上級精霊 ドライアド
ラウルは精霊となってしまった母様をこっそりと鑑定していた。
名前はドライアドと表記されていた。種族は木の上級精霊である。特筆すべき点は、物理攻撃無効。魔法攻撃には耐性がある。ただ、ドライアドは通常神木に宿る精霊で、その木が枯れて朽ちてしまうと、ドライアドも死んでしまう。そのような弱点があった。
精霊は一般的に神に最も近い存在とされている。基本的に霊体で、個々の能力は非常に高い。
「母様、可能でしたら盗賊に襲われたときのことを話して貰えませんか?」
『一瞬の出来事だったので、詳しくは私にもよくわからないの。』
そう言って、その白い君は語りだした。
その日、第一王子ウェインと妻のジェイルは、ある都市を視察するために馬車で森を走行していた。しばらくすると、護衛から敵襲の報告があり、盗賊との戦闘になったようだ。しかし、突然冒険者が裏切り、背後から近衛兵を攻撃し始めたという。一気に形勢が不利になり、フィデルだけでも逃がそうと、敵から反対方向へ走るように指示をしたという。
父親であるウェインは、息子に追っ手がかからないように、最後まで敵を引きつけていたという。
『ごめんなさい、そろそろ限界のようです。私の本体はここよりずっと北の森にあるのです。ここまで意識を飛ばすのは結講大変で・・・。最近力も弱くなってきているのです。また、会いに来てもいいかしら?』
「はい、是非また会いたいです。母様。」
『ありがとう、フィデル。ああ、そうだ。これはまったく根拠のない勘なのだけど、当時の第二王子の派閥には気をつけた方がいいと思うわ。』
そう言い残して、白い君は姿を消した。残ったタンポポも生命力を持って行かれたのか、また枯れてしまった。。
「ラウル様・・・、こんなことが本当にあるのですね・・・。」
「ああ、驚いたよ。母様が生まれ変わって、まさか精霊になっていたなんてね。。」
「ええ、このようなこと聞いたことがありません。しかも、生前の記憶も持っているようでした。」
「もしかしたら神様が理不尽だと思って、導いてくださったのかもしれませんね。」
「そうかもしれませんね。」
ラウルは、実際に導かれてこの世界にやってきた。たぶん、母様も同じだろう。また教会に行って、感謝の祈りを捧げなくてはいけないと思った。
そして、目の前のメッセージウインドウには、精霊の加護を授かったと書かれていた。
「母様は、加護まで授けてくれたようです。」
「なんと! 精霊の加護ですか。それは素晴らしいことです。」
ラウルは空間の接続を今度こそ絶ち、家に帰ろうとすると、セバスがいった。
「ラウル様、第二王子の派閥というと、今現在は王国の幹部だと思われますが。どのようになさいますか?」
「いいや、何もしなくていいよ。例え親の仇が王国にいたとしても、今の俺達では何もできないよ。」
「・・・。」
セバスは納得がいかないようだ。今にも、王国に単身乗り込んで暴れそうな雰囲気を醸し出している。
「セバス、心配しなくても、本当に親の仇がいるならば放ってはおかないよ。時が来ればセバスに先陣を切って乗り込んでもらうかもしれません。その時はよろしく頼みます。」
「はっ。畏まりました。」
セバスは跪き深く頭を下げた。本当に悔しいのはラウル様だろと、セバスは自分を恥じた。大きく息を吐いて深呼吸し、なんとか心を静めることができた。
ラウル達は共にそれぞれの家へ戻っていった。
シルフィやニーナに母様のことを伝えると、やっぱり驚いていた。
「どうしましょう!? ラウルのお母様に、婚約者として挨拶をしなければいけませんね。」
シルフィは少し違う意味で焦っているようだった。
(シルフィは精霊になってしまった母様を恐れたりはしないのだろうか。)
それからは、疲れていたのですぐにベットに横になると、意識は一瞬で深いところへと落ちていった。
翌日、ラウル達は報告のため旦那様の屋敷へと向かう。時間短縮のため、屋敷の庭に空間を接続し、周囲に人がいないことを確認し入り口を開いた。
セバスが不思議そうに聞いてきた。
「あれ、ラウル様? 昨日と違うところに出たようですが?」
「空間は何処にでも繋げることができるので。あ、これも極秘事項です。」
「それって瞬間移動ですよね?」
「そうともいいますね。」
「そうですかぁ・・・。」
セバスは諦めたように大きく息を吐いた。セバスも大分ラウルの非常識に慣れてきたようである。
ラウルは予めセバスに旦那様のことは詳しく話しておいた。自分を奴隷から解放してくださった恩人であることも、シルフィの父親だということも全てである。くれぐれも無礼な真似はしないように釘を刺した。
門の前まで行くと、ドアノッカーをコンコンと鳴らす。
しばらくすると、メイド長がでてきた。不機嫌そうな顔で・・・。
「ラウル様、こちらにも準備をする時間が必要なのです。前もって先触れなどを寄越すなど、していただけるとありがたいのですが。。」
「すみません、メイド長。。以後気をつけます。」
「とりあえず、お嬢様はお入りください。後の者は、しばらくお待ちください。」
「はい。」
シルフィは「ごめんねー」といって、中に入っていった。
しばらく待っていると、応接室に通された。
俺以外はとりあえず、壁際で立ってもらっている。
また、応接室でしばらく待っていると、旦那様とシルフィが現れた。
シルフィは無理矢理着替えさせられたようで、令嬢としてふさわしい格好をしている。旦那様は目の前の椅子に、シルフィは俺の隣に座った。
「やあ、ラウル待たせてすまなかった。」
「いえ、突然の訪問、申し訳ありません。」
「それで、報告があると聞いてきたが? 後ろの二人のことか?」
「はい、それもあるのですが。単刀直入に申しますと、私はどうやら隣国バルサニールの王族のようなのです。」
そう告げると、旦那様は硬直して動かなくなった。口をパクパクさせている。
メイド長は後ろで額を押さえて俯いてしまった。
(単刀直入すぎたか?)




