 ラウルは耳を疑った。目の前のヴァンパイアがウェイン第一王子だというのか。つまり、ラウルの父親だというのか。そう言われても、ラウルは父親の顔は覚えていない。


「セバス、それは本当なのか?」

「は・・・、はい。仕事柄、よく身近にいましたのでよく覚えております・・・。」


 そして、セバスは大声で叫ぶ。


「ウェイン殿下、ウェイン殿下! 近衛兵団の団長のセバスです!」


 すると、その男は首をかしげて答えた。


「それは誰かね? そんな者は知らないね。そもそも私は自分が誰なのかも分からないのだよ。」

「そ・・・、そんな。殿下、こちらにフィデル様もいらっしゃいますよ!」

「フィデル? それは誰かね。」


 どうやら、この男には記憶が引き継がれなかったようである。


「そもそも、私は何故ここに居る? 希に、そなたらのような者が私を殺そうとやってくる。私は何も危害を加えていないのにだよ?」


 そして男はシルフィを見つけたようだ。目をギラリと光らせて舌で唇をジュルリと舐める。


「おや・・・、美味しそうな匂いがするねぇ。」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ