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エルフからの依頼2

『ああ、フィデル。来てくれたのですね。』

 後ろで聞いていたアンリが不思議そうな顔をしている。『ラウル』と聞いていたのに、名前が違ったからであろう。母様は今現在使用している名前も知っていたのだろう。探すときには『ラウル』を探せとお願いしたのだと思った。


「母様、力が落ちていると聞いたのですが?」

『はい。私が宿っている木は、普通の木より何倍も魔素を必要とします。なので、たまたま龍脈の上に芽を出したこの子が、私の宿り木として選ばれたのだと思います。しかし、最近この龍脈の流れが変わったようで、木が枯れ始めているのです。』


 この世界の植物は昼間は光合成をして、二酸化炭素を吸収し、酸素と魔素を排出する。夜は逆に魔素と酸素を吸収し、二酸化炭素を排出する。これを植物が呼吸をするという。通常は光合成で作成される魔素の方が、呼吸で消費される魔素よりも量が多い。なので、世界には魔素が充満している。

 龍脈とは、魔素が川のように自然と集まり大きな流れとなっている場所をいう。

 母様が宿る木は、母様が魔素を常に吸収してしまうために、夜に呼吸する時、魔素が不足してしまうらしい。いわゆる、木の呼吸困難である。不足する魔素を龍脈からもらっていたようだ。


『残念ですが、枯れてしまうと私も存在が消滅してしまいます。その前に、どうしても会いたかったのです。来てくれてありがとう。』

「何を言っているのですか、母様をこのまま消滅させるわけないでしょう。必ず、何とかしてみせます。。」

『龍脈が移動してしまった今、それを戻すのは難しいと思いますよ・・・。』

「あと、どのくらい時間がありそうですか?」

『できるだけ力を使わなければ、あと半年くらいはもちそうです』


 ラウルは魔素の流れを見るために、魔素感知を使用した。すると、周囲の魔素は確かに普通の量しか確認できなかった。龍脈が流れを変えてしまったのは本当だろう。そして、運が悪いことに、母様から頂いた加護のおかげで、周囲の魔素をラウルが自動的に集めてしまっている。ラウルがここに存在していれば、母様の寿命を縮めてしまうのだ。

(なんてことだ・・・。ここには居られないのか。)


 ラウルは試しに自分の中の魔素を外に排出するイメージをする。自分に集まってくる流れが、内側から出ていく流れにぶつかってしまって上手くいかない。

(むーー、駄目かぁ。)


「母様、俺がここに居ると母様に必要な魔素まで吸収してしまいます。ここに居ることはできません。必ず、解決策を見つけて戻ってきますので、母様は力を使わずに俺の帰りを待っていてください・・・。」

『そんな、最後までフィデルと一緒に居たい・・・。』

「駄目ですよ、生き残ると希望を持っていてください。必ず戻るから・・・。」


 ラウルの心は辛く悲しい気持ちで一杯だった。。せっかく母様ともう一度会えたのに、また引き裂かれるのか・・・。目頭が熱くなる。

 後ろ髪を引かれる思いで、ラウルは母の居る場所から離れた。


 背中には、母様の悲痛の叫びが聞こえてきていた。

『フィデル・・・、ああ、フィデル・・・。うぅぅ・・・。』


(必ず・・・、必ず俺は戻ってくる。)


 ラウルは里長に事情を話し、必ず解決策を考えて戻ってくると誓った。そのまま瞬間移動で帰りたかったが、御者の男もいる。帰り道も護衛が必要だ。


 ラウル達は、来た道を一週間かけてまた戻っていった。

 


 領都に戻ってきたラウルは、帰り道でずっと考えていた方法をまず試すことにした。それは、文字通り『神頼み』である。教会に行って、何か解決策はないか祈ってみようと思ったのだ。運が良ければ、以前のように神と会話ができるかもしれない。


 早速、ラウルは教会へと向かった。セバスだけがついてきてくれた。他の者は、風呂に駆け込んでいった。まぁ、護衛はセバスだけで十分である。

 教会に着くと、神父らしき男がいた。お布施を払い、個室で祈りを捧げたいとお願いする。すると、快く部屋まで案内してくれた。久しぶりにやってきた部屋である。初めて来たときは奴隷であった。思えば遠くに来たものである。


 ラウルは片膝をつき、指を組むと神に祈りを捧げる。

(神様、どうか私の願いを聞いてください・・・。)

 本気で一生懸命、真剣にお願いする。母様の命がかかっている。お願いしますと何度も心の中で繰り返す。しばらくすると、願いが聞き届けられたのか、視界が反転した。意識が遠くなる。。


 辺り一面、真っ白い空間に出た。ラウルはこの場所を覚えていた。神と会った場所である。すぐに周囲をキョロキョロと見渡すが、神らしい者はいない。


「神様!」

 

 ラウルは口から自然と懇願するように神を呼ぶ。


『ひさしぶりじゃのぅ。。』


 その声は頭の中に直接聞こえてきた。前回はあまり感じなかったのだが、声を聞いただけで何故か心が癒やされていく感じがした。ラウルはその場に土下座し、両手をついて深く頭を下げた。




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