エルフからの依頼
冒険者ギルドを出たラウルたちは、依頼書に記載されている宿屋へと向かった。宿屋はすぐ近くにあった。中に入り受付に問い合わせる。
「すみません、冒険者ギルドからやってきたのですが、こちらに依頼者が泊っていると聞いたのですけど。」
「えーと、とりあえず、あなた様のお名前を伺ってもよろしいですか?」
「はい、ラウルと申します。」
依頼書をみせると、受付の女性は帳簿と見比べる。
「確かに、こちらのお客様は当店に宿泊されています。取り次いでも良いか確認してきますので、少々お待ちください。」
そういうと、受付は階段を上がっていった。しばらく待っていると、上の方からバタバタと音が近づいてくる。しばらく階段を眺めていると、エルフの女性が駆け下りてきた。
エルフとは、耳が長く尖っていて、とても清廉とした性格で、容姿端麗である。そんなイメージを持っていたのだが、このエルフの耳は尖っているがそれほど長くなかった。そして、髪はボサボサで、顔は整った顔つきだが、お世辞にも容姿端麗とは言いがたい・・・。寝起きだからかもしれないが。
「ラウル様!?」
「はい、自分に指名依頼をしたいと伺ったのですが。」
「は、はい! 急いできたのです、わたし。急いで森に帰らないとです。それで、森の神様があなたを呼べって。力が落ちてきて、会いたいって。」
支離滅裂とはこういうのを言うのだろう。
「まずは、落ち着いてください。」
ラウルはまず彼女を落ち着かせようとした。宿の受付の人に水を持ってきてもらった。
先ほどの話をまとめると、森の神様が力が弱ってきているので、ラウルに会いたいと。だから、エルフの代表としてこの人が呼びに来たと。それで、急いで神様がいる森へ帰らないといけないと。こういう事かな?
ラウルは森の神様という単語に引っかかった。
「もしかして、森の神様というのは、木の精霊だったりしますか?」
「いえ、精霊ではなくて、神様です。里に伝わる神木に宿られた神です。」
「すぐに出発しましょう。」
ラウルは宿代を支払い、女性にすぐ荷物をまとめるようにいった。
セバスには馬車の手配を頼む。
もっとも素早いニーナには、しばらく留守にすることを自宅のメイドに伝えてもらう。もちろん、旦那様にも自宅のメイドから伝えてもらう。
ラウルは確信していた、母様に何かあったのだと。神と精霊の違いはあるが、神木に宿るのは母様で間違いないだろう。だから、必要最低限のことだけをして、すぐに出発した。醤油の種麹も先日納品したばかりだ。まだ来月まで余裕がある。来月に帰れなくても、別に仕込みを止めればいい話だ。母様より優先させる都合などないのだ。
ラウル達は、馬車の中でゆっくりと自己紹介をする。
エルフの女性は、髪を整えて身支度をすれば、かなり綺麗だった。容姿端麗だったと認めようと思う。名前はソフィと名乗った。領都を出発して、馬車の中で名前を聞くというのも常識外れだと思うが。
それからセバスに母様の肖像画を書いてほしいとお願いした。それならば、メアリーの方が適任ですと言われ、メアリーさんに頼むことになった。少しでも母様の容姿を覚えておくためだった。
どんなに急いでいても、夜に移動するのは危険である。なので、暗くなると野営か村があれば宿に泊まった。ソフィと御者の男もいるので、異次元空間の家で休むことは難しい。見張りはラウルとセバスで交代した。
かなり急いだにもかかわらず、エルフの里に着いたのは一週間後だった。エルフの里には直接、馬車では乗り入れることが不可能で、近くの村からは徒歩となった。
ラウルはエルフの里に向かう途中で、気になったことを質問する。
「ソフィさん、エルフの里に続く森には結界が張ってあって、許可の無い者は決して里にはたどり着けないと噂で聞いたことがあるのですが、ソフィさんがいれば大丈夫ですよね?」
「え、そんな結界ないですよ?」
ラウルの小説の知識はあてにはならなかった。
「それでは、エルフの人々は肉を食べないとかは・・・?」
「はぁ? 肉は大好きですけど。」
やっぱり、ラウルの小説の知識はあてにはならなかった。。
1時間ほど歩いていると、エルフの里に到着した。ソフィさんが里長の所へ案内してくれるそうだ。閉鎖的な里かと思ったが、住人はみんな歓迎してくれているようである。
里長はまだ若く見える女性だった。エルフは長寿なので、おそらくラウルなんかよりは何倍も生きていると考えられる。その里長が話しかけてきた。
「遠いところからわざわざお越しいただき、ありがとうございます。里長のアンリと申します。」
「ラウルと申します。可能ならば早く森の神様に会わせてもらいたいのですが。」
「はい、森の神様もラウル様をずっと呼んでおられます。すぐに案内致します。」
里長に案内され、ラウル達は里の奥へと歩いて行った。奥の方には遠くからでもはっきりと見える大きな木が見えていた。あれが神木と呼ばれる特別の木だろうか?
そして、案内された先には大きな大木がどっしりと立っていた。
『ああ、フィデル。来てくれたのですね。』




